雲の裏はいつも銀色
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スタジアムから観客を送り出す臨時列車も最後の一本が発車して、先刻までの熱狂が嘘のように静まりかえった駅前広場。ゴールドアームはその中央に佇み、夜空を見上げていた。
「最終バス、出ちゃうよ」
ダーク本社とスタジアムまでは直通トンネルで繋がっており、試合の前後にはリーガーやスタッフを送迎するシャトルバスが運行している。その最終便の時間が差し迫っていることを告げても、彼はそこから動こうとしなかった。まあいい、明日は休みだ。付き合ってあげよう。
バイザーに表示された拡張現実の星図を実際の夜空に重ね、隣に立つ私に解説してくれる。落ち着いた低い声で紡がれる贅沢なプラネタリウムを堪能していると、
「おかしいな、あの辺にも星があるはずなんだが……」
不意に言葉を詰まらせると、バイザーを上げてカメラアイをぱちぱちと瞬かせた。
「都会は明かりが多いからね。暗い星は見えなくなっちゃうんだよ」
「成程な……おっ、あれは分かるぜ。ベテルギウス、シリウス、プロキオン。冬の大三角だ」
順番に星を指差して得意気に解説するゴールドアームは、試合の時とはうって変わって穏やかな表情をしている。
「何だか、あなたたち三兄弟みたいね」
「そうか?」
ふと口をついて出た言葉に、ゴールドアームはカメラアイをきょとんと見開いた。都会の街明かりにも澱んだ空気にも負けず燦然と輝く冬の大三角は、新しいリーガーが続々とロールアウトされるアイアンリーグにおいて、それぞれのチームのトッププレイヤーとして君臨し続ける彼と二人の弟を思わせる。
それに比べて、私は。街明かりに掻き消されてしまう、星座の中にも入れてもらえない小さな星だ。ルックスが良いわけでも、特別な才能に秀でているわけでもない。どうして私なんかを選んでくれたのだろうか。そんなことを考えていると、視界の端に金色が閃いた。
「見てるだけより、触れられる方がずっと良い」
肩にずっしりとした重さを感じて初めて、先ほどの金色はゴールドアームの爪で、私は彼に抱き寄せられているのだと理解した。包み込むような落ち着いた声が「それに、」と付け加える。
「お前はいつだって、俺の一等星だ」
どこでそんな言い回し覚えてきたのよ、と言い返してやりたかったが、有無を言わせぬ力強さとぬくもりに、私は素直に身を任せた。
「最終バス、出ちゃうよ」
ダーク本社とスタジアムまでは直通トンネルで繋がっており、試合の前後にはリーガーやスタッフを送迎するシャトルバスが運行している。その最終便の時間が差し迫っていることを告げても、彼はそこから動こうとしなかった。まあいい、明日は休みだ。付き合ってあげよう。
バイザーに表示された拡張現実の星図を実際の夜空に重ね、隣に立つ私に解説してくれる。落ち着いた低い声で紡がれる贅沢なプラネタリウムを堪能していると、
「おかしいな、あの辺にも星があるはずなんだが……」
不意に言葉を詰まらせると、バイザーを上げてカメラアイをぱちぱちと瞬かせた。
「都会は明かりが多いからね。暗い星は見えなくなっちゃうんだよ」
「成程な……おっ、あれは分かるぜ。ベテルギウス、シリウス、プロキオン。冬の大三角だ」
順番に星を指差して得意気に解説するゴールドアームは、試合の時とはうって変わって穏やかな表情をしている。
「何だか、あなたたち三兄弟みたいね」
「そうか?」
ふと口をついて出た言葉に、ゴールドアームはカメラアイをきょとんと見開いた。都会の街明かりにも澱んだ空気にも負けず燦然と輝く冬の大三角は、新しいリーガーが続々とロールアウトされるアイアンリーグにおいて、それぞれのチームのトッププレイヤーとして君臨し続ける彼と二人の弟を思わせる。
それに比べて、私は。街明かりに掻き消されてしまう、星座の中にも入れてもらえない小さな星だ。ルックスが良いわけでも、特別な才能に秀でているわけでもない。どうして私なんかを選んでくれたのだろうか。そんなことを考えていると、視界の端に金色が閃いた。
「見てるだけより、触れられる方がずっと良い」
肩にずっしりとした重さを感じて初めて、先ほどの金色はゴールドアームの爪で、私は彼に抱き寄せられているのだと理解した。包み込むような落ち着いた声が「それに、」と付け加える。
「お前はいつだって、俺の一等星だ」
どこでそんな言い回し覚えてきたのよ、と言い返してやりたかったが、有無を言わせぬ力強さとぬくもりに、私は素直に身を任せた。