前世がゾルディックな私の来世(全23話)
帝丹小学校に通い始めてから1週間が経ったが、依然カルラの家は特定できないしカルラもクラスメートと仲良くしようという様子も見せずに過ごしている。
円谷はチラチラとカルラに視線を送っているがカルラはゲームをしており吉田がカルラの横にくるとこの1週間いつものように声をかけたのは
「なんてゲームアプリ?」
というもの。
「…RPG……」
「どんな?仮面ヤイバー?」
そうニコニコと問いかける吉田をチラリとも見ず「そんなもの知らない」と答えながらゲームを止める様子もなく児嶋がつまらなさそうに何度も「ほっとこうぜ」と。
カルラもそうしてほしいと願っていても後ろの席のコナンは目を光らせ発信器と盗聴器を取り付ける機会を伺っているのだがうまくいかない。
取り付けるのなら接触をしなければいけないのだがカルラにはその隙が少しもない。
ピリピリとした気配を出しているわけでもないのだがそっと手を伸ばせばチラリと睨むように見られてしまい惨敗だ。そして怯えたようにしている灰原に対しても某かの行動を示すこともなくコナンは己だけの杞憂かと思ってしまう。そんな中、事件が起きた。
コナンたちがべいかデパートで仮面ヤイバーのショーを見に行った日に別のフロアでカルラを見つけたのだ。
これ幸いにと吉田が駆け寄っていき「黒澤さん!」と声をかけていく。そうすればカルラは視線を吉田に向け面倒そうに眉を寄せていて、けれどコナンたちもカルラに近寄って行き
「黒澤さんも仮面ヤイバーのショーを見にきたの?」
「何だよ、お前もファンなんじゃねーか!」
その二人の言葉にカルラは息を吐き出して「私、用事あるから」と離れて行ったその瞬間、覆面の男が数人姿を見せカルラの首にナイフをあてがった。
「このデパートに爆弾を仕掛けた!大人しくしろ!!」
そうして覆面の一人が銃を発砲しカルラを人質にして、インフォメーションまで歩いて行く。他の覆面たちは別の階へと行ってしまいカルラも黙って従っている。
子供たちは慌て逃げようにも4人ともはぐれてしまいコナンはカルラと供に覆面の男に捕まえられてしまった。
この男一人ならどうとでもできるのだが覆面どもは見た限り後3人いる。さてどうしたものかと視線を鋭くさせていればカルラはスマホのゲームアプリを起動させておりそのスマホを覆面に奪われてしまっている。
「セーブしてないんだけど」
「大人しくしてろガキ!痛い目見たくねーだろ!?」
「…痛い目って、なに」
そんな面倒そうな表情を浮かべているカルラをコナンがチラリと見て、そしてインフォメーションの電話が鳴り響いた。因みに直接的に捕らえられているのはカルラとコナンだけで後の一般人たちはデパートを出て行ってしまっておりカルラは男を見上げている。
あまりにも"子供らしくない"その反応にコナンは目を細めカルラは首にあてがわれたナイフを、ナイフの刃を握りしめたのだ。
覆面の男は驚いたようにナイフを引いてしまいそして赤い鮮血が滴り落ちた。それでもカルラは少しも気にした様子も見せずカルラを見下ろし動揺している覆面の男の急所へとカルラは右の拳を叩きこんだのだ。
男は呻きナイフを取り落とし膝を付きカルラはナイフを拾い上げると男の首にあてがった。
そして一切の躊躇もなくナイフを横に引けば男の首の薄皮1枚切れたようでタラリと血が垂れていき男は首に手を当て硬直してしまっている。
もちろん、コナンも。
男、ではなくカルラの手からポタポタと血がこぼれていきカルラは勢いよく男に頬を張り飛ばされてしまった。
鈍い音と供にカルラの顔が横を向きカルラからナイフを奪い取るとカルラの首にあてがい押し倒した。
「舐めやがってクソガキ!」
「素人が騒いでんじゃねぇよ」
殺したきゃさっさとナイフを引きなと口端を吊り上げて笑ったその表情はジンと似通った所が様々と表れコナンと男は息を飲む。そのカルラの足が再び男の急所をとらえカルラは男の取り落としたナイフで男の右手の甲にナイフを勢いよく突き刺した。
ズブリと埋まったナイフに男は断末魔の悲鳴を上げ手を覆うように握りしめカルラは男の首に手刀を落とした。
男はそのまま倒れこみポカンとしているコナンを他所にカルラはさっさと出口へと行ってしまいすぐ警察の機動隊が突入し覆面男たちは逮捕されてしまった。
床に広がる血の海に佐藤刑事がコナンに問いかけてきたのは一体何があったのか。
コナンは手短に話すと佐藤刑事は驚いたようにしているがカルラの姿はなく、なんともイヤな形でその事件は幕を下ろした。
翌日カルラは片手に包帯を巻いているが特に変わった様子は見せなかった。