前世がゾルディックな私の来世(全23話)



少年探偵団を自称する5人、いや3人はヒソヒソと小声で話しているがコナンと灰原は中に入ろうともせず、だが声をかけられると答えるしかないので

「本人が知られたくねーんだろ?無理に近付くなよ」

とコナンは答え灰原は教科書とノートを整えつつもコナンと同じように

「そうね」

なんて呟いたその表情はあまら明るくはない。それでもコナンも少しは気になるので3人の会話にそっと耳を傾ける。

「やっぱり帰り道を尾行しよう!」
「もう一度声をかけてみませんか?」
「あんなツンケン女ほっとこうぜ?」

確かにあのカルラという少女のクールぶりは灰原を通り越え愛想がとてつもなく悪い。気にはなる。だがそれだけだ。
昼休みにカルラを探せば体育館裏でゲームをしていて、そのふわふわの銀髪が風に揺れており少しでもニコリとされれば顔くらいは赤くなってしまいそうだがそんな表情をくれることもなく、酷く面倒くさそうな表情を向けられたのだが。

4時間目の授業を終えた1ーBは教室の清掃を行い、黙々とそれに動いているが困っている様子もなく、男子生徒が野球の真似をして遊んでいるのさえもどうとも思っていないようで。

さっさと掃除を済ませH.Rを終えるとさっさと立ち上がり教室を出て行ってしまったので吉田らはその後を追いかけていく。

「ほっときゃいいのになぁ灰原」

そう呟いたコナンの言葉は灰原の耳には入ったようだが如何せん彼女の顔色はあまり良くない。どうしたのだろうかと眉を寄せたコナンは灰原にだけ聞こえるように尋ねかけたのは

「あのカルラって子に何かあったのか?」

というもの。その問いかけに灰原は暗い表情のままポツリと呟いたのは「例の組織…」

「あのカルラって子、もしかしたらだけど関わっているかもしれないわ」

その一言にコナンは大きく目を見開くが努めて冷静な声色でどういう事だという視線を向け、続けて灰原の口から出たのはコナンの顔色さえも悪くしてしまうもの。

「…誰の子供かは知らないけど、組織にいた頃に風の噂で聞いたことがあるの」

銀髪の天然パーマに珍しいロリータの緑の瞳を持つ少女。
組織の管理下にいながら、彼、そう主にジンとウォッカと連れたって歩いて仕事に手を付けている女の子。
本当に噂なんだけど容姿も人を寄せ付けないでいるその行動もまんま「黒澤カルラ」にあてはまる。

「じゃあ、もしかしたらあの女の子がジンとの架け橋になっているってことか?!」
「分からないけど…でも、もしかしたら……よ」

そうして2人で話していれば探偵団バッジか歩美の声が聞こえてきて「コナン君も哀ちゃんも急いで!」黒澤さんが行っちゃうよ!なんて。
コナンと灰原は少し黙りこむと

「灰原はフードをかぶって一人で帰れ」

と口にしたコナンは駆けて行く。その行動はとてつもなく危険な行為なのだが灰原が止める前に行ってしまい灰原はフードを深くかぶると急ぎ足で帰宅した。

代わって4人の探偵団は静かに歩いて行くカルラの背中を追いかけ尾行しつつどこに住んでいるのかを突き止めようとした。しかしそんな尾行はカルラにはしっかりと気付かれていてカルラはため息を吐き出すと眉を寄せ背後の4人に苛立ってしまう。

別に嫌いだからと言うわけでもなくただ単に面倒なだけだし前世の記憶でキキョウ母さんやイルミ兄さんの教え。友人は作るな、暗殺だけを生き甲斐にしろ、それを実行しているだけ。そして今の父さんを見られないため。もし見られたら小さな探偵君に「あれは誰だ」とだろうから殊更一緒にいるわけにはいかない。

カーブミラーをチラリと見上げれば私の背後には4人がしっかりと張り付いており大きく息を吐き出すと点滅している信号機を駆けて渡ることにした。
もちろんそんな私の行動に4人か着いてこれる筈もなくそのままカルラに撒かれてしまいカルラは人ゴミに消えてしまった。
まあ、あの目立つ容姿である。道行く人に尋ねて歩いて行けばカルラの住む家まで行けると踏んでいた4人だがしかしカルラは気配を消し素早く動いているため道行く人達の意識には入っていないよいだ。

4人を撒いたカルラはチラリと後ろを振り返るとそのままマンションまで行き、セキュリティがバッチリのそこへと帰宅した。多少の背伸びで最上階を押すとエレベーターは動き出し、鍵を開け室内へと入る。

そうして荷物をソファに置くと宿題として出されたものに手を動かしていれば30分程で終わってしまいスマホを開いた。気付かなかったけど、父さんからメールが来ている。

「10時までに用意しておけ、時間になったらマンション前にいろ」

それに了承のメールを送れば秒で既読がつきそれを確認したカルラは窓を開け空気の入れ換えを行い部屋の清掃を始めた。そのまま清掃も終えるとスマホでゲームをして時間を潰し、簡単な夕食を済ませ黒服へと着替えた。もちろんこれもロリータであるがブーツをはき10時ジャストにマンションの前に立ち尽くす。
そうすればすぐ父さんの車が横付けしてきて父さんとウォッカと視線を合わせると無言で車に乗り込みすぐ車は走り出す。

「今日は何をするの?」
「カルラの得意分野だ」

つまり暗殺、殺し。留守番。この3つのどれかだろうがまあ時間的に殺しだろう。

ジンはカルラに1枚の写真と書類を渡すと、カルラはそれに目を通し小さく頷くと

「分かった」

と呟きジンは満足そうに口端を吊り上げ笑い煙草の煙を吐き出すとその白い煙は夜闇に消えていき目的の現場に着くとカルラはジンと供に車を降りるとポキポキと骨をならし歩いていく。

「用意はできてるな?」
「はい、父さん」

そうして3人は闇の中に消えていった。
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