花は桜、君は美し
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「……よしっ、できた!」
甘い匂いが充満する台所で、マヤは小さくガッツポーズをする。
今日は彼氏である富樫源次の、付き合って初めての誕生日。前々から花見に行こうと計画しており、都合のつく日がたまたま誕生日と重なったため、サプライズでケーキを作ったのだ。
デコレーションを終えたケーキを保冷剤と一緒に箱に詰めて、紙袋に入れたら準備は完了。続けて自分の身支度にとりかかる。前日から決めていた服に着替え、崩れても気にならないようにメイクはごく薄く。唇だけは桜色のリップティントで鉄壁の守りを固める。緩く巻いた髪をポニーテールにして、歩きやすさとスタイルアップを欲張った厚底スニーカーを履いて、いざ、出発。
男塾の寮の前で富樫を待つ。手ぐしで前髪を整えていると、がらがら、と引き戸が開く音が聞こえた。門柱から顔をそっと覗かせると、今となってはすっかり見慣れた学帽に長ランの彼が出てきた。
「よっ、マヤ!」
「源次くん!」
しばし取り留めのない話をしていると、頭上から声が聞こえる。
「オイ、源次くんだとよ!」
「相変わらずお熱いのう。羨ましい限りじゃ」
「富樫、楽しんできてくださいね」
窓から2人の様子を覗いていた他の塾生がきゃっきゃとはしゃいでいる。見られていたことが恥ずかしくて、マヤは思わず富樫の後ろに隠れる。
「て、てめぇら見せモンじゃねぇぞ!マヤ、早く行くぞ!」
しっしっ、と手で払い除ける仕草をしつつも満更でもない様子の富樫を可愛いな、なんて思っていると、空いている方の手を引かれた。
富樫に手を引かれるまま歩いていくと、小高い丘に着いた。桜の花がちょうど見頃を迎えており、花弁がひらひらと舞っている。
「わぁ……綺麗……!」
「この前見つけてよ、景色が良いし人も滅多に来ねえし、マヤと2人で来たかったんじゃ」
木陰にレジャーシートを敷いて腰をおろすと街が一望でき、思いのほか近くに男塾の校舎も見える。校庭で大型バイクが土煙を上げて爆走しているのが見えたが、富樫が特に気にしていなかったのでマヤも見なかったことにした。
「──ほれ」
富樫が差し出した手には、この季節限定の桜いちごラテ。マヤも以前コンビニで見かけて、気になっていたものだ。
「好きそうなやつだと思って買っといた」
季節限定の甘い物に目が無いことをすっかり把握されていることに付き合いの長さを感じる。嬉しさと少しの気恥しさに浸っていると、プシュッ、と缶を開ける音が聞こえた。
「あれっ、源次くんお酒飲まないの?」
隣に座る富樫が飲んでいるのは、炭酸ジュース。塾生同士で時折酒盛りをしているのは知っていたから、てっきり発泡酒か何かを開けたのだと思っていたマヤは、思わず素っ頓狂な質問を投げかけた。普通に考えれば高校生が酒を飲む方がおかしいのに。
「俺だけ飲んでも面白くねぇだろ。未成年のお前に飲ますわけにもいかねえしよ」
「未成年って……源次くん同い歳でしょ」
「俺はいいんだよ」
自分のことは完全に棚に上げて常識人ぶる富樫に苦笑しながら、マヤはがさがさと紙ナプキンやフォークを準備する。箱から出てきたのは、小さめのホールケーキ。花見に甘い物というのもなかなか乙なものだが、ホールケーキと言えば祝い事の際に出てくるものではなかったか。ただの日曜日に、そんなものを持ってくる用事などあっただろうか。富樫がぐるぐると考えを巡らしていると、マヤが徐に口を開いた。
「源次くん、今日誕生日でしょ?」
「あっ……」
季節感など皆無の鍛錬や男塾名物のせいで、すっかり忘れていた。よくよく見ると、ケーキの上に乗ったチョコプレートには"Happy Birthday"の文字が。
紙袋にも箱にも店の名前らしきものは記されておらず、白地にレースの模様があるだけ。これは、まさか。
「もしかしてこれ、マヤが作ったのか!?」
そう尋ねると、マヤが頬を染めてこくん、と頷く。
「えへへ、朝から張り切っちゃった。あ、ライター貸して。ちゃんと蝋燭も持ってきたよ!」
数字をかたどったパステルカラーの蝋燭をケーキに刺すと、やや覚束無い手つきで蝋燭に火をつける。
「源次くん、お誕生日おめでとう」
富樫がふうっ、と一息で蝋燭の炎を吹き消すと、マヤがぱちぱち、と小さく拍手する。
「はいっ」
