前世がゾルディックな私の来世(全23話)
カルラが転校してからしばらくが経ったがカルラは周囲から一線を引き過ごしている。そんなカルラにとうとう吉田歩美は強行手段に出た。
下校時刻、さっさと行ってしまうカルラの手を取って一緒に帰ろうと声をかけたのだ。
当然カルラは面倒そうにしているが振り払うような邪険な態度はとらずに、けれども小さくため息を吐き出すと吉田と視線を合わせ一言口にしたのは
「なんでそんなに私に構うの?」
というもの。そうすれば吉田はニコリと笑い「だって!」黒澤さんと仲良くなりたいんだもん!ときたもんだ。カルラはもう一度ため息を吐き出すと
「仲良くなってどうするの?」
と不思議そうに聞き返してきて吉田は笑ったまま
「黒澤さんも少年探偵団に入らない?」
「ーーー少年探偵団?」
興味がわいた訳ではないが仕方なしといったように繰り返したその言葉に吉田や児嶋、円谷は頷いて「少年探偵団と」そう説明してきた。
灰原は嫌そうに1人帰ってしまったがコナンは3人と供に残りカルラを観察していく。
歩美たちの言葉にどれだけ反応をするのかという意味を込めて。
しかしカルラは至極どうでもよさそうに「そう」と口にして歩き出す。けれどその手は未だ歩美に握られたままであったが下駄箱へとたどり着けば元太が己の靴箱の張り紙を見せ、いかに自分たちが難事件を解決したかを語っているがカルラはどうでもよさ気に靴をはきかえ話を聞かずに行ってしまった。
「黒澤さん!待ってよー!!」
「なーんであいつあんなツンケンしてんだよ!面白くねぇ!!」
元太の言い分にも確かに頷けるがどうみても彼女、カルラはコナンというか己や灰原のように大人が小さくなってしまったとしか思えてならない。
もしそうだとしたら俺や灰原が危険に晒されてしまうが今日までカルラはあの日のデパート以外では特に目立ったこともせず、たまに遅刻してくるだけでこちら側に関わろとはしない。それを吉と取るか凶と取るか二つに一つである。しかしコナンは両方を取りたい。
さっさと行ってしまったカルラの背を追いかける歩美たちにコナンも慌て追いかけるもカルラは眉間にシワを寄せたままコナンたちを振り返り
「私と仲良くなったって良いことなんて一つもないけど?」
「そんなことないよ!」
歩美はパッと笑い
「一人より大勢の方が遊んでた方が楽しいもん!」
光彦はそうですよと同意を見せ元太も歩美の言う通りだぞ!と同調してみせる。そして「ね、コナン君!」と。
そんなコナンたちにとうとうカルラは大きくため息を吐き出すと
「私に関わるとろくな目に合わないわよ」
「それってどんなこと?」
カルラは歩美をチラリと見ると
「怖いお兄さんがいるかもしれないでしょ」
「こ、怖いお兄さん?」
「黒澤さんのお兄さんですか?」
カルラは3人の顔を一瞬だけみると、ふと笑い「さぁ、どうかしらね」と残し行ってしまい、四人は立ち尽くしてしまう。そしてコナンが考えるのは灰原の様子とあの日デパートでナイフを素手で握り覆面の男の手に突き刺したそれを。
もしかしたら黒の組織に関係しているんじゃ……いや、だが黒澤カルラは黒ずくめの男と会っている様子は見せない。ただたまに遅刻してくるのは除くのだが。
「でも歩美、黒澤さんと仲良くなりたいなぁ!」
「ボクもです!ね、コナン君、元太君!」
「おう!」
「………」
コナンは返事はしないが静かにカルラを見つめており不意にカルラのスマホが着信を告げた。
カルラは吉田の手を振りほどくとスマホを取り出し、そしてフランス語で会話を始めた。近くに人がいても、ジンのことを知られないためにも。
『もしもし?』
『今日の夜から朝まで仕事だ、用意しておけ』
『はい、父さん』
たった二言だけのやり取りにスマホをしまったカルラを見つめている四人を振り返り
「私、やることがあるから貴方たちとは遊べない」
それじゃ、サヨナラ。そう言うとカルラは足早に、でもないが颯爽と行ってしまい四人はただただ去り行くカルラの背中を見つめることしかできず、歩美は胸の前で拳を握りしめると
「ぜーったい仲良くなるんだから!!」
と声を上げ光彦たちも大きく頷いた。
コナンだけは肯定できずにいるのだが。