前世がゾルディックな私の来世(全23話)
「Trip or Trick!」
その念に私の身体はフワリと風に包まれ透けていき目を閉じて片手で顔を覆い、風がやんだところで目を開ければそこは全く知らない場所で一人の男がナイフを持って走ってきた。
「どけ!殺すぞ!!」
そんな風に怒鳴られても私は動きもせず男を見据え、そしてナイフを振りかざしてきた男に勢いよく切りつけられそうになったが、"天下のゾルディック"に何をと思いつつ男のナイフを叩き落とし膝を男の顎に叩き込めば男は口から血を吹き出しなから倒れこんだ。
恐らく舌でも噛んだのだろうそれを見下ろしながらいったいここはと考えようと立ち尽くしていればバタバタと人の足音が聞こえてきて私は物陰に身を隠した。
「これは…!一体誰が?!」
「探せ!まだ近くにいるはずだ!」
そんな声に私はチラリと見やると歩を進め大通りへとでれば夕暮れの明かりが世界を包み込んでおり空や周囲を見つめていれば看板にはジャポンの文字が並んでいて首をかしげてしまう。
おかしい。ハンター文字が無い。見受けられない。
キョロキョロとしながら歩いていれば道行く人々は私のことをチラチラと見てきてそれを気にせず歩き店や人を無視して公園のベンチに腰を下ろした。
とりあえずと私は通信機を取り出してポチポチといじっていても全く動かずそっと息を吐き出すのと声をかけられたのはほぼ同時。
「こんにちは!」
そんな女の子の声に顔を上げ女の子を見つめれば年の頃は私と同じくらいだろう、何故話しかけてきたのかを考えていれば
「お名前教えて!」
と言われたので少し黙りこむとポツリと呟いたのは
「……カルラ・ゾルディック…」
というもの。
女の子は「外国の人なんだね!やっぱり!」と口にし次いで女の子は
「私は吉田歩美!よろしくね!」
と名乗ってきた。そのまま
すっごい可愛いお洋服!お姫様みたい!と続けられたそれに返事をせず立ち上がると
「じゃあね」
と口にしてその場を後にした。
いや、しようとしたのだが歩美が私の手を掴み「どこの学校?引っ越してきたばっかりなの?」と問われチラリと見ると「さあ」と呟き手を振りほどくと歩き始めた。
歩美はキョトンとしながら私を見つめているが気にもせず折角落ち着いた公園から離れいくあてもなく歩き出す。
せめてこの場所がジャポンの何処なのかを知ることができればいいのだが分かりもせずアルファベットで「Beika Station」とかかれている駅前に来て今度はそこのベンチに腰をおろす。
夕暮れは闇に変わり電灯が灯ったそこで再び、今度は別の人間に声をかけられた。
全身真っ黒の、私の勘で堅気ではないその瞳。私と同じ闇側の人間であろうその人物を見上げ
「来い」
そう告げられた。
しばし吟味するように悩むが私は小さく頷いてベンチから立ち上がり男の後についていく。そうしてついて行けば男は私を車に乗せ運転席にいるもう一人の男が私を見つめ首をかしげている。
「アニキ、そいつは?」
「中々使えるかもしれねぇ」
何にかなんて考えなくてもすぐ分かった。恐らくつい先程男を殺したところを見られたりでもしたのだろう、ぬかった。
それでも私はこの"念も使えぬ人間に"どうこうされる事もないだろう。走り出した車から外を見つめていれば銀髪の男は携帯画面に一組の男女の姿の写真が並んでいて
「できるか?」
と。ここで何をと問いかけるのが普通の、一般人の反応で
あるだろうも私は指を一本立て念を発動すればシャボン玉がフワリと漂い、ちょんとつつけばパチンと弾け
「できるよ」
そう頷いた。
男はニヤリと笑い「良い子だ」なんて言われるとなんとなくイル兄の私への態度に似ていて笑いそうになってしまった。
そうしてたどり着いたのは大きなビルであり停止した車から降りて銀髪の後を着いていく。
ビル内に入ると銀髪の男はエレベーターに乗り私もそれに続き何処かの階の何処かの部屋に行き
「証拠を残さず、一瞬でいけるな?」
「やり方は、証拠さえ残らなければ何でも?残酷に?楽しげに?快楽的に?」
「ー残酷にだ」
そう銀髪の男はニヤリと笑い私は扉を開けると中に入り二人の男女を見つめたら二人も私を見返してきたと思ったら、何事かを口にしようとしてきたがそう一瞬で歩を詰め近づき二人の心臓を"盗み"とった。
二人は何があったのかもわからずに振り返りながら膝から崩れ落ち私は二人の心臓を握り潰し捨てた。
「終わったよ」
そう部屋から出れば男はチラリと中を見て、倒れ伏す二人の脇に落ちている潰れた心臓を見ると本の少しだけ息を飲み
「…どうやった」
「盗んだだけ」
私、盗むのも消すのも上手いからと呟けば男は満足そうに笑い「行くぞ」と歩き出した。
この男は私の何を知っているのだろうかと思いながらも黙ってついていき外へと出れば優しい風が髪とスカートを揺らし再び男達の車に乗り込んだ。
「今度はどこに行くの?私への依頼料、高くつくけど」
「お前の家を用意する」
「…それが今の報酬として受けとるわ」
そう呟けば男は笑い
「名前をつけねぇとな」
と呟き私は自身の名を口にしようとしたがそれは何となくよした方がいいだろうと口を閉ざし銀髪の男は
「スピリタス」
と
「今からお前はスピリタスだ、いいな?」
「…分かった」
男はもう一度「良い子だ」と煙草を咥え運転している男が戸惑ったように銀髪の男を見つめていて
「アニキ、コードネームを与えていいんですかい?」
コードネームねぇ、なんて考える私だが一々名前を告げなくてもいいのかという考えにいたり後部座席に深く腰を落ち着けた。
「ガキでも随分とやり手だ。俺がコードネームを与えても"あの方"は何もおっしゃらねぇだろうな」
そんな自信に「へぇ」と声をもらししばらく走った先で辿り着いたのは大きなホテル。
「今日からお前はここに住め、連絡を受けたら殺れ」
「報酬は手渡しでお願い。もう一度言うけど、高いから」
私への依頼料。銀髪の男は笑うと「払ってやる」と口にし私をホテルの一室へと携帯を置いて行ってしまった。