7年ぶりの初めまして(全39話)
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今日は零とのデートの日。本当はメンバーで練習をするはずだったのだが先日の"安室さんの恋人"についての説明というか言い訳をきいてほしいと言われ、一日くらいは自由な日が欲しいのも相俟っていつもより彩度が低めの和服をまとい髪型も少し変え軽く化粧を施せばはい完成。
財布とスマホを化粧ポーチの入った鞄にいれ待ち合わせ場所であるいつものランニングの折り返し地点のそこに向けて歩いていれば聞き知った車の音に振り返った。そこに来たのは白のRX-7。私の横にスッと停車すると窓が開き
「奈々、乗ってくれ」
と零の笑顔を向けられた。
それに笑い返すと開けてくれた助手席に乗り込み
「おはよう零」
と声をかけあった。私がシートベルトを締めたのを確認した零はゆっくりと車を動かし走り始めたのは町から離れていくその道に
「どこ行くの?」
と問いかけたのは自然なそれで零はチラリと笑うと
「けっこう行った場所に森林公園あったの覚えてるか?」
「あー…ああ!あそこ!」
懐かしいな、二十歳以来だね、そう笑いかけ覚えてくれてたんだねと呟いた零にもう一度笑いかけ「忘れるわけないよ」零と出掛けた先は全部覚えてる。零だってそうだろ?じゃなきゃ行こうなんて思わない。そんな私の返しに零は笑いアクセルを踏み込んだ。
そのまま特に会話という会話はなかったがそれがツラかったり気まずかったりするわけでもなく二人してドライブを楽しんでいて、平日の昼前の道はすいており柔らかい雰囲気のまま森林公園へとたどり着いた。
駐車場に車を停めた零は後部座席からランチバックを取り出し
「俺の手作り」
そうペロッと笑ってくれた。
それが嬉しくて同じように笑えば車の鍵を閉めた零の手を握りしめ零も答えるように力をいれてくれて、どちらともなく歩き出す。
そうして互いに互いの指を絡ませて握りあえば涼しい風と優しい日差しが二人のことを包んでくれる。
鳥のさえずりも聞こえ9年振りのそこは記憶と一寸も違わぬままであり歩いて行けば湖面が伺い見れ
「ここにしようか」
とレジャーシートを広げた零に習って腰を下ろして座り込んだ。まだ昼には早いけどと呟いた零とともに腕時計を見つめ、まあ昼には早いがだからと言って食べないでいるわけでもなく
「私、朝ご飯食べてないから食べたい」
「じゃあ食べようか」
そう零はランチバックからサンドイッチを取り出して並べてくれる。
「奈々と食べるなら何がいいかなって思ったけど」
「安定のサンドイッチだね」
と笑ってしまった。それでも零の手作りご飯は美味しいから何でも大丈夫と答えれば安心したように小さく息を吐き出して二人で早めのお昼をとることにした。
ポアロでのハムサンドにタマゴサンド、シーサラダサンドなんてものもありどれもこれもがとても美味しい。
パクパクと食べていれば零の視線を感じ零を見やれば嬉しそうに表情を緩ませていて
「今度は奈々の手作りが食べたいな」
何て言われ、苦笑いを浮かべながらもモグモグと口を動かし飲み込んで
「零ほど美味しいものは作れないけど、それでいいなら」
そう小さく呟いた。
しかしそれがいつになるかが分からないためどうしようかと困っていれば零はにっこりと笑い
「もちろんだよ」
と。そのまま他愛ない会話をしながらサンドイッチを食べていればあっという間に終わってしまいよく冷えたペットボトルのお茶を差し出され、至れり尽くせりだなぁなんてお茶をのむ。
「あー美味しかった!ごちそうさま、零」
と笑いかければ
「はいごちそう様」
と繰り返され同じようにペットボトルをかたむけている。
それにしてもシーサラダなんて初めて食べたけど美味しかったなと呟けば
「奈々が食べたい時にいつでも作ってあげる」
なんて告白紛いの言葉に笑ってしまった。
今は首ではなく指にはめられた零と己のイニシャルを彫りこまれてある指輪をそろりと撫でればそれに気付いた零は私の手を握りしめ、その零の指にも揃いの指輪がはめられていて嬉しいくすぐったさに
笑ってしまった。
それにしても零
「本当に今日暇だったの?」
色々忙しいんじゃないのと続ければ零は私の顔を覗きこんできて
「嫌だったのか?」
と問いかけられたがそんなの嫌なはずない。それに零にちょっと確認したいことがあって。
「確認?」
ひどくまったりムードのここでする話ではないけれど知らぬままで過ごすのもなんとなく嫌だという私の我儘。
「ベルモット、だっけ?」
「っ!それが、何…?」
一瞬ピリッとした空気が流れたが至って平然と零は口を開き
「"安室さん"の恋人なの?」
「…それは違うけど…話すわけにはいかない…」
ところで奈々はなんでベルモットのことを?と問われたので、うーんと首をかしげつつコナン君経由でなんて話せるはずもなく。それでも零がポツリと呟いたのは
「コナン君から聞いたんだな?」
と強く言われたため仕方無しと頷いた。
「奈々」
「何?」
「それ以上はもう関わらないでほしい」
奈々が俺の事をどこまで知っているのかも知りたいけどそれ以上に足を踏み込ませたくないんだ。だから
「この話はもう終わり」
そう真剣に口にした零に私は頷くと零の頬に口を寄せ
「了解」
と囁くように呟いた。