前世がゾルディックな私の来世(全23話)
バーボンと顔を会わせてから二日が経ちしばらくは仕事が無いと言われていたので銀行から幾らか下ろすと近くを歩いて一日を過ごしていれば
「カルラちゃん?」
なんて名を呼ばれ振り返ればそこにはランドセルを背負った歩美がいて
「久しぶり!」
と手を握られた。
「歩美ちゃん、その人と知り合いなの?」
そう口にしたのはコナンとやらで、危ぶんだ瞳のまま私を見つめるも歩美は「うん!」と頷き
「二週間くらい前に会ったの!ね?カルラちゃん!」
と。私は無言で頷きコナンの後ろにいる赤茶けた髪の毛の女の子が顔色を悪くして私を見つめており
「へえ、カルラって言うんだ」
とコナンが呟いた。
まあ、誰が誰で誰と誰が仲良くて、なんて私には微塵も関係ないため
「ばいばい」
と過ぎ去ろうとすればコナンに腕を掴まれた。
「ちょっと来てほしいんだけど」
「なぜ」
コナンは鋭い目で私を見つつ「おめぇらは帰ってろ」と口にし私は眉間にシワを寄せるも腕を引かれ歩かされてしまう。別にいいけど。しかし歩美たちは不満そうにしており
「話が済んだら公園行くから先に遊んでろ」
そうして私が思ったのは、帰れとか先に遊んでろとか注文が多いなというもので、私とコナンから距離をおいて歩き出す赤茶の髪の毛の女の子。
行先は同じなのだろうか、兄妹…でもなさそうだがそんなことを考えて歩くこと十分。
連れられたのは円形型の建物、というか家。
コナンは門を開け「博士ー!」と声を上げ女の子は私の後ろから玄関をくぐり扉を閉 めるも相変わらず顔色は悪い。
「大丈夫?あなた」
「っっ…、べつに…」
そうして女の子は駆けて室内へと行ってしまい私も靴を脱いで後に続く。
「どうしたんじゃ新一」
「新一?」
コナンと呼ばれていた男の子は新一と呼ばれ私を見るとハッとしたようだが、コナンなのか新一なのか分からないから男の子は私の背を押し
「こいつ…」
「どなたじゃ?」
コナンか新一はそっと息を飲むと一言
「黒の組織の一員かも知れねぇ…!」
「なんじゃと?!」
「黒の組織?何それ」
私の呟きにコナン新一はキッと私を見つめ
「ジンとウォッカを知ってるよな?」
と一言。なので隠す必要も無いし隠せとも言われていない上にその組織とやらに入った覚えもない。ただスピリタスと名付けられたのだが。それでも「知ってるけど」それが何と問いかければ
「ジンとウォッカに次に会うのはいつだ?」
「ちょっと工藤君、あなた何をするつもり!?」
今度は工藤かよと思いつつ別にいつどこでジンと待ち合わせをしているなんてわけでもないし仲間という認識もしていない。仕事をくれる、それをこなす、それだけだ。
「その二人が何よ」
「コンタクトを取れるのか?」
「だからなんで」
その私の言葉にコナンは黙りこみ女の子は怯えており博士とやらも何か言いたそうにしている。なので、と
「私はジンとウォッカを知っているけど貴方の言うジンとウォッカは同一人物とは限らないじゃない」
そう言い捨ててもコナンは語気を荒立たせ
「カルラって言ったよな…、コードネームは、もらってるのか?」
「コードネーム?スピリタス」
そうハッキリと言いきれば私を除く三人は息をのみ
「それ以上の用がないなら帰らせてもらいたいんだけど」
「そう簡単に逃がすかよ!」
「逃げる?」
思わずそう呟き返し笑ってしまえばコナンたちは何を笑っているんだとしているが私はひとしきりクスクス笑うと
「逃げるなんて下らないことするわけ無いでしょう?そんなことをする意味もないわ」
「俺や、こいつの事は知らねーのか?」
「顔を会わせて初めましての挨拶もなしに知るはずがないでしょう?何?その子、重要な子なの?」
それにコナンは答えず
「私ばかり暴いてきてそちらは一切話さないなんてイーブンじゃぁないわよね、さようなら、帰らせてもらうわ」
あなたの言うジンとウォッカが同一人物だとしたら黙っていてあげる。だからこれ以上私に関わるのはやめてちょうだい。さもないと話すわよ?あなた達のこと。
そこまで言えばコナンは歯をギリと噛みしめ私は手をヒラヒラとさせると「さようなら」と、その家を後にした。
まさかあの女の子が重要な人物だなんて知るはずもなく、私はもう外を歩く気にもならずホテルに戻るとベッドに倒れこむと充電器に携帯をさしこむとまだまだ明るいが眠ることにした。めんどくさっ、なんて。