人魚と同じ夢を見る(全10話)
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海野渼瑚こと渼瑚さんは、予想外にも翌日も訪れてくれた。
梓さんは「昨日の」とつぶやきニコリと笑うとカウンターへと戻り、僕はアイスコーヒーの用意をした。そして渼瑚さんはアイスコーヒーを頼んでくれて。
今日は昨日と似た淡い青のロングワンピースを身にまとい アイスコーヒーを口に運んでいて
「美味しい……」
と呟いた。その声は、店内のざわめきに掻き消されるも降谷の耳にはしかと入り、細い鈴の音を聞いた気がして思考が途絶えそうになってしまう 。
こちらを操るような静かで美しい声音に降谷は渼瑚を見つめてしまい
「素敵な声ですね」
なんて言ってしまったのは仕方ないと言ってほしい。
「……すみません…あまり、声を出したくないので……」
「僕はもっと聞きたいですけど」
そう笑いかけても渼瑚さんは特に愛想笑いを浮かべることもせず降谷から視線を反らしコーヒーを飲み。
「あーむろさん!」
「ああ、梓さん」
「ああ、じゃないですよもう!働いてください!」
梓さんは腰に手をあて安室を見るも、すぐ渼瑚さんに目を向けると「ごゆっくりどうぞ」と笑いかけ渼瑚さんも小さく頷いた。
そんな彼女に梓さんは笑いかけ
「チーズケーキもいかがですか?」
と問いかけるも渼瑚さんは静かに首を振るだけで話をしようともせず降谷は降谷でカウンターから出て、接客に当たることにした。
渼瑚さんのことは気になるが、今の時間は忙しいため手があくこともなく、それでも渼瑚さんも勧められたチーズケーキを口に運んでくれている。
ほどなくしてピークが過ぎたところで梓さんと共にコーヒーを飲んでいれば渼瑚さんがスマホを取り出し何かを見つめていて降谷は梓とともに渼瑚に話しかけた 。
「お仕事は何を?」
「……ファッションデザイナーを……」
「クリエーターですか?」
「……そんなところ……」
梓さんは「かっこいい~!」と手を合わせ
「もしかして、今着ていらっしゃるのも…」
「……私のデザインなの……」
「わあ~!」
そうして梓さんがグイグイ問いかけようとしているので今度は降谷が「梓さん」と声をかけようにも自分だって聞いていたいので改める。
他にも何か話したそうにしている梓だが渼瑚さんはふと顔を上げ扉を見つめると立ち上がり会計をしようとしてきたのでカウンターから回り会計をする。
「時間でしたか?」
「……雨が、降りそうだから……」
「雨?」
今日は1日晴れと予報されていたが、と思っていれば彼女はすぐ出て行ってしまい、儚い後ろ姿に視線を向けても渼瑚さんはサッと行ってしまいそれから10分もせず急に雲行きが怪しくなってきた。
降谷の上がりの時間ももうすぐで、話をしている客は気にもしておらず、降谷が打刻を済ませると、とうとう雨が降り出した。
歩いていた人たちは「え、雨!?」嘘!なんて声を上げ走って行き傘も持たない人々は、あっという間に歩道から消えていってしまい降谷は車に乗り込んだ。
今日はこの後登庁だが、一旦家に戻りスーツに着替え傘を持つ。
再び外へと足を踏み出して本庁近くで大きな青い傘のロングワンピースの女性を見かけてしまった。別に嫌なわけではない。ただなんとなく目に入ったのだ。
この辺りに洋服店でもあっただろうかと考えていれば渼瑚さんの顔がこちらを向き、その表情はどこが嬉しそうだが寂しげでもあり、とても儚い。このまま雨と共に消えてしまいそうに見え降谷は彼女の横に車を寄せると
「こんにちは、渼瑚さん」
と声をかけてしまった。
正直、この姿を見られるわけにもいかないが初めまして(と言っても恐らくだが)の時はスーツであり、犯人追跡中であったのだが。
渼瑚は降谷を振り返り、降谷の車越しに視線を絡ませると渼瑚はフワリと笑い
「こんにちは」
と返してくれて、そのまま彼女は歩いて行ってしまった。
雨空を、傘越しに見上げながら 。
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