人魚と同じ夢を見る(全10話)
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今日はポアロも警察関係も組織の仕事もなく、探偵として動いていれば晴れ渡った空からはつい先日のように雨の気配もなく靴音も鳴らさず歩いていく。
今日の依頼は水族館で浮気をしているかもしれない恋人の 素行調査。
水族館で働いている男のところに女が側にいて「恋人らしくしていないか」を調べて欲しいとのことであり降谷は水族館に入るとあらかじめ教えてもらっていたスペースにいる男性店員を水槽越しに見つめた。
30分ほど張っていたところでその男性店員に近づいた影があった。薄く絞られた明かりの中で見かけたのは渼瑚さんと共に歩いている若い女性。
渼瑚さんはそのまま 彼女を置いて、そして置いていかれた女性は男性店員に色めいた視線で話しかけており、 おそらくあの女性が浮気相手だろう。
渼瑚さんも気になるが今は仕事をするしかなく水槽を撮る振りをして 2人の姿を写真に捉えていき、明らかにあの2人は関係を持っていると推測しながらもしばらく見つめておくが降谷は歩き出した。向かう先は渼瑚さんが足を動かしていた方であり、首を巡らしていれば一番大きな水槽の前の椅子に腰を下ろしている。
渼瑚さんは淡いピンクのワンピースに長い髪を軽く結わえており目の前の水槽を見つめている。
話しかけてもいいものかと少し思案したがすぐ声をかけように傾き
「渼瑚さん」
そう声をかけながら近寄った。
渼瑚さんはその声に顔をこちらに向けると小さく 頭を下げてきたので、同じく頭を下げ返しながらその横に腰を下ろし、さっき見ていたが、それを知られるわけにもいかず
「お1人ですか?」
と囁きかけ、渼瑚さんはぼんやりしながら首を振り
「……友人と……」
と呟いた。
特に何かを隠しているようにも見えないその表情は、どこか柔らかくもあり、キラキラとした光が彼女に集まっているようにも見え、その美しさに言葉をなくしてしまう。
そうして見ているというのに彼女は降谷に視線を向けるわけでもなく静かに目の前の魚たちを見つめており、戸惑いながらもそっと声をかけた。
「ここへはよく来るんですか?」
「 ……ええ、友人と……」
「1人では?」
彼女は水槽を見つめながら降谷の問いかけに悩んでる様子を見せず
「…そうね……でも、私は、水が苦手……」
「水?泳げないということですか?」
彼女は黙り込んでしまったがどうやら今度は何と答えるべきかを悩んでおり降谷はあの日の海でのことを思い出す。
「……泳げない、わけではないの……そう、違うの……」
「違う?」
「…ええ…」
彼女の言葉がいまいち理解できないのだが、もしかしたら 気圧やその他の問題などで嫌なのだろうか、渼瑚さんはもう少し考えるとそっと目を細め
「……水はね、人を変えるの……」
「人を、変える……?」
渼瑚さんは小さく頷きそこでようやく降谷に視線を向けるとスカートを整えるようにし
「……水は、姿を変えるから、苦手なの……1人の時でしか、いられない……外へ、行けないの……」
意味がわからないが、今までの言葉を考えていれば視線は水槽に戻り、初めての日の荒れた海の中の尾びれを思い出し黙り込んでしまった。
「……ごめんなさい、変なことを言って……」
「いえ…」
あの日、あの時の事を問いかけるべきか、それでも話の内容を理解したくて顎に手を当て考えるもやはり彼女はそれ以上何も言わなかった。
「海野さん!ごめんね、1人にして!行こうか!」
と仕事で張っていた時のあの女性が近寄ってきて渼瑚さんは「…大丈夫」
「……知り合いが、いたから……」
「え?あ!こんにちは!」
渼瑚さんと共にいた女性は僕を見ると目を見開くもほんの少し媚びた表情を見せたが渼瑚さんは立ち上がると降谷に頭を下げ
「……ごめんなさい、変なことを言って……さようなら」
とつぶやき、まだこちらを見ている女性と共に行ってしまった。
本当に、どういう意味だったのだろうかという謎を残して。
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