前世がゾルディックな私の来世(全23話)



父さんたちが行ってしまってから二時間もせず戻ってきて、その手には黒いアタッシュケースがあって。恐らく金であろう。因みに私にしつこく声をかけてきたヤは私の腕を掴んだままであり父さんに睨まれている。
そんなことに気を向けなかった私はゲームアプリを閉じるとソファから立ち上がり父さんに近寄っていく。
そうして父さんは二言三言言葉を交わすとフランス語で

『何かあったか?』

と問いかけてきたので、私の腕を掴んできた男以外は特に何もなかったと伝え、父さんは「そうか」と呟いた。
そして父さんは私とウォッカに「行くぞ」と言うと私は鞄を持ってその背中を追いかけて車に乗り込むと連れられたのは帝丹小学校。途中からでも通えと言うことだろう。

「行ってきます」

そう父さんに言えば「今夜もう一件仕事だ」と言われたのでコクリと頷いて車を降りれば父さんとウォッカか乗っている車は行ってしまい鞄を担ぎ直しながら校門をくぐり校舎内へと歩を進めた。
どうやらあと少しで授業が終わるらしく1ーBの教室の扉をガラリと開ければクラス中の視線が私に向き教師もこちらを見つめてくると

「カルラちゃん今日お休みじゃなかったの?」

と至極当然の疑問をぶつけられるが私は小さく「用事がすぐ終わったから来ました」と伝え、ノートと教科書を机に置いた。

「おはよう」なんて声をかけてくるクラス内の声を無視していれば教師が「ノート書けたかなー?」なんて言いながら黒板消しを持ち見回してくる。

「黒澤さん」
「……なに」

隣の円谷の声に顔を向ければ「ノート写しますか?」なんて言ってきたので軽く首を振り必要ないという意思を示した。その10分後にチャイムが鳴り響き全校生徒がノートなどをしまいこみ給食の準備に取りかかった。特に児嶋という男の子が一番嬉しそうに動き回っている。どうやら今週の給食当番らしい。

嬉々として盛り付け全員が席につくと

「いただきます!」

と声を上げてパンを口に含んでいる。
給食文化なんて前々世ぶりであった昨日だが懐かしくもあり面倒でもある。
ワイワイとした中で黙って食べていれば円谷が控え目に私に声をかけてきて

「用事って何だったんですか?」

と問われたので本の少し悩むが小さな声で一言の真実を口にした。

「お留守番」

と。嘘ではない。ヤのつくその場所で父さんを"待って"いたのだ。円谷は不思議そうに「お留守番?」と首をかしげていたが気にすることもせず食べ終わった食器を片付けるとスマホを持って教室を後にした。
もちろんクラスメートも教師も不思議そうに、そして戸惑ったように私を見つめていたが気にもせず。

校内地図を見て、体育館裏に行くとスマホをいじりゲームアプリを立ち上げて進めていき、しばらくして聞こえてきた声に顔を上げれば吉田や円谷たちが「黒澤さんいたー!」なんて笑って駆け寄ってきて思わず眉間に力を入れてしまう。折角いい所なのに。

ゲームアプリを閉じるとスマホを片手に立ち上がり近寄ってくる5人を目にする。

そうして近寄ってきた5人は「サッカーしよう」と誘ってきたが果てしなく面倒だし太陽が嫌いなのでハッキリと「嫌」と断れば良いや円谷は残念そうにしており、児嶋が「運動神経悪いからやりたくねーんじゃねーのか?」なんて言ってくるので不快な気持ちをそのまま顔に表すと

「あなたみたいな人とは遊びたくない」

と切り捨て5人の横をすり抜けると図書室へと向かった。
ちょうど父さんからメールが来てるし問題ないだろう。

スマホをポチポチしながら図書室までを歩き、そんなところを担任の教師に見られてしまった。

「カルラちゃん」
「……はい?」
「大丈夫?」

何が?と言わんばかりに見上げれば先生は腰をかがめ私を見つめてきて「馴染めないかな?」なんて心配そうに言われてしまったため再び仕方無く首を振り

「そうでもない」

そう小さ答え、図書室へと校舎内を歩いていきため息を吐き出してしまった。

疲れる…。
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