7年ぶりの初めまして(全39話)
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ベルツリー急行の事件から一週間経ったが奈々は帰宅してからずっと食事もとらず部屋に閉じ籠ってしまっている。
あの後目を覚まし部屋を出て目の前にいたのは沖矢であり有希子さんであり静かにその場を後にした。
事情聴取を受けている最中に爆発についても聴かれたが知らぬ存ぜぬを通し三人で米花町へと戻り、送ると言った沖矢の言葉にも首を振り一人で自宅へと帰ったのだがそれからの一週間である。
コナン君と沖矢、そして有希子さんから何通もメールが届いたのだが零からは一通もなく。それは喜ぶべきか悲しむべきか私にはまだ分からない。
室内は暗く私は毛布を頭から被るとただひたすらに虚空を見つめ零の、安室の、バーボンの名を思いだし唇を噛み締めた。
「…零…」
そうポツリと呟くも誰の耳にも入らない。そしてもう一度スマホが鳴るも手には取らず。そうしていればトツトツと部屋の襖を叩く音がしスウッと開いたそこにいるのは母であり
「奈々、そろそろご飯食べましょう?」
「………」
「奈々?」
しかし私は母の言葉を聞かず、どうしようもない感情の中にいる私の背を撫で母は
「おむすび置いておくからね」
と去っていく母の足音を聞きつつもぎゅうと布団を握りしめ布団の中に籠ってしまう。
「零…」
そう呟いた瞬間、スマホが電話の着信音を奏でてきて、しかしそれを無視していても鳴り止むこともなく、酷くゆっくりとした動きでスマホを手に取った。そこに表示されているのは"安室透"の文字。
思わずヒュッと息を飲み震える手で緑のボタンを押し、しかし無言でいれば
『奈々』
と零が私の名を呼び、私は霞む声でそれはもう小さな声で「零」と呟いたが零には届いたらしい。
『今どこにいる?』
「…家…」
『出てきて』
零のその言葉を理解するのに数秒要し私は「え」と立ち上がった。
「今、どこにいるの?」
『奈々の道場の前』
私はパッと動き部屋を出て走るように玄関まで行き、サンダルを履き門を潜ればそこにはその言葉通り零の姿があり見つめあってしまった。
そうして零がもう一度私の名を呼ぶのと私が零の手に触れようとしたのはほぼ同時。しかしその手は零には触れずもどかしい距離は零が埋めてくれた。
握りしめられた手を引き寄せ抱き締められてしまうともう何も言えない。溢れだした涙は零の肩を濡らし背中を優しく撫でられた。
「大丈夫か?」
「っ、れっ、……だいじょぶなわけ、ない…」
零は何をしてるの?何をしたの?聞きたいことは山のようにあるが思考はぐちゃぐちゃに回ってしまい
「俺の家に来てくれるか?」
「いま?」
「今」
「着替えてくる」
「ダメ」
「え」
降谷は奈々の腕を引くとそのまますぐ横に止めてある車に押し込むように乗せられて
「私、お風呂入りたい…」
「俺は家でいいだろう?」
「着替えは」
「俺の服がある」
キャミソールに短パンの私に降谷は気にもせず運転席に乗った零の手が私の手を包み込みその横顔を見つめればチラリと笑われて私は大きく息を吐き出したが流れた涙は止まらない。それを拭うこともせずにいれば
「ちゃんとご飯食べてる?」
その問いかけに奈々は否定も肯定もせずにいれば
「俺が作ったご飯は食べてくれるか?」
と顔を覗きこまれやはり何も言わず。
夜道を走り続けること一時間ほどで降谷のマンションへと着き降谷は奈々の手を握りしめると、私は2度目のその部屋へと連れていかれた。
握りしめれているその手に少し力を入れれば返答のように握りしめ返され少しだけ頬を緩ませた。涙はいつの間にか止まっているがその代わりに瞳がヒリヒリとし、玄関のたたきでサンダルを脱ぐとその場にズルズルと座り込み
