7年ぶりの初めまして(全39話)
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世間で言う休日、門下生と供に米花町まで訪れて買い出しをしていればふと見知った姿を捉えた気がして私は隣の通路を覗きこんだ。
その私の行動に門下生は首をかしげ不思議そうにしておりそして見知った姿はまるで私の視線に気がついたように振り返ってきた。
そう、安室さん。そして梓さん。
二人してカートを押している所をみると恐らくはポアロの買い出しであろう。安室が「あ」と口を動かして、そして梓さんは安室さんを見やり視線の先にいる私を見つめてくるとそれはもう嬉しそうに笑って手を振ってきた。
「奈々さーん!」
と声を上げながらパタパタと近寄ってき梓さんにこんにちはと返しながらサラリと
「デート?」
なんて尋ねかければ梓さんはギョッとしたように目を見開くと私の口に指を一本立てて「シーッ!」と言ってきた。
デートを否定してこないのかと思っていればそれは全く違うこと。
「ポアロの買い出しであってデートしゃありません!!いいですか奈々さん!」
「はい?」
「それ絶対にポアロで言わないで下さいね?!炎上しちゃう!!」
そう力強く言われ梓さんは私といる門下生に視線を向け
「奈々さんはデートですか?」
と言われ私も笑いながらそれを否定した。
「道場のお昼の買い出し。一人じゃ荷物多いしもう一つ寄る所があるからね」
と伝えれば梓さんは「えー」なんて言いつつ背後を振り返りカートを押している安室さんと目があったので挨拶一つしておき
「先生、こちらの方は?」
そう門下生は口を開いた。なのでこちらはと
「毛利探偵事務所の下にあるポアロって喫茶店の店員さん。ちょっとした顔見知り」
そう答え梓さんと安室さんはペコリと頭を下げ挨拶を交わしている。
安室さんのその笑顔を見てしまうと何というか背筋がザワザワとして鳥肌が立ちそうだとしていれば安室さんは視線を私に移し何の買い出しかを悟ったようでふふっと笑っている。
何がおかしいんだ。
しかし梓さんは「何の買い出しですか?」と聞いてきたので昼の買い出しと米花町にある別の流派の道場に顔出しをするんだと伝えた。そうすれば梓さんは「へえ~」と頷き安室さんは
「米花町にも古武術の道場があるんですね」
と言われ笑ってしまう。知らないのかと呟きつつ「あるんだよ」と返し腕時計を見ればもうすぐ12時半を回ってしまう。
「梓さん、安室さん、それじゃまたそのうち」
そう手をヒラヒラと振れば梓さんがその手を掴み
「絶対だからね!」
と念を押されてしまった。
なんとも可愛らしい女性だという感想を持ち
「梓さん、じゃあバイバイ」
と苦笑いを浮かべ安室さんをチラリと見ればバッチリと目が合いにっこりと微笑んでくると奈々さん、また
「僕がいる時に来てくださいね?」
なんてリップサービスをしてくれた。それに対し安室さんのシフト知らないから無理ですと笑い飛ばして答え門下生と供に梓さんたちと別れることができた。
「先生」
「ん?」
「今の人…」
「どっち?」
「安室さんです」と言われ私は何を聞かれるのだろうと本の少し身構えれば
「海外の方ですか?ものすごくイケメンですね」
と呟き「何?タイプ?」なんて笑ってしまった。しかし門下生さんは慌てたように首を振りチラリと後ろを見ると
「梓さん…」
その小さな一言に悟ると
「今度ポアロ行こっか?」
と笑いかけた。そうすれば門下生は頬を赤くしつつも良いんですか?!なんてそれはもう喰い気味に問いかけてきたので
「明日の夕方辺りにでも行こう、一応シフト聞いておくから」
「是非!」
そう門下生は拳を握りしめている。一目惚れか、可愛いもんだとしていれば「先生は安室さんのことどう思いますか?」と首をかしげられたのでなんと答えるべきかと悩みつつそれでも口にしたのは
「笑顔が苦手な人、タイプではない」
と呟いた。
「へえ、そうなんですな…先生にも苦手なタイプってあるんですね」
「君ねぇ、私をどんな目で見ているんだよ」
と肩を落とせば門下生は笑ったまま「先生はどんな人でもすぐ打ち解けてしまいますから」苦手な人はいないのかと。
「私だって人間なんだから好き嫌いはあるさ」
ただそれを表に出さないだけ。
武術を嗜むものとして好き嫌いで全てを終わらせてしまったら一から心をどうにかしないといけないんじゃないかなぁ。
そう口にすれば先生って、悟ってますよね、なんてよく分からないことを言われてしまった。
「君も悟れ」
「まだ凡人なのでその道は遠いです」
「その気持ちがまだまだ素人なんだよ」
まあ、過信はよくないけど、君しばらく座禅でも組む?と問いかければ武術をやらせてください!と。
そうして二人して笑い合いつつ大量の買い出しを終え一旦車に戻ればスマホがメールの着信を告げエンジンをかけながらスマホに指を滑らせる。
そのメールは安室さんからでありなんだろうとメールを開けばそこには数字の羅列がありすぐそれが安室さんと梓さんのシフトだと気づき思わず笑ってしまった。
なので、と門下生に梓さんのシフトを伝えればそれはもう嬉しそうに表情を輝かせ
「明日の夕方、是非!」
と胸の前で拳を握りしめられそれに笑ってしまったのは仕方無いだろう。
さて、「行こうか」と声をかけシートベルトを締めるとスーパーからでて次の目的地へと向かうべく車を動かした。
そうした車内でも会話は続き別の流派の道場の前に車を停め門下生は車内に残し門をくぐる。そうすればそこにはその道場の師範が待っていてくれて頭を下げつつ父から渡すよう持たされた物を渡ししばらく言葉を交わすと私を、いや、私の髪を見やり言葉を残されたがそれは聞かないことにしてすぐその道場を後にした。
「やっぱり髪は色々と言われるなぁ」
もうめんどくさい、あの人うるさい!と呟けば助手席にいる門下生も苦笑いを浮かべ
「先生、実力主義の道場で良かったですね」
と言われたのでこれは二年越しで頼み込んでやらしてもらったんだよと。それともう一つやっている事さえなければ直ぐにでも色を戻して髪を切りたいんだけどね。
「しないんですか?」
「願掛けしてあるんだよ」
「なんのです?」
「そりゃあもう秘密だよ」
そう笑ってみせれば門下生は納得したようなしていないような表情で私を見たが、ただ笑顔を浮かべるだけでスルーすることにした。
零と結婚するのかなぁなんてのんびりとした考えを持ったまま西澤流の道場へと帰宅した。
さて、お昼作るぞと母と並んでキッチンに立った。