前世がゾルディックな私の来世(全23話)



灰原とコナンは緊張した面持ちでいて阿笠はどこか困ったような、不思議そうな、そして警戒した様子でいて、カルラはのんびりと紅茶を飲んでいる。

「……知ってる事は全部話してもらう」
「知ってる事って、何?」
「とぼけるな!!」

とぼけていない、まだ何も問われていないとしていれば灰原は顔色悪くカルラを見つめておりコナンはそっと一息吐き出すとポツリと呟いた。

「ーージッってやつ、知ってるよな?」
「"ジン"なんて、世の中にどれだけいると思ってるの?」
「知ってるんだな?」
「だから、どこのジンよ」

はぐらかされているのではないかと思えるが「ジン」という名前もどこの「ジン」かも聞かれていないので答えられるはずも気もなく、そんなカルラにコナンはギリと歯を喰いしばった。

「黒ずくめのポルシェ356Aに乗っている背の高い男…」

灰原はカルラから視線をそらし、カルラはそんな灰原を見ることもなくティーカップをソーサーに置いて息をつく。

「そして、ウォッカという男といつも一緒にいる髪の長い銀髪の男……」

ここまで言えば知らぬはずを通せるわけないだろうと鋭い視線を向ければカルラはコナンの瞳を見つめつつ口にしたのは

「知ってるわ」

という肯定の言葉。聞き出したいことは山のようにありすぎて矢継ぎ早に問いかけそうになるのをなんとか抑え込み

「黒澤は、一体ジンとどういう仲なんだ?」

と。カルラはそんなコナンを見てポツリと呟いたのは

「それが貴方に何の関係があるの?」
「っ、それは……」

灰原が、いや、シェリーが開発した薬を直接ジンに飲まされた張本人なんて言って下手にジンに伝えられても困るし、黒澤カルラをこのまま残して帰す訳にもいかない。

どう答えたものかとグルグル考えていればカルラはため息を吐き出して、そしてカルラのスマホが鳴り響いた。

コナンと灰原は肩を跳ねさせカルラを見ると、カルラはなんとも思っていないようにスマホをタップして『もしもし』と呟いた。

『今どこにいる』
『クラスメイトの家。もう帰れる』
『米花駅だ』

カルラは最後に日本語で「はい」と口にすると通話を切りコナンと灰原に視線を移し「私、もう行くから」と立ち上がりコナンはカルラの腕を掴んだ。

「どこに行く気だ」
「どこにいっても貴方には関係ないでしょう?」
「俺と灰原のことを話すのか?!」

カルラは硝子のような冷たく色の無い視線をコナンに向けたまま腕をぐるりと回し手を放させると

「ただのクラスメイトのことを話したって意味無いでしょう?話すことも、話すつもりもないわ。それじゃ、サヨナラ」

そう言うとカルラは颯爽と歩いて行ってしまいコナンはその背中を追いかけると「ジンの所か?」と問いかけたがカルラは微塵も興味ないようで酷く面倒くさそうに「二人に話してほしいわけ?」と眉を寄せ、コナンはカルラの背中を見つめながら唇を噛み締めた。

折角ジンと深い接点をもつ人間を見つけ、しかも、それが同じクラスの人間でジンと直接やり取りをできる人間なんて運が良すぎる。
いや、出来すぎていると考えるも、けれど自分と灰原のことは知られていないのでこれ以上突っ込んで話をできる筈がない。

サヨナラという言葉にただただ立ち尽くしたままカルラの背中を見つめ「工藤君…」というか細い灰原の声にコナンは振り返り

「大丈夫なの…?」
「…多分、大丈夫だろう……」

自信はあまりないが。
それでも今日まで接点を持とうとしていることも話していないようだし赤井さんのおかげでカルラの住む場所も知っているのだ。
いざとなったらそこに警官と供に、そう、安室さんと供に向かうのもありで、今の所イーブンである。
いや、8割方こちらの方が危険なのに変わりはないが、とにかく今日の事は黙ってもらえるように願うしかないだろう。


「父さん」
「乗れ」
「はい」

米花駅でジンと合流したカルラはジンの車に乗り込んで、明日の昼までにかけて仕事があるというその言葉に頷きそのまま動き出した車に揺られ、ジンがクラスメイトについてを聞いてくる事もなかったので話もしなかった。
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