前世がゾルディックな私の来世(全23話)
ポーンという音と供にエレベーターは止まりコナンと沖矢は供にたった二部屋しかないフロアの"黒澤"と書かれたプレートが嵌め込まれている部屋のインターフォンを沖矢は押した。
高い音が静かなそこに響きわたりすぐ「はい」と聞こえてきたので沖矢はコナンを抱き上げ見せた。そうすれば本の一瞬無言であったがガチャリと鍵が開き中からカルラが顔を見せた。
「…何の用?どうやってここを?」
そんな言葉が出てきそうな表情であったが特に何も言わず
「どうぞ」
と二人のことを躊躇いもなく通してくれた。
危機管理がなっていないのかそれとも二人を通した所でどうとも思っていないのか、恐らく後者であるだろうがカルラは二人をソファに座らせると二人の前に立ったまま
「何の用」
そう口にした。最初、さっき思っていた言葉を今言われコナンは黙りこみ沖矢は朗らかに「初めまして」なんて言っている。何か考えでもあるのだろうか。
「ご両親は不在ですか?」
「それが貴方に何か関係があるの?」
あなた方が今ここにいるところで私のプライベートを教えるつもりはないとまで言われればどうにも言えないがカルラは二人を見つめたままであり
「ジンという男は今どこに?」
「それも今あなたに教える意味は?」
「君を保護しようと思いまして」
そんな突拍子もない言葉にカルラもコナンもキョトンとしてしまい、カルラは不思議そうに首をかしげると「保護?」なんて呟き今日まできて一度も見たことがないような笑顔を、そう、ジンと似通った笑顔を浮かべると肩を揺らして笑ったのだ。
「保護してどうするの?私をぶちこむの?」
それとも
「ジンに用件でも?匿名で事を伝えてもいいけれど、ジンに誰からって問いかけられてしまうと」
私には答えるしかない。
だって血が繋がっているもの、という言葉は飲み込んだのだがコナンも沖矢も真剣そうであり、いや、そう、ではなく真剣なのだろうが。
「黒澤さんはエド・トワイラルと親戚関係であるらしいのですが」
「調べてきたのね」
私の個人情報を調べあげるなんて随分と無礼で失礼な事をするそんな相手に話をする気にはならないのだけれど
「あなたは個人情報を暴かれて、しかも訪れてくるといきなり保護しようなんて言葉を信じろと?信じられるの?」
保護すれる言われもない。
「そうですね、ではこうしましょう」
沖矢はそっとカルラの瞳を見つめると、ピッと首の変声機を切ると
「ジンの次の仕事先を教えてもらうために君をFBIの監視下におく。君に拒否権はない」
「あなた誰よ」
「す、昴さん……!」
カルラは腕を組んで二人を見やりコナンは変声機を切った赤井を見つめ
「ここのところ私をはっていたのはFBIなのね、とっても鬱陶しかったの。撤収してもらえない?」
「それは出来ない相談だな」
なぜ?
そう言わんばかりのカルラの視線に赤井は口端を吊り上げるもすぐその笑みを消し
「君ならまだ戻れる」
どこへ、なんて言われなくともよく分かるのでカルラは小さく笑ったまま目を細め
「今更遅いわ。私は彼とは離れられないの」
「彼って……」
ジン、だよね?そう呟けばカルラはコナンと沖矢を見つめると肩をすくめて見せて
「今日はもう帰ってくれない?ジンが来るの」
その言葉に二人は渋々、しかし警戒しながら立ち上がるともう一度カルラを見つめ帰宅せざるを得なかった。