前世がゾルディックな私の来世(全23話)
私より弱い念能力者に飛ばされてから三週間程が経ち私は変わらぬ朝を迎えている。
今日の仕事は夜に一件、どこかのバイヤーを音もなく誰かに知られることもなく、そしてその存在さえも消せと言われているため私の念でいいだろう。
「んー…眠い…」
そう呟きつつも起き上がり服を着替えれば机の上の携帯が鳴りそれを取ればジンからで、一旦こちらと合流しろと言われ面倒に思いながらも頷いた。
因みにコナンや赤茶の髪の女の子のことは一切話していない。聞かれてないし。
父似のふわふわのパーマをとかしヘッドドレスを着けるとホテルを後にした。
ジンはホテルの前に車を停止させており私は車に乗り込むと「もう合流?」と首をかしげ、煙草の煙を吐き出しながらジンは笑い「そうだ」と口にした。
「でも殺るのは夜でしょう?」
「昼は組織の連中と過ごさせて情報を得てから夜に消せ」
初めて「組織」と聞いた私は数日前に問いただしてきたコナンの言葉を思い出しコードネームも付けられたそれにポンと疑問符を浮かべた。
「ねえジン」
「なんだ」
「私って何かの組織の一員なの?」
私の言葉を吟味したジンは煙を吐き出しながら
「そういやぁ」
お前には話してなかったなと言われ、それが答えのような気がして「ふーん」と頷き
「別に話さなくてもいいよ」
私にはそれほど関係ない気がするし別に私をどうにかしたいわけでもないでしょう?なら興味ない。と。ジンはクツクツと笑い
「分かってるじゃねえか」
と呟き私は携帯でネットニュースを見ることにした。
その間車は動き続けどこかのビルの前に車が止まると
「スピリタス」
と。
「お前はここで待て」
「はいはい」
手をヒラヒラと振れば二人は行ってしまい後部座席に深く座り直すと大きく息を吐き出して目を閉ざす。
「(いつ、帰れるんだろう)」
そんなことをぼんやりと考えてしまい一抹の寂しさを覚えつつ私のいた"世界"で持っていた通信機を取り出せば不意にピコンと鳴り、驚いて背筋を正すと通信機を見つめ車から降りて走り出した。
発信元を探すように通信機に視線を向けたまま走り辿り着いたのは三週間前に私が"いた"その場所。
「イル兄…イル兄いるの?」
思わずそうポツリと呟いてしまった次の瞬間、地面が激しく揺れ体勢を整え巻き上がる風に目を閉ざせば目の前から光が消え、私はあの念能力者と対峙していたその場所にいた。
その場には何もなくガレキで埋もれており
「イル兄」
そう呟いた瞬間、通信機が鳴り響いた。
「もしもし!イル兄?イル兄だよね?!」
『カルラ、どこにいたんだ?』
私はイル兄と話しながら今日までの三週間を説明しザッという音と供に振り返ればそこにはイル兄がいて。
「イル兄!」
と言いながら長兄であるイルミに抱きついてしまった。
「帰ってこれた…」
「家に帰ったらもっと詳しく話をしようか」
私はそれに「うん」と頷くと頭を軽く撫でられ手を引かれてしまった。それが嬉しくて手をギュッと握りしめるとイル兄は小さく笑ってくれて
「雑魚は消したんだよな?」
「…分かんない…多分死んだんだろうけど」
イル兄たちに何かの迷惑が行ってないのなら消したんだろうね!と笑いかけ イル兄と供にククルーマウンテンへと直帰することができて、もう一度良かったと呟けばもう一度頭を撫でられた。
ああ、良かった、と。
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