視界に飛び込んできた黄色いスポンジ生地と白いクリーム、真っ赤な苺のコントラストが眩しい。その先に視線を向けると、にっこりと微笑むマヤの姿が。
「源次くん、あーん」
女の子に手ずから食べさせてもらえるなんて。漫画のようなシチュエーションに、富樫の胸が高鳴る。
もぐもぐ、ごくん。
「ど、どうかな……?」
「……う、美味ぇ〜〜!!」
「よかった〜……」
ろくでもないものばかり提供される寮での生活では滅多に口にすることのできない甘い物。しかも大好きな彼女の手作りとくれば、美味いに決まっている。
「ほれ、お前も食え」
もう一本のフォークで取り分けたケーキをマヤの口元に差し出す。顔周りの後れ毛を耳にかけて小さな口を精一杯開ける姿が可愛くて、富樫は思わずごくり、と喉を鳴らす。
「ん、美味しい!」
絶妙なバランスの甘酸っぱさを堪能していると、富樫が自分の口元をちょいちょい、と指さしている。たぶん、口の端にクリームがついているのだろう。
「取ってやる。じっとしとけ」
富樫の顔が近づいてくる。てっきり指先で拭ってくれるのかと思いきや、そのままクリームを舌で舐め取られた。
「ひゃ、」
すっかり硬直して富樫のなすがままになっていると、そのまま頭を引き寄せられ、温かいもので唇を塞がれる。
「んっ……」
(……源次くんと、キス、してる)
ほんのりとケーキの味がする口付けにうっとりしていたのも束の間、唇の間から舌が忍び込んでくる。驚きのあまり目を見開くと、視界の端には桜の木と芝生。そうだ、今自分たちは屋外にいるのだ。こんなところを誰かに見られたら恥ずかしすぎる。力の抜けかけた両手で富樫の胸板を押すと、案外あっさり唇を離してくれた。
「……ごちそーさん」
そう言って唇を舐める仕草が同い歳とは思えないほど色っぽくて、思わず見入ってしまう。
「何じゃ、このままシてほしかったんか?」
ニヤリと笑ってとんでもないことを口走る富樫に、マヤの顔の熱が急上昇する。
「──げ、源次くんのえっち!意地悪!」
「痛ってぇ!!」
このままされたい放題でたまるかと言わんばかりに富樫の頬を思い切りつねった。
「離せって!イテテテテ!!」
富樫が涙目になってきたところでさすがに可哀想になって手を離す。せっかくの男前が台無しじゃ、とぼやきながら頬をむぎゅむぎゅと触っていると、正面に座るマヤと視線がぶつかる。それだけなのに何故かおかしくて、2人で声を上げて笑った。
気づけば太陽は西へ傾き、眼下に広がる街には橙色のベールがかかっている。そろそろ寮へ帰らなくてはいけない。マヤも明日は学校があるため、あまり遅くまでこうしてはいられない。
「帰るか」
「……うん」
紙袋にフォークや空き缶をまとめ、レジャーシートを畳む。丘を下ろうと歩き始めたその時。
「あっ……!」
木の根っこに躓いたマヤが、ふらりと体勢を崩す。
「危ねぇ!」
近くで聞こえた声と、身体を支える逞しい腕の感覚。富樫が受け止めてくれたのだ。
「ご、ごめんっ……」
慌てて身体を離そうとするマヤの背中に腕を回し、華奢な身体をそっと抱きしめる。まるで、帰したくないと言うように。
マヤも煙草の匂いが染みついた学ランにぎゅ、と顔を埋める。付き合い始めこそ身体に悪いからやめろだのこちらの服に匂いがつくだのと喧嘩の種になっていたが、今ではこの匂いに心地良さを感じる。次に会える時までの充電のように、時間の許す限り富樫にぴったりと寄り添った。
「家まで送ってくれなくてもいいのに……門限間に合わなくなっちゃうよ」
「だから門限はアイツらに上手いこと言い訳してくれって頼んできたって!何回同じこと聞くんじゃ」
マヤを家まで送り届ける途中、何度目かのやりとりに富樫は苦笑する。たとえ同級生に言い訳を頼まなかったとしても、彼女の身の安全と比べれば、自分が門限を破って寮長にどつき回されることなど些細なことだ。
「……もうすぐ1年か」
マヤがぽつり、と呟く。
「源次くんと会った時も桜咲いてたよね」
「……あぁ」
偶然の再会からもう季節が一巡しようとしている。季節など勝手に訪れて勝手に過ぎ去ってゆくものとしか考えていなかったが、マヤと出会ってたくさんの思い出ができてからは、その変化によく気づくようになった。
「来年も再来年も、マヤと一緒がいい」
なんの捻りも無い言葉だが、心からそう思っている。季節が巡るごとに、今以上に彼女のことを好きになれるのなら、それはとても幸せなことだ。
