7年ぶりの初めまして(全39話)
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それは一瞬の事であった。
つい先日も殺されそうになったが安室によって助けてもらい死にぞこなったのだが今目の前で見ているのは全く別人の、他殺死体。現場。
そう、歩いていれば信号が赤になり立ち止まり待っていれば横にいた人物が突然小さな声で「きゃ」と声を上げ「え?」と振り返り見ようとしたそうその瞬間、横にいたと思われる女性が前方の道路に転ぶように倒れこみ手を伸ばして助けを求めてきた。
それなのに、私が手を伸ばしたその目の前で激しいクラクションと共に女の人は跳ね飛ばされた。
ドンッという鈍い音と供に女の人は、はるか遠くに弾き飛ばされしまいビシャリと足袋と下駄、そして着物の裾に血が跳ねついた。
そして目に焼き付いたのはあの女の人の最期の目。
絶望と私に助けを求めるその目は最期まで私を見つめており本のわずかな悲鳴もなく、女の人は血飛沫を上げて。
急ブレーキをかけたトラックの甲高い音と私の周囲にいた人の波が叫び声を上げたところでハッとし現実に戻ってきたのだが。
脳裏に焼き付いてしまった女の人の目にグラリとした目眩と吐き気を覚えていても私は冷静に動いたのは美和子への電話、通報。
カタカタと震え冷えていく手をなんとか動かし美和子が電話に出てくれるのコールが酷く長く感じ、それでも3コール目でその美和子が電話に出てくれた。
『もしもし奈々?どうしたの?珍しいわね、何かあったの?』
そう問われひきつり枯れて出ないようになってしまった声を振り絞って出したのは
「み、みわこ?い、今ね、事故で」
ぐるぐると思考が周り上手く説明できないがそれでも名を呼ばれたそれに大きく深呼吸をすると口を動かして出た言葉は
「交通事故、目の前で女の人がトラックに」
私のその言葉に美和子は声を鋭くさせ『どこ?!』と強く問われすぐその場所の住所を告げ与え、美和子は
『すぐそこに行くからそこにいて!行くわよ高木くん!』
と通話を切られてしまった。
トラックは斜めに停車しており真っ青になったトラックの運転者が姿を現し周囲の人達もザワザワとしながら事故現場を見ようとし、所々で「すっげー血…」「ズタズタじゃん」なんて似たような言葉が広がっていき動画を撮ったり写真に収めているその人達の声も遠ざかっていき。
フラリと足から力が抜けそうになりなんとか踏ん張ってヨロリとすればその肩をそっと支えられ
「ありがとう、ございます」
と呟き見上げたそこにいたのは
「れ、れ…あ、安室さんか…」
思わず本名を口にしてしまいそうになったが訂正するように安室の名を口にすれば安室さんは私の肩を優しく支えたままそれはもう優しい微笑みと供に
「大丈夫ですか?」
と言われてしまった。
その声にホッとし息を吐き出すとカクンと足が落ちそうになり抱き上げられた。
「え、安室さん、なに、」
「少し座りましょう」
そう歩いて下ろされたのは歩道の段差。
そっと座り直し膝の上に手を置けば「どういう事か説明できますか?」と問われ安室さんを見上げながら簡単なことしかと呟き
「教えて下さい」
私はそっと息を吸うと
「信号で立っていたら横にいた女の人が転んでそのままトラックに…」
冷え固まる私の両手を包むように握りしめられ、そっと額に口付けられて
「奈々さんは無事ですね?通報は?」
「しました」
そんなポツリと呟いた声をしっかりと聞いてくれてもう一度安室さんが額に口付けを落とすと「ここにいてください」とそう言われ小さく頷いた。
行ってしまった安室さんと程なくしてパトカーのサイレンが響き渡り美和子の赤のRX-7が目に入ると顔を上げすぐ美和子が私を見つけ近寄ってきてくれた。そして他の警察官も。
警官は動きテープを張っていき座り込んでいる私を美和子は見下ろしてきて、ついさっき安室さんに尋ねかけられたそれに同じように返しておく。そうすれば美和子は悩みそして私が「あ」と思い出したのは女の人の倒れかた。
あれはまるで誰かに突き飛ばされたような声と動きであり絶望的なその表情が全てを物語っていた。
フラリと立ち上がり自分が立っていたいた位置に行けば美和子も着いてきて
「ここに私がいて、右に、あの女の人がいたんだけど」
なんだか突き飛ばされたみたいだったんだけど
「詳しく教えて」
詳しくと言われても本当にただそれだけなのでと答えても私の周囲にいた人達も事故検証に付き合わされ、他の人達もその女の人の倒れかたが少しおかしかったと証言してくれた。
そうしてしばらく話し合っていれば私はそっと息を吐き出し、つい先程安室さんによって握りしめられたそこから温もりを思いだし擦り合わせる。
美和子と高木くんは何度かそこにいた人達に色々と問いかけており、いつの間にか安室さんの姿もなくわすがな証言でやはりあの女の人は突き飛ばされたのだと立証されてしまった。
しまった、と言っても別に人物が私ではないのだが美和子を待っておりトラックによって吹き飛ばされ千切れてしまった女の人は青いシートの向こう側で回収されているのだろう、それを想像しただけで酷く気分が悪い。
警察官はスゴいと思っていれば一通りの事情聴取を終えたらしくあの女の人が突き飛ばされた時、それを目撃したらしい人が数人現れ、私含め5人の人がそこに残された。
私と、私の横、すぐ後ろ、そして目撃した2人が「詳しく」と言うことで話し合い、あっという間に事故のような事件は終息した。
犯人は私のすぐ後ろにいた人。その理由は話そうとはせずそれでも男はパトカーに乗せられ連行されていった。
夕暮れ時の地面には血だまりが乾き始め通りすぎ様にそれを見て眉をしかめ通り過ぎていく人もおりまた再びあの女の人の最期の目を思い出してしまいフラリとしたその身体をまた支えられが「え」という言葉をもらせばそこにいたのは安室さん。
どこに行っていたのだろうなんて疑問を持っていれば苦笑いを浮かべつつ私の腰に手を回し
「僕の家に来ますか?一人で眠れる?」
そんな思いやりと大好きな人の温もりにやっと、ほっとしたような笑みを浮かべると
「大丈夫、安室さん」
でももし駄目なら電話するかも、そう呟けば
「いつでもお待ちしております」
そう微笑まれた。