欲のままに動くだけ(全13話)


車が外の景色を流していき、けれどアンシャンテは外を見ることもせずジッと己の膝だけを見つめてしまう。

この男の名を、私は知らない。

が、ついさっき「ウォッカ」と呼ばれた男の口から出た「アニキ」というのが名前なのだろうか。
私は今までclockなどと言われていたが、その意味も、アンシャンテともらった名の意味も分からないがまあどうでもいい。
この「アニキ」との関係は非常にいいもので今のところ殺そうとも思わないし殺されるようなことにもならなかった。

傷つけられるようなことが、少しもない。

そして車はしばらく走ったが ゆっくりとその動きは止まり「アニキ」が私を振り返りを「降りろ」と指示してきたのでそれに従ってすぐに車を降りる。


「ウォッカ、待っていろ」
「へい」


アンシャンテは、やはりウォッカを見ずジンの後に続き、連れられたのは今着ている服と似た系統の服が飾られている場所、洋服店。


「この女に合う黒服を5着、下着もだ」


そうして「アニキ」は行ってしまい思わずその手を掴んでしまえば「アニキ」は振り返り私の手を見下ろした。そして手を離させると一言。


「俺が戻るまでここにいろ、いいな」


目を合わせたり、話しかけたり、話したりするな、と言われたそれを思って見上げれば 目元に唇が触れ静かに一言

「自由にしろ」


と言われ私はそれに頷いた。そして店を出て行った「アニキ」を見送ってから店員が近づいてきて


「フィッティング」


いたしましょうか、と微笑まれた。









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