「……私も」
幸せそうに見つめ合う2人を、月明かりに照らされた桜が見守っている。
甘い匂いが充満する台所で、マヤは小さくガッツポーズをする。
今日は彼氏である富樫源次の、付き合って初めての誕生日。前々から花見に行こうと計画しており、都合のつく日がたまたま誕生日と重なったため、サプライズでケーキを作ったのだ。
デコレーションを終えたケーキを保冷剤と一緒に箱に詰めて、紙袋に入れたら準備は完了。続けて自分の身支度にとりかかる。前日から決めていた服に着替え、崩れても気にならないようにメイクはごく薄く。唇だけは桜色のリップティントで鉄壁の守りを固める。緩く巻いた髪をポニーテールにして、歩きやすさとスタイルアップを欲張った厚底スニーカーを履いて、いざ、出発。
男塾の寮の前で富樫を待つ。手ぐしで前髪を整えていると、がらがら、と引き戸が開く音が聞こえた。門柱から顔をそっと覗かせると、今となってはすっかり見慣れた学帽に長ランの彼が出てきた。
「よっ、マヤ!」
「源次くん!」
しばし取り留めのない話をしていると、頭上から声が聞こえる。
「オイ、源次くんだとよ!」
「相変わらずお熱いのう。羨ましい限りじゃ」
「富樫、楽しんできてくださいね」
窓から2人の様子を覗いていた他の塾生がきゃっきゃとはしゃいでいる。見られていたことが恥ずかしくて、マヤは思わず富樫の後ろに隠れる。
「て、てめぇら見せモンじゃねぇぞ!マヤ、早く行くぞ!」
しっしっ、と手で払い除ける仕草をしつつも満更でもない様子の富樫を可愛いな、なんて思っていると、空いている方の手を引かれた。
富樫に手を引かれるまま歩いていくと、小高い丘に着いた。桜の花がちょうど見頃を迎えており、花弁がひらひらと舞っている。
「わぁ……綺麗……!」
「この前見つけてよ、景色が良いし人も滅多に来ねえし、マヤと2人で来たかったんじゃ」
木陰にレジャーシートを敷いて腰をおろすと街が一望でき、思いのほか近くに男塾の校舎も見える。校庭で大型バイクが土煙を上げて爆走しているのが見えたが、富樫が特に気にしていなかったのでマヤも見なかったことにした。
「──ほれ」
富樫が差し出した手には、この季節限定の桜いちごラテ。マヤも以前コンビニで見かけて、気になっていたものだ。
「好きそうなやつだと思って買っといた」
季節限定の甘い物に目が無いことをすっかり把握されていることに付き合いの長さを感じる。嬉しさと少しの気恥しさに浸っていると、プシュッ、と缶を開ける音が聞こえた。
「あれっ、源次くんお酒飲まないの?」
隣に座る富樫が飲んでいるのは、炭酸ジュース。塾生同士で時折酒盛りをしているのは知っていたから、てっきり発泡酒か何かを開けたのだと思っていたマヤは、思わず素っ頓狂な質問を投げかけた。普通に考えれば高校生が酒を飲む方がおかしいのに。
「俺だけ飲んでも面白くねぇだろ。未成年のお前に飲ますわけにもいかねえしよ」
「未成年って……源次くん同い歳でしょ」
「俺はいいんだよ」
自分のことは完全に棚に上げて常識人ぶる富樫に苦笑しながら、マヤはがさがさと紙ナプキンやフォークを準備する。箱から出てきたのは、小さめのホールケーキ。花見に甘い物というのもなかなか乙なものだが、ホールケーキと言えば祝い事の際に出てくるものではなかったか。ただの日曜日に、そんなものを持ってくる用事などあっただろうか。富樫がぐるぐると考えを巡らしていると、マヤが徐に口を開いた。
「源次くん、今日誕生日でしょ?」
「あっ……」
季節感など皆無の鍛錬や男塾名物のせいで、すっかり忘れていた。よくよく見ると、ケーキの上に乗ったチョコプレートには"Happy Birthday"の文字が。
紙袋にも箱にも店の名前らしきものは記されておらず、白地にレースの模様があるだけ。これは、まさか。
「もしかしてこれ、マヤが作ったのか!?」
そう尋ねると、マヤが頬を染めてこくん、と頷く。
「えへへ、朝から張り切っちゃった。あ、ライター貸して。ちゃんと蝋燭も持ってきたよ!」
数字をかたどったパステルカラーの蝋燭をケーキに刺すと、やや覚束無い手つきで蝋燭に火をつける。
「源次くん、お誕生日おめでとう」
富樫がふうっ、と一息で蝋燭の炎を吹き消すと、マヤがぱちぱち、と小さく拍手する。
「はいっ」
視界に飛び込んできた黄色いスポンジ生地と白いクリーム、真っ赤な苺のコントラストが眩しい。その先に視線を向けると、にっこりと微笑むマヤの姿が。
