前世がゾルディックな私の来世(全23話)



休日に蘭とポアロへと入ったコナンは窓側のテーブル席につき注文すると何とはなしに安室に話しかけそしてチラリと窓から見えた珍しい格好に思える少女、そうカルラを見つけてしまった。

一瞬で鋭い表情を見せたコナンに安室が気付かないはずもなく、コナンの視線の先に顔を向け、まあ、安室も難しい表情を浮かべてしまう。
そんな二人に蘭は不思議そうに首をかしげており安室の横をするりと避けポアロの扉を開けるとスマホを弄りながら歩いて行くカルラの名を呼んでしまった。

「黒澤!」

と。だがいつも通りその言葉を無視されると思いきや立ち止まってコナンを振り返って見つめてきた。
そうしてコナンを視認すると面倒そうに眉を寄せ歩き出そうとしたが次いでチリンという音と供に蘭と安室が顔を見せ、蘭が「可愛い~!」なんて言っており安室はニコリと笑うとカルラに向かってこんにちはと声をかけた。
それにカルラは少しだけ考えたようだがいつもと違って珍しくこちらに歩み寄ってきた。

「何か用?」
「あ、いや……」
「コナン君のお友達?」

特に表情を変えずコナンに問いかけてきたがコナンも"つい"で声をかけてしまったため言葉は続かず、その代わりに蘭が笑顔でカルラに問いかけている。

「……クラスメートです」

仕方なしという訳でもなくカルラはポツリと呟き蘭が「一緒にお茶しない?」なんて口実を作り上げてくれた。これは謎しかない黒澤カルラの正体を暴ける事が出来るかもしれないと

「黒澤さん、一緒にジュース飲まない?」

と話しかけた。
カルラはしばし吟味すると本当に珍しいことに小さく頷き蘭に背中を押され再びコナンたちはポアロへと戻っていった。

先程と同じ席についたコナンと蘭はコナンの横にカルラを座らせ、昼時であるため三人はランチメニューを頼んだ。ハムサンドである。

ワイワイと賑わう店内で蘭がカルラに尋ねかけたのは「黒澤なにちゃんかな?」というものでどこか楽し気に笑顔を浮かべておりカルラは、そんな蘭に視線を向け少しだけ悩む様子を見せたがポツリと「カルラ」と呟いた。

「カルラちゃんって言うんだね、可愛い!私は毛利蘭、上の探偵事務所に住んでるの。コナン君もね?」
「……そう……」

カルラちゃん本当に可愛いのね?コナン君、学校のことちっとも話してくれないから新しいお友達も教えてくれないの、カルラちゃんって綺麗な眼だし髪もふわふわでとっても可愛い!カルラちゃん、どこかの国のハーフかな?

そう色々と尋ねかける蘭にコナンは黙って答えを待ち、けれどカルラは黙りこんでしまい「友達?」なんて不思議そうにもしている。
やはり友達認識はされていないようだ。まあ、そうなのだが。

そうしてグイグイ問いかける蘭を見つつ梓が持ってきたジュースのストローに口をつけて悩むように飲んでいる。その様子は果たして何をどう答えるべきかの問答のようでもあり、どうしたものかという雰囲気をだしていて

「ねぇカルラちゃん?」

と首をかしげた蘭にとうとうカルラはポツリと呟いた。

「多分、ハーフ……」
「多分?」
「……私、母親いないから」
「あ…それって、あの……」

ごめんねと言った蘭のその言葉に特に返しもせずジュースを飲み込み、気まずい雰囲気を壊すように安室がハムサンドを三人分持って現れた。

「どうしたんですか三人して」
「ううん!なんでもないよ!」

そうコナンは返し、テーブルに置かれたハムサンドにカルラは手を伸ばし食べていく。
先程の会話がまるでたかったかのようなそれにコナンの疑いは大きくなっていくのだがカルラは少しも気にせずハムサンドを食べ視線を上げることもなく。

「気にしてないから大丈夫」

とだけ口にした。
蘭は困惑しながらも頷きコナンはやはりハーフかと思いつつ同じようにハムサンドに手を伸ばすと口に含んだ。
ふかふかのハムサンドはいつ食べても美味しいが今のコナンにはそれ所ではなくカルラを横目で見るも何とも思っていないよいでハムサンドを咀嚼し飲み込んでいる。

きまずい空気を消すべくどうすればと思っていればふとバイブ音が鳴り、蘭もコナンも安室も顔を上げれば、カルラがスマホを取り出して画面を見つめている。
ごく自然にその画面をチラリと見ればそこには非通知と表示されているがカルラは構わず耳にあて呟いた。

『もしもし、父さん』
『今どこにいる』
『喫茶店、誘われたの、仕事?』
『違うが、今日は家にいろ』
『わかった』

相変わらずフランスですのそれにコナンも蘭も首をかしげ、そして呟いたのは「フランス語かな?」というもの。
彼がそう言うのだから間違いないだろうがしかし内容までは分からないらしく「何の電話かな?」と問いかけている。
しかしカルラは答えもせずもう一つハムサンドを口に運ぶと財布からお金を取り出し安室に押し付けるように渡すとさっさとポアロから出て行ってしまった。

三人してポカンとしてしまったがそれでもコナンは横に座ったカルラの服に盗聴器を仕掛けたので眼鏡に手を触れる。
人混みの中、歩くカルラの横を歩いて行く人の声や足音が聴こえしばらくしてからザザッとノイズが混じった。
電話の着信でもあったのだろうか。息を殺して聞き耳をたてていたコナンの耳にもう一度ノイズが混じると

「余計なことはしないでちょうだい」

と耳に入ってきて息を飲むのと盗聴器がパキンと壊れる音がして、なぜ気付いたのかを考えてしまったがこれは確かにヤバイかもしれない。

「どうしたのコナン君?」
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