雲の裏はいつも銀色
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「十郎太が選んでくれたら、気合い入ると思うの。戦化粧ってやつよ」
そう言って、彼女は十郎太の前に口紅を並べ始めた。さてどうしたものかとアイセンサーを動かしていると、彼の心に強く訴えかけてくる一本があった。つるりとした白いボディに桜のレリーフ。中身も淡い桜色だ。十郎太は、それをそっと手に取った。
「花は桜木、人は武士という言葉がある」
頭の上に疑問符を浮かべる彼女から筆を借り、小さな唇に桜色を乗せながら十郎太は続ける。
「花の中で最も優れているのが桜であり、人間では武士であるという意味だ。もちろん某は本物の武士に会ったことはないが、己が使命を全うせんがために士気を高める今のお主は、まさに武士と言うに相応しい」
青いカメラアイにまっすぐ見据えられた彼女は、照れたようにはにかんだ。
「十郎太、ピットインだ!」
通信システムから、監督の声が聞こえてくる。指示に従って素早くピットインするや否やマシンに接続され、作業が始まる。メンテナンスにかかる時間はその後の試合展開に大きく影響するため、工場長のメッケルもいつもより荒い口調で指示を飛ばしている。
他のチームメイトの整備を終えた彼女が、十郎太の元へやってきた。装甲を開いて冷却材を交換し、緩んだボルトを締めてゆく。無駄のない手つきで全ての整備を完了させると、装甲をロックした。
「十郎太、ピットアウトできます!」
そう告げる澄んだ声は、いつもより高揚しているように聞こえる。
「行ってくる」
「よし、行ってらっしゃい!」
桜色の小さな唇が、弧を描く。
さあ、今日も戦場を共に駆けよう。
そう言って、彼女は十郎太の前に口紅を並べ始めた。さてどうしたものかとアイセンサーを動かしていると、彼の心に強く訴えかけてくる一本があった。つるりとした白いボディに桜のレリーフ。中身も淡い桜色だ。十郎太は、それをそっと手に取った。
「花は桜木、人は武士という言葉がある」
頭の上に疑問符を浮かべる彼女から筆を借り、小さな唇に桜色を乗せながら十郎太は続ける。
「花の中で最も優れているのが桜であり、人間では武士であるという意味だ。もちろん某は本物の武士に会ったことはないが、己が使命を全うせんがために士気を高める今のお主は、まさに武士と言うに相応しい」
青いカメラアイにまっすぐ見据えられた彼女は、照れたようにはにかんだ。
「十郎太、ピットインだ!」
通信システムから、監督の声が聞こえてくる。指示に従って素早くピットインするや否やマシンに接続され、作業が始まる。メンテナンスにかかる時間はその後の試合展開に大きく影響するため、工場長のメッケルもいつもより荒い口調で指示を飛ばしている。
他のチームメイトの整備を終えた彼女が、十郎太の元へやってきた。装甲を開いて冷却材を交換し、緩んだボルトを締めてゆく。無駄のない手つきで全ての整備を完了させると、装甲をロックした。
「十郎太、ピットアウトできます!」
そう告げる澄んだ声は、いつもより高揚しているように聞こえる。
「行ってくる」
「よし、行ってらっしゃい!」
桜色の小さな唇が、弧を描く。
さあ、今日も戦場を共に駆けよう。