前世がゾルディックな私の来世(全23話)
昨日、自宅に帰ればそこにはベルモットがいて「お帰りなさいカルラ」と微笑んできたので「ただいま」と答えてトートバッグをソファに置いてから紅茶を淹れているベルモットを手伝い二人してソファに座ると紅茶を口に含んだ。
「これ、新しい茶葉ね」
「あら?気付いたの?」
私はコクリと頷きベルモットはそのまま紅茶を飲み干し夕食を作り終えると「お休みキティ」と微笑み行ってしまい、ご飯を食べ、片付けて翌日を迎えた。
高層マンションの最上階の一番広い部屋は扉を閉めれば自動でロックが掛かるため鍵を気にする必要もなく昨日覚えた通学路を歩いて行く。
そうして歩いていれば会社に行く人や学校に通う生徒達で溢れており、それに合わせて歩いていれば
「あ!黒澤さん!!」
なんて呼ばれたため仕方無く振り返った。
「おはよう黒澤さん!」
「……おはよう……」
女の子、吉田歩美はニッコリと笑い私と肩を並べて歩きだし後ろからも「おはようございます」「おはよう」黒澤さん、なんて呼ばれたためそっと行きを吐き出した。しかし灰原は相変わらず難しい表情で私を見ており、シェリーとしている時に会った事はないが多少の噂で私の事を知っているのだろうか。父さんに似た銀髪の子供って。
それでもどうでもいいので話しかけてくる吉田に小さく答えながら小学校へと進んでいき
「あ、コナンくーん!」
なんて、前を歩いていた江戸川が振り返った。
「歩美ちゃんに光彦と元太、灰原もおはよう」
なんて口にして眼鏡の向こうの鋭い視線が私に送られ
「黒澤もおはよう」
と。
声をかけられたのだからまたしても仕方無しに小さく「おはよう」と口にし後は黙って歩いていくのだが背中にビシバシとした視線が貫いてきて自然、面倒くさくなりため息をもう一つ。
そいして小学校に着いた所で鞄の中のスマホが着信を告げ門をくぐらずスマホを見れば『父さん』と表示されており門に寄りかかりながら5人の視線を無視してフランス語で『もしもし』と口にした。
『父さん、どうしたの?』
『仕事だ』
私がフランス語で話しかけたのは周囲に人がいたためだと気付いてくれた父さんは同じくフランス語で返してくれて、5人は黙って…はいないがこちらを見つめてきていたが私は5人に手を振ると
「私、用事できたから、『父さん、どこで合流すればいい?』
『米花駅だ』
小さく『はい』と頷き5人、というより江戸川を見やると
「先生に休みだって伝えておいて、それじゃ、サヨナラ」
そうスカートをなびかせ背中を見せれば肩を掴まれ面倒気味に振り返った。
「…なに」
「どんな用事?電話の相手って、誰?」
「………」
鋭い視線に目を細めるとたった一言
「プライベートなことを、一々教える必要なんてないでしょう」
そう肩に置かれた手を払いどけ米花駅へと歩き出した。因みに、絶賛、通話中である。
『カルラ、どうした』
『クラスメートに話しかけられただけ、それじゃあ父さん』
急いで行くねとそこで通話を切りすぐ米花駅へと辿り着いた。
「父さん」
駅前のロータリーに停車している車に駆け寄り後部座席に乗りこめば父さんは「よう」と口にし私も私で「おはよう」と微笑んでどこに行くのかを尋ねかけた。どうやら杯戸町まで行くらしい黙ってシートベルトを閉めた。
父さんはウォッカと二人して話しており、それに耳を傾けつつも用事のあるそこに着くまで暇になるためスマホのゲームアプリを起動した。
そうして本の少しゲームをしていればすぐ車は裏通りに入りしばらくして監視カメラが設置してあるビルの前に停車した。
用事があるというのはここなのだろうか、車を降りた父さんとウォッカ二人に続き車を降りればそこは"ヤ"のつくそこであり父さんは特に躊躇うこともなく扉を開けた。
父さんとウォッカはヤのつくそこの建物内にいる組長に声をかけ、私はヤのつく人達にジロジロ見られるがそんなことは気にもせず父さんの背中を見つめていた。
そうして不意に父さんは私を見下ろすと
「カルラ」
と呼ばれ
「取り引きだ」
「はい」
取り引きという名の私の今日の仕事は父さんがヤのつく人達と少し金をどうこうするための保険のようであるらしく、金の代わりに人質としてこの場にとどまれという事だ。
詳しく聞きもせず返事をした私にヤのつく組長は私を見やると口端をつり上げて笑うが、父さんに「仕事の邪魔やそれ以外のことでこいつに手を出さねぇ方がいいぜ」とニヤリと笑うと事務所から出て行ってしまった。なので私は事務所内のソファに腰を下ろし父さんとウォッカ、他のヤのつく組員たちの瀬を見送り私はスマホを取り出した。
「どっかに連絡するのかい?嬢ちゃん」
なんてヤの一人が私の横に腰を下ろしてスマホを覗き見られたがそこにはさっきインストールしたゲームアプリが開かれているだけで、色々聞いてくるヤを無視していれば舌打ちと同時に私の腕を掴んできたがやはりそれも無視してゲームを進めていく。
そんな私の態度に諦めればいいものをしつこく突っかかってきて私は一旦指を止めるとため息を吐き出しつつ
「暇なの?」
なんて言ってしまった。