7年ぶりの初めまして(全39話)
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ツアー中も新一君からメールは届くし秀からもメールや短い電話も来ていたのだが零については聞かないようにしている。聞いたら最後、会いたくなってしまうから。
半年所か七ヶ月が経ち、ツアーを終え久し振りに東都へと戻ってきて最後に東京ドームっのライブに気を向ける。
初めてのライブツアーに、そしてそして最終日のツアーに意気込んでいるメンバーと話し合って演出や衣装を選び最終確認中を済ませると私たちはドームの壇上に上がり込んだ。
結果は大成功である。
他の県でのツアーと同様に。
美和子と高木君、テストに明け暮れている蘭ちゃんや園子ちゃんにもチケットを渡してライブに来てもらい、ライブが終了して帰り支度をしていれば新一君からメールが届いた。
『いつもの折り返し地点で待つ』
と。
新一君は一体どこかは分からないようだろうけど私は急いで荷物をまとめると会場を後にしようにもメンバーがツアーに関わっていたスタッフ達と一緒に打ち上げをしようと声をかけてきたのたが私はそれを勢いよく断りタクシーにのりこんでランニングの折り返し地点で降車した。
大きな荷物は他のメンバーやスタッフに任せ下駄を夜闇に響かせながら走っていけばその闇の先では白い車とたった一人の影。
「れ…れい?」
震える声でそう小さく呟けばその人影は私を見るとアイスブルーの瞳を細く緩く笑ったそれに息を詰まらせてしまって
「奈々」
「零!」
そう抱き付いてしまった。
零は、笑って抱き締め返してくれて背に回った手に力が入り心臓が高鳴るとボロボロと涙が溢れだしてきた。
「ツアーお疲れ」
「七ヶ月振りにそれかよぉ!!」
思わず笑い泣きになってしまっていればしかし零は背中に回した腕に更に力をこめ額に口付けを与えられてしまった。
それに対するように私も腕に力を入れ顔を肩に押し付けつければ零は小さく息を飲み、私は顔を上げると零の肩にそっと触れ呟いたのは
「肩、怪我してる?」
「…少しだけ」
「もう、終わったの?」
「一応ね…」
静かに零を見上げた私は零の肩に手をあてながら黙りこみ
「手紙は…」
「全部読んだ」
そう、と言いながら鼻をすすり目元の涙を拭おうとすればそれより先に零の指が涙をすくい上げ笑ってきた。
「何笑ってんだよバカ!」
「全部が全部、俺のことを想ってくれて」
嬉しくてきちゃった、と。
思わず「彼女か!」と言いながらも笑ってしまい、泣いたり怒ったり笑ったり忙しいな自分と思いつつ抱き締めてから顔をあげると掠めるように口付けを送った。
そうすれば零は驚いたようだがそれ以上に嬉しそうに笑うと私の後頭部に手を回し口付けを送り返してくれて、私は笑ってしまった。
聞きたいことは山のようにあったがそれを教えてもらえるはずもなく、本の少し笑いあうと零は私を自宅に送り返すと
「こっちに帰ってきても、やっぱり連絡はそう返せないけど」
浮気してないよな?という言葉に頭突きをかまし左手の指輪を見せれば七年前の"証"がキラリと光り、零は首から下げた指輪を見せてくれた。
「はめないの?」
「ああ…今度は、本当のモノを贈りたいから」
「本当のモノ」
それが何を意味しているのかを悟ると今度はまた違う意味で心臓が高鳴り、それでも忙しいという零は車を走らせて行ってしまい、新一君と秀に零が来てくれたという内容のメールを送った。
新一君からは「良かったですね」と。そして秀からは「忙しいだろうが、やはり君に会いに行ったんだな」とメールの向こうで笑っている秀が目に浮かんでしまった。
もう零に連絡を"直接"送ってもいいし一ヶ月先だとしても会うことができるのなら、それはもう嬉しさと喜びしかない。
夜闇の中、零の車を見送ってから家に入り自室に戻ると荷物を放り出しパタリと横になって寝転がった。
「…会えた…生きてた…来てくれた……」
嬉しくて嬉しくて嬉しくて。そして切なくて起き上がると帯を解き着物を脱ぎ捨てればその解放感にも笑ってしまった。
さあ、今度は何ヵ月待たされるのかな、なんて思いつつ、私の七年と七ヶ月は幕を閉じた。
(完)
ほのぼのラブを目指した結果の完結です。
バンド仲間とのやり取りや、別方向の話も色々と考えましたがこのような形で終わらせてみました。
このあと何ヵ月待たされるのか、本当のモノを渡されるのはいつか、そんな悶々とした思いを受け取ってください。
ここまで、ありがとうございました!
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