「源次くん、あーん」
女の子に手ずから食べさせてもらえるなんて。漫画のようなシチュエーションに、富樫の胸が高鳴る。
もぐもぐ、ごくん。
「ど、どうかな……?」
「……う、美味ぇ〜〜!!」
「よかった〜……」
ろくでもないものばかり提供される寮での生活では滅多に口にすることのできない甘い物。しかも大好きな彼女の手作りとくれば、美味いに決まっている。
「ほれ、お前も食え」
もう一本のフォークで取り分けたケーキをマヤの口元に差し出す。顔周りの後れ毛を耳にかけて小さな口を精一杯開ける姿が可愛くて、富樫は思わずごくり、と喉を鳴らす。
「ん、美味しい!」
絶妙なバランスの甘酸っぱさを堪能していると、富樫が自分の口元をちょいちょい、と指さしている。たぶん、口の端にクリームがついているのだろう。
「取ってやる。じっとしとけ」
富樫の顔が近づいてくる。てっきり指先で拭ってくれるのかと思いきや、そのままクリームを舌で舐め取られた。
「ひゃ、」
すっかり硬直して富樫のなすがままになっていると、そのまま頭を引き寄せられ、温かいもので唇を塞がれる。
「んっ……」
(……源次くんと、キス、してる)
ほんのりとケーキの味がする口付けにうっとりしていたのも束の間、唇の間から舌が忍び込んでくる。驚きのあまり目を見開くと、視界の端には桜の木と芝生。そうだ、今自分たちは屋外にいるのだ。こんなところを誰かに見られたら恥ずかしすぎる。力の抜けかけた両手で富樫の胸板を押すと、案外あっさり唇を離してくれた。
「……ごちそーさん」
そう言って唇を舐める仕草が同い歳とは思えないほど色っぽくて、思わず見入ってしまう。
「何じゃ、このままシてほしかったんか?」
ニヤリと笑ってとんでもないことを口走る富樫に、マヤの顔の熱が急上昇する。
「──げ、源次くんのえっち!意地悪!」
「痛ってぇ!!」
このままされたい放題でたまるかと言わんばかりに富樫の頬を思い切りつねった。
「離せって!イテテテテ!!」
富樫が涙目になってきたところでさすがに可哀想になって手を離す。せっかくの男前が台無しじゃ、とぼやきながら頬をむぎゅむぎゅと触っていると、正面に座るマヤと視線がぶつかる。それだけなのに何故かおかしくて、2人で声を上げて笑った。
気づけば太陽は西へ傾き、眼下に広がる街には橙色のベールがかかっている。そろそろ寮へ帰らなくてはいけない。マヤも明日は学校があるため、あまり遅くまでこうしてはいられない。
「帰るか」
「……うん」
紙袋にフォークや空き缶をまとめ、レジャーシートを畳む。丘を下ろうと歩き始めたその時。
「あっ……!」
木の根っこに躓いたマヤが、ふらりと体勢を崩す。
「危ねぇ!」
近くで聞こえた声と、身体を支える逞しい腕の感覚。富樫が受け止めてくれたのだ。
「ご、ごめんっ……」
慌てて身体を離そうとするマヤの背中に腕を回し、華奢な身体をそっと抱きしめる。まるで、帰したくないと言うように。
マヤも煙草の匂いが染みついた学ランにぎゅ、と顔を埋める。付き合い始めこそ身体に悪いからやめろだのこちらの服に匂いがつくだのと喧嘩の種になっていたが、今ではこの匂いに心地良さを感じる。次に会える時までの充電のように、時間の許す限り富樫にぴったりと寄り添った。
「家まで送ってくれなくてもいいのに……門限間に合わなくなっちゃうよ」
「だから門限はアイツらに上手いこと言い訳してくれって頼んできたって!何回同じこと聞くんじゃ」
マヤを家まで送り届ける途中、何度目かのやりとりに富樫は苦笑する。たとえ同級生に言い訳を頼まなかったとしても、彼女の身の安全と比べれば、自分が門限を破って寮長にどつき回されることなど些細なことだ。
「……もうすぐ1年か」
マヤがぽつり、と呟く。
「源次くんと会った時も桜咲いてたよね」
「……あぁ」
偶然の再会からもう季節が一巡しようとしている。季節など勝手に訪れて勝手に過ぎ去ってゆくものとしか考えていなかったが、マヤと出会ってたくさんの思い出ができてからは、その変化によく気づくようになった。
「来年も再来年も、マヤと一緒がいい」
なんの捻りも無い言葉だが、心からそう思っている。季節が巡るごとに、今以上に彼女のことを好きになれるのなら、それはとても幸せなことだ。
「……私も」
幸せそうに見つめ合う2人を、月明かりに照らされた桜が見守っている。