7年ぶりの初めまして(全39話)
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あんなことがあってからの翌日、再び門下生を伴いポアロへと行けば梓さんが笑顔で迎えてくれて、そして安室さんに甘えたような表情で引っ付いている女性の姿を目にした。
そうした梓さんの声とベルの音にこちらを向いた安室さんも笑顔を浮かべるがそれはどこか気まずそうなものであり、門下生は
「あの人、恋人いるんですね…可愛い」
そう呟いている。それに私は笑うと「可愛いねぇ」なんて呟いてテーブル席に着いた。
そうすればすぐお冷やとおしぼりを持ってきた梓さんが門下生を見て
「昨日の方ですよね」
と問いかけてきたので門下生は頬を少し赤くしながら「はい!」と答え、私は紅茶を、門下生はコーヒーを頼み、持ってきてくれたのは安室さん。
なんだか安室さんの背後から安室さんに腕を絡ませていた女性の視線を感じ
「女って恐いねぇ」
なんて呟いてしまったのはフラグであろうしそんなんいらないと思いつつすぐ知ることとなる。
門下生はコーヒーを飲みながらチラチラと梓さんを見ており
「君、何歳だっけ?」
「俺ですか?今年で24になります」
確か梓さんもそれくらいだったかと口にすれば梓さんが近寄ってきてニコリと笑うと門下生は背を伸ばし、私は笑いながら
「パンケーキください」
と。
時刻は既に6時を回っておりこれを夕飯にしようと思っているので梓さんはにこにこしながらもシロップ多めだよね?と注文をとり、門下生さんは何か頼みますか?と首をかしげている。可愛い。
そんな梓さんに「自分もパンケーキお願いします!」そうそれはもう元気よく。
梓さんが作ってねと頼めば梓さんはりょうかーい!とウインク一つカウンター内へと行ってしまい私は門下生にそっと囁いたのは
「これで合法的に梓さんの手作りだよ」
というもの。
門下生はパパパっと表情を輝かせ「ありがとうございます先生!」なんて口にして。
そうして二人で話ながらも門下生はチラリチラリと梓さんを見つめ私の背に突き刺さるのは先程の女性のものだろう、極力そっちを見ないようにしていれば程なくして梓さんがパンケーキを持ってきてくれて今度は私が表情を耀かせてしまった。
「すごい…夢のパンケーキ…」
「夢って、普通のパンケーキですよ~!」
と梓さんは笑い門下生と一緒に「いただきます」と手を合わせ私はシロップをヒタヒタになるまでかけてそれを切り分けると口に運んだ。
そんな私の背後を通りすぎ様に安室さんが
「奈々さんは本当に甘党ですね」
と苦笑いをもらい
「太らなければ大丈夫ですよー!そして働け店員さん」
と声をかけてしまった。その言葉に表情を歪ませた女性が物凄い恐ろしい目で睨み付けてきたので知らない振りをしたい所だ。
ヒタヒタのパンケーキを食べる私と、大事そうに食べている門下生、その私たち、正確には私が食べ終わったのを確認した女性がこちらに近寄ってきたと思ったらそれはもう苦々しい表情で見下ろしてきて吐き捨てるように問いかけてきたのは
「あなた、安室さんの何?私の安室さんに馴れ馴れしくしないでくれない?」
「…は?」
思わずポカンと呟いてしまった。そんな私に更に表情を歪ませると
「安室さんの彼女は私だから」
それが何なのだろうと首をかしげれば安室さんが苦笑いを浮かべつつ
「上条さん、コーヒーのおかわりは?」
と入り込み上条とやらは甘えた声で「だってぇ」と。
「この人安室さんに色目使ってるんですよ?」
そんなもの一度も使ったことがないがとしていれば上条さんは安室さんに口付けを送ろうとしたが「仕事中なので」と諌められており上条さんは私を睨み付けるとポアロをさっさと出ていってしまった。
「お、お会計してないよ?」
「はは…」
はは、じゃないだろ安室さん。
門下生は「押しが強い人だな」とも呟き、あそこまで堂々とイチャイチャされるとむしろ嫉妬の「し」の字も浮かばないのでジュゴゴゴゴとアイスティーを飲み干しスススっと梓さんが近寄ってきた。
「あの人毎日来るんですよ?ポアロに貢いでくれるどころかいつも安室さん払いなんですよ?安室さんどういう事ですか!?」
なんて尋問しており、しかし安室さんは苦笑いを浮かべるだけで否定も肯定もせず私は笑ってしまう。
「俺は先生の方がお似合いだと思うんですが…
「ですよね?!あなた分かってる!!」
なんて梓さんは同意し門下生と結託しているのは気のせいだろうか。
「さて、と。行くか」
「はい!」
私は安室さんを、門下生は梓さんを見つめお会計を頼めば「不快に思わせてしまったのでここは僕が」と安室さんは眉をさげ私はそれに制止をかけると
「ポアロに貢ぐので安室さんはお気になさらず」
と答えておいた。
「あ、あ、あ、梓さん!」
「はい?」
門下生は口調をどもらせながらパンケーキ美味しかったです!と90度に頭を下げ梓さんは声を上げて笑うと
「また来てくださいね」
と素敵な笑顔を浮かべ会計を済ませるとポアロを後にした。
外はすっかり夕闇に染まり空を見上げながら信号で止まっていれば次の瞬間それはもう勢いよく背中を押され車道に倒れこみそうになったそれを助けてくれたのは安室さん。
「奈々さんっ…!大丈夫ですか?!」
私の目の前をトラックが通過していき私よりも門下生と安室さんの方が真っ青になっており
「あ、むろさん、どうしたの?」
「忘れ物を届けようと思ったのですが…」
そうして、掴まれている腕を見つめ通行人に取り押さえられているのは上条さんとやら。
それはもう苦々し気にこちらを見上げ怒鳴ってきたのは
「私は安室さんの彼女なのよ!何するつもり!?」
なんてヒステリックに叫び意味の分からないことを交え、私も安室さんも門下生もポカンとしてしまうがそれより掴まれている腕が痛い。
しかし安室さんは立ち上がると上条さんを見下ろすとハッキリと言い捨てたのは
「あなたを殺人未遂の現行犯として警察に通報させていただきますので」
上条さんはそれはもう大きく目を見開くと「安室さん!あむろさん!!」と騒ぎだしその場に座り込んでいる私の肩を門下生が支えてくると立ち上がらせてくれて。
程なくしてパトカーと美和子と高木さんが上条さんを車に乗せると、私と少し会話するとそのまま去っていき安室さんが私の耳元でそっと囁いたのは
「メールしますので、」
というもの。
門下生はまだ青い表情のままであったがしっかりと支えてくれて私と門下生も道場へと戻っていき、夜中に零からメールが届いた。内容は何でもないことであったがそこでようやく死ぬかもしれないところだったと気付き心臓をドキドキと高鳴らせてしまった。
嫌な夢、見ませんように、なんて。