前世がゾルディックな私の来世(全23話)
灰原は困っていた。それはもう困っていた。
学校から帰ってから出かければ公園の木の上に仔猫が「にゃあ」と鳴いて固まっているのだ。
あの仔猫を助けるべきかそれとも仔猫自信が下りることができるのかよく分からないので「おいで」と言っても仔猫は動かず。
「…困ったわね」
そうして見上げていれば不意に人の気配を感じとりそっと振り返れば近くのベンチに腰を下ろそうとしているカルラがいて、声をかけて助けてもらおうにもこちらは彼女を警戒しているため声をかけられない。
しかしそんな灰原に気付いたカルラは灰原を見つめ微かに耳に入った仔猫の声と灰原の様子にベンチから立ち上がり灰原へと近寄ってきた。
「…どうしたの?」
ポツリと呟いたカルラに灰原はやはり本の少し警戒するもカルラは木の上を見上げ「ああ、」と頷いた。
「これ、持ってて」
「え?えぇ…」
灰原はカルラから本を受けとるとカルラは木を登り始めてしまい「ちょっとあなたスカートでしょ?!」と慌てる灰原の声も聞かずスイスイと仔猫のいる枝まで登り詰め、そして仔猫を抱えるとヒョイと木から飛び降りた。
器用にもスカートを押さえつつも仔猫を庇うようにしたカルラに灰原は近付いて本と交換に仔猫を渡され受け取った。
「どうするの?この仔猫」
「…どうしようかしら」
黙って二人で仔猫を見つめていれば仔猫はにゃあにゃあと鳴き続け「お腹空いたのかな」とカルラが呟いた。
二人は本と仔猫を持ったまま近くのコンビニに向かいカルラだけがコンビニに入ると粉ミルクとお湯をもって戻ってきて再び公園の隅に行くと粉ミルクを溶かし仔猫に与え、やはり仔猫はお腹が空いていたようで勢いよくペロペロと舐め始めた。
そうして二人で仔猫を見つめていればカルラが顔を上げ灰原を見つめると、知り合いに猫好きはいるのかを問いかけてきが灰原は首をふりカルラは困ったようにため息一つ。
「黒澤さんは、いるの?」
「…私が飼えればいいのだけれど」
昼は学校だし両親も忙しいからと答え黙りこんでいれば
「哀ちゃーん!」
「灰原さーん!」
なんて声が聞こえてきて灰原は振り返り立ち上がると光彦、元太、歩美、そしてコナンが駆け寄ってきた。
「黒澤さん、哀ちゃん、どうしたの?」
歩美は首をかしげカルラは四人にチラリと視線を送るもすぐそらしミルクを舐め続ける仔猫の背を撫でた。
「どうしたの?その猫ちゃん」
そんな歩美の問いかけにカルラは黙り、灰原が事の次第を伝え、コナンは「へぇ」と声をもらし意外そうにカルラを見下ろした。
まあ、大してカルラのことを知っているわけでもないが。
そうして六人で仔猫についてを話始め灰原が「飼える人を探すしかないわね」と。
「なら、少年探偵団!仔猫を飼ってくれる人を探し隊!」
「「「おー!!」」」
なんて声を上げる三人を見てコナンは引き吊った笑みを浮かべ灰原はため息を吐いている。
そう簡単に見つかるものかと思いつつカルラも仔猫を見下ろし、仔猫はカルラの膝にすがるように登ってきてカルラはその仔猫を腕に抱き寄せた。
「黒澤さんになついてるね!」
なんて歩美の言葉にカルラはチラとした視線を送り、仔猫の背を撫で
「黒澤さん行こう!」
と歩美がカルラの顔を覗きこみカルラは仔猫を抱いたまま立ち上がって「そうね、」探しましょうと呟いた。
それにコナンと灰原を除く子供たちは拳を握りしめ気合いをいれカルラの背を押しながら歩き出した。
「お前が登ったのか?」
「いいえ、黒澤さんよ」
「あいつが?」
コナンの言いたいことは色々と伝わってきたため小声で話していればコナンはカルラの靴を見て「厚底で」と驚いており「どこから探そうか」と相談している子供たちを見る。そうして辿り着いたのは米花駅前。さらに三人が行動したのは
「仔猫を飼ってくれる人はいますかー!?」
なんてあまりにも単純なこと。
コナンは眉を下げ苦笑いを浮かべ灰原はカルラの腕の中にいる仔猫の背を撫で子供たちは声を出し続けている。
そんな三人に顔を向けるも近付いてくることもなく、なんと言うか騒がしい三人に米花駅前にいる警官が苦笑いを浮かべ近付いてきた。
「仔猫の親を探してるのかな?」
「はい!飼ってくれる人を探してるんです!」
「そうなんだね、でもちょっと……」
騒がしいんだろうなとコナンはため息を吐き出しカルラを見ると、カルラは一人の老人と話しており、観察するとその手にはキャットフード。
近付いて話を耳にいれるとどうやら老人が仔猫を引き取ってもいいと言っている。
コナンは三人に声をかけカルラは老人に続いていくとあっという間に仔猫の保護先が決まってしまい、わずかな時間の仔猫を飼ってくれる人を探し隊は終了したのだった。