「れぃぃぃ…」
と随分と情けない声が出てしまった。そんな奈々を降谷は抱き上げて二人してソファに腰を下ろした。
再び奈々は降谷に抱きつこうとしたがピタリとその動きを止めると一言
「シャワー…浴びたい……」
「俺は奈々と触れあっていたいけど?」
でも一応これでも乙女である。何日も風呂に入っていない身体を抱き締められるのはツラいものがある。なのでと降谷の膝から立ち上がろうとすればそれを許さぬように引き寄せられ額に口付けを与えられてしまった。
「ぅぅ…れー…お願い……」
そう呟けば目の前のアイスブルーの瞳と目が合い見つめ合い
「じゃあ」
「?」
「俺も一緒に入る」
そうふわりと笑顔を向けられてしまったがそれば別に構わないのでと降谷に抱き上げられて浴室へと連れられた。
「髪下ろすとすごい長いな」
なんて言われ私は服を脱がされながら髪をすき、触れ二人でシャワーを浴び始めた。
そうすれば「俺が洗う」と零は笑いその言葉に甘えさせてもらった。好きにしてくれ。
浴槽のふちに腰を下ろし黙って目を閉じればお湯を頭にかぶりシャンプーで髪をもみこまれた。優しく洗われるそれに静かにしていても零も何も言わず洗ってくれる。
この長さ、中々簡単には洗いきれないので何度かシャンプーを手に取りシャワーで流され身体までも洗われそうになったのでさすがにそれはと身を引いた。
私が身体を洗っている間に零も同じく洗い始め泡を流されると浴室を後にした。私は髪を絞って水を切りタオルで全身を拭った。そうすれば零がドライヤーを構えており思わず笑って従うことにした。
そうして黙っていれば髪先まで丁寧に乾かされ
「下着はないけど、俺の服着てくれ」
あったら嫌だと思いつつその服をまとい母に今日は帰れない旨のメールを送ると電池が切れたがまあいいだろう。
「紅茶飲む?」
その言葉に首を振り「零」と口を開けば零はこちらを見つめ
「何か話があるんでしょう?」
だらだらと話を先伸ばしにされるのは好きではない。だてに付き合ってはいないしあんなことがあってからの今日である、話があるのは当然だろうな。
降谷は少し黙りこむと奈々の横に腰を下ろし難しい表情で奈々の事を見つめてきた。
「…俺のこと、どこまで聞いてた?」
それしかないよなぁと思いつつ零の手にあった黒いソレを思いだし気分が低下していくのを感じてしまう。それでも言葉を濁すことなく零の瞳を見つめると「コードネーム」零は私を見つめ
「バーボン」
と。そう口にすれば零は大きく息を吐き出すと私の髪に手を伸ばし触れてくると肩まで手が下がりグイッと抱き寄せられてしまった。
「奈々には知られたくなかったな…」
「零の仕事の全てを知っている訳でもないけど私なりに調べて考えてみた…」
「…どこまで?どうやって?」
「零の…降谷の職場について…」
警察官にはなったけど警視庁内の人間を知らない、一番知られているその人を、そして潜入しているであろう行動、そうポアロでバイトしていたり探偵なんてしていたり。それを許容してくれている課とは、警察庁警備企画課"ゼロ"もしくは"ちよだ"。
そこまで言えば零は私の耳元で息を吐き奈々には敵わないなと呟き私は零を見つめた。その零の瞳は揺るぎもせず私の事を見つめてきて
「俺のことは絶対に知られる訳にもいかないんだけど、知られるとはな…」
そう引き吊った表情で笑い私の事を押し倒してくるの
「俺のことは知らないように振る舞ってほしい。本当は、もう会えないことになるんだけど…」
奈々には誤魔化しきれないんだろうな、本当、探偵に向いてるよ、なんて苦笑されそっと唇を落とされると
「絶対に、守るから」
黙っていてくれ、そう囁かれた。