欲のままに動くだけ(全13話)


男が私の体を貫いて荒い息を吐いているが私は何も言わず黙ってされるがままにしている。
そもそも喋ろうにも猿轡を噛まされているのでまともな呼吸でさえもかなわない。

何度目か奥の方にドクリと吐き出されてからようやく男は体を離して私を見下ろした。


「水揚げしてあげようか」


そんな上からの言葉に反応せず黙って反らを見つめていれば髪をぐっとつかまれ顔を寄せられ生臭い息にも顔色は変えない。

店のルールで絶対に売り子に手を上げてはいけないので叩いたり殴ったりはしてはいけないのだけれど、しかし男は1つ大きく平手打ちをし男の舌が目元を這う。
それでも黙っていれば、男ははまた男根も埋め込んでこようとしたががノックされスピーカーから

「もう時間なので、」

と響いてきた。終わりだ。

男は苛々しながらベッド脇のボタンを押し「延長」を申し出たがそれにかぶせるように

「水揚げが決まりましたので」

と響きそこでようやく私は顔を扉に向ける。恐らく私を「水揚げする」相手が立っているのであろう、物好きな。
しかし今私の相手をしていた男はベッドから降りると扉を開け眩しい光の中で一人の男と対峙した。

私は扉の影になる位置に私はを水揚げしたと男が立っているようであろうがその人物を見ることは叶わずベッドに縛り付けてある手錠をジャラジャラと言わせながら体を起こし 乱れる髪をベールに膝を立て額をを押し付ける。

先程まで私の相手をしていた男の粘っこい声とは真逆のとても低く、そしてこもったような耳によく響く男の声に目を閉ざし息を殺して話を聞こうとする。
しかしそれより先に店主が部屋に来て手錠や猿轡を外して女が2人入ってきてシャワー室に連れられた。

これは過去5回経験しているので黙ったまま身を委ね全身をくまなく洗い、ついでドロリと垂れる白いソレも綺麗に掻き出され髪も洗われる。

かなりいい匂いのするシャンプーなので、きっと相手は上客なんだろうが、私にはどうでもいい。

洗い終わり身体を拭かれ髪を乾かされると別室には黒い服が下着から靴まで揃っており 黙ってそれに手足を通す。

着替え終わったところで店主が来て手錠と足枷をして目隠しをされると椅子に座らされ連れて行かれたのはどこかの 駐車場。
これも5回目だから聞かれなくてもわかる。

椅子から立たされるとふわりと抱き上げられ、燻製したチーズと苦い香りが鼻先にかすめ、いやに逞しい身体に抱き上げられている。一体、どんな男だろうか。どうでもいいか、物好きな。

車のドアの開く音がし、座席に座らされると、その車内もまた先ほどから男から香った香りが濃くたちこめ、もう一度開閉音がし、車が静かとは言い難い音ともに走り出した。

手錠は後ろではなく前ではめられたので目隠しを取ることは可能であったが、私はそんなことはしない。うざかったらまた殺す。それだけだ。

振動音がしばらく続き、どこまで走ったのか、大分走ったところで目隠し越しに光が遮られ車は停まりエンジンが止まる。

そうしてから私側の扉が開き足枷と手錠が外され車の外に降りるように手を引かれ、目隠しをしたまま歩かされる。
その間、男はずっと無言で私の手を引いて歩いており、私が考えるのは
「次はどんな相手だろうか」と思考を巡らせるも、いまいちわからない。どうせあと少しすればわかるだろう。

男は立ち止まり、進み、また立ち止まり恐らくエレベーターに乗せられその箱は静かに上昇していく。

男の固い手の感触に不思議な感情を胸に抱きつつ、そして通されたのはどこかの部屋。 
金属音がしたので自宅かホテルかのどちらかだろう。

鍵を開けた時も手は引かれたままで通された部屋に来てからようやくそこで目隠しは外された。そして私はほんの少し驚いてしまう。

日本人離れした長身に私と同じく腰までしっかりと覆い隠すロングヘアーの銀髪の男。
その緑の鋭い目を見つめ黙って見上げていれば男は私を見下ろしたかと思うと私の腰を引いて、口づけを、

私は拒んだ。

男はそれに対して眉間にシワを寄せ、けれどもキスやめそして頬を撫でてくると簡単に抱き上げられ、暗い室内のベッドに転がされた。

男の香りがたちこめる。
ああ、そう、やるのね、と、私は目をそらした。









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