欲のままに動くだけ(全13話)



アンシャンテは完全に回復した時、季節は花びらを迎えジンが数日の時間を作った。
もちろん無理やりに。
そして アンシャンテに服をまとめさせカバンを持つと普段とはほど遠い装いのジンにアンシャンテは何も言わずについて行く。

車はいつものものであるけれど出かける前にアンシャンと己の髪も軽くまとめておく。
そうして車に乗せて走り出せばようやくアンシャンテはジンを見つめほんの少し首をかしげて見せた。それでもどこへ行くのかは問いかけてはこずジンはタバコを咥えながら 窓から煙を吐き出す。


「聞かねえのか?」
「何を聞いていいのかわからない」
「そうか」


ジンは思わず笑ってしまいその横顔を見たアンシャンテもチラリと笑ってしまう。
アンシャンテのその表情は初めて見るもので多少の驚きはあるものの気にはしないで車の運転を続け、しばらく走り続けたどり着いたのは海が一望できるリゾートホテルのようなそこ。

車は前もって言われていた場所に止め荷物を担ぎホテルのエントランスで受け付けを済ませ、ふらふらと歩いているアンシャンテを呼び寄せる。


「散歩は荷物を置いてから好きなだけさせてやる」


その言葉にアンシャンテは頷いてジンの横に来ると受付の女性に部屋へと案内されて広々とした個室の庭にアンシャンテは「わあ」と声を上げた。


「どうだ」
「すごく綺麗」
「そうか」


庭を見ているアンシャンテの言葉に案内人の女性を笑い、ジンは何事かの説明をしてくるのを流し聞き女性はそんなジンとアンシャンテを見てスタッフルームに戻って行った。


「 外を歩くか」
「うん、歩きたい」


黒い服ではないアンシャンテ 。
今は薄い花柄のスカートを風になびかせ歩いて行こうとしたためその手を掴みアンシャンテは立ち止まる。

ジンがスマホをポケットに突っ込んでからアンシャンテと共に部屋を当てて鍵を閉める。
そうしてから二人は手を繋いだまま海辺を歩き初めての海にアンシャンテは楽しそうにしており海水に足を浸している。これを見越してのサンダルである。

ひとしきりそうしてからアンシャンテはジンを見上げ問いかけてきたのは

「ここに何の用があるの」

とういうもので、ジンは笑うとアンシャンテの腰を引き寄せ口付けた。


「旅行だ」
「旅行?何のために?」
「くっ……ははっ……何のためだろうな」


俺を庇って死にかけたご褒美だなんて言えるはずもなく、その夜ジンは星空の下思う存分アンシャンテと楽しみ、およそ2泊の旅行を経て自宅へと戻ってきた。
そうしてアンシャンテは自宅でもジンに組しかれ

「楽しかったか」

と問えば、
「あなたといられれば、どこでも楽しいよ」

と笑いかけられた。









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