暖を取ってるだけ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
シスロディア、ネヴィーラ雪原を歩いていた一行を、突然の吹雪が襲った。
「こ、こんな吹雪シスロディアでもめったにねえぞ!」
と、ロウ
「わたしもこんなの経験したことないよ!!」
とリンウェルも続ける
「このまま雪原の真ん中を歩いていたら危ないわ、せめて崖際に寄って風を避けないと」
シオンがそう一行に促す。
「わたしが先頭に立って歩こう、みんなしっかりな」
キサラが自慢の大きな盾を構えて先頭に立った。
なんとか崖の近くまで一行はたどりつき、洞窟でもないかと探すもののそんなものはなく、しぶしぶここで吹雪がおさまるのを待つことにした。
「炎の剣で温めようとしても、風に吹き飛ばされてしまいそうだな…」
アルフェンは炎の剣を握りしめてそう言った。
「わたしが風上にいて、盾で吹雪を防ごう、みんなは毛布にくるまって、なるべく身を寄せ合うんだ」
「すまないな、キサラ。でも大丈夫か?」
「大丈夫だ、アルフェン。心配するな。それより、シオンを心配してやれ。痛みが戻ったお前だ、ぴたりと身を寄せることは出来ないだろうが、少しでも近くに居てやってくれ」
「ああ」
「シオン、そんなに離れていると寒いだろう、ほら、もっとこっちに」
「アルフェン、でも、そんなに近づいたら…」
「俺は大丈夫だ、ほら、」
「え、ええ…」
「ぶえっっっくしょん!!!」
「ちょっと、ロウ大丈夫?ていうか汚い!!!」
「悪い悪い、って。フルル、お前あったかそうだな、俺をあたためてくれえ~」
「まったくもう、しょうがないなあ。フルル、ロウの鼻水がつかないように気を付けるんだよ」
「フルっー!」
各々腰を下ろし、吹雪への防御態勢に入り始めたころ、テュオハリムと私がまだ立ち尽くしていた。
『テュオハリム?なに遠くを眺めてるの?』
「いやなに、自然の力は恐ろしいものと思っていたまでよ。この吹雪は生命の危機を感じさせる。証拠に、常にここらに蔓延っているズーグル達も姿が見えん」
『それだけ危ないってことでしょ、ほら、あなたの分の毛布』
「ああ、ありがとう」
いつもは野営で布団代わりにする毛布を頭から被ってうずくまる。
この猛吹雪を防ぐには心もとなさすぎる。これ、ほんとに生死に関わるな、、、
「ヤスユキ」
隣からテュオハリムが私の名を呼んだ。
『なあに?テュオハリム』
「先ほどからずっと震えているぞ、大丈夫か?」
『大丈夫、、じゃないかな、でも耐えるしかないですし』
「もっと私のほうに寄りなさい、気休めぐらいにはなるだろう」
『え、あ、いや、そんな、領将閣下、恐れ多い…』
「なんだ、こうでも言えばいいか?私を温めろ、と」
『…テュオハリムも寒いってこと?』
「寒いに決まっている。それに、向こうの青春を送っている者たちに混ざるのも恐れ多い。キサラのいる場所も特に寒そうだ。」
『そんな…わたしは消去法で選ばれているんですね…』
「?」
『いえ、なんでもないです。ではお言葉に甘えて』
私はテュオハリムの隣にピタリとくっついて座った。
自分の体温が急激に上がっていくのを感じる。それは人の体温に触れたからじゃない。
テュオハリムの近くに居るからだ。
『(やばい…めちゃくちゃ緊張する…)』
ニズでアルフェン一行と出会い行動を共にするようになってから、テュオハリムへの思いが強くなる一方。
最初はレナだと警戒もしていた。
でも、ふわりと揺れる髪とか、優しい瞳が星霊術を使う時だけ光るときとか、棍を扱うしなやかな動きとか、優雅さの中に見える天然なところとか
いつも目で追ってしまうし、好きだと思ってしまっている。
「やはり身を寄せていると違うな…風の当たる面積も減るからであろうな。」
当の相手は私を湯たんぽぐらいにしか思っていないようだが
直後は体温が上がって寒さが気にならなくなったものの、少し経つとやはり、寒い。
『っっくしゅんっ』
「ヤスユキ、大丈夫か?」
『ごめんなさい、大丈、夫。』
「とても大丈夫そうにはみえないぞ。
毛布にくるまったまま、私の毛布の中に入りなさい。多少は良くなるだろう」
『あ、ありがとう…テュオハリムは大丈夫?』
「君が衰弱していく姿を見たくはないからな」
『ごめん…ありがとう』
恥ずかしさに寒さへの嫌悪が勝って、私はテュオハリムにより近づいた。
テュオハリムの息づかいが聴こえる。
彼も決して、この寒さが全く平気というわけじゃない。
それでも、私の様子をみて気を使ってくれたのだ。
『(好きだなあ…)』
他のメンバーも寄り添う同士で会話をしているようだが、猛吹雪の音で何も聞こえない。
「はあ、退屈だな。このままだと眠ってしまいそうだ。」
『雪山で寝たら死にますよ、知らないんですか?』
「知っているからこそ、眠っていしまいそうなことに危機感を感じているのだ」
『あなたが言うと、本当に眠ってしまいそうに聞こえるんですよ』
「そうだな、まあ、ここで死んでしまうのもまた…」
『……テュオハリム?』
小さな声でつぶやくのを私は見逃さなかった。
「すまん、変なことを言ったな」
『そのたまに出るその死にたがり、なんなんですか』
「む、君には私がそんな風に見えているのかね?」
少し鋭い眼光が私に向いた。
『……』
「気にせず言いたまえ」
『あなたは、アルフェンたちのように前を向いている一方で、たまに、たまにですよ?自分の命なんでどうでもいい、みたいな、そんな儚い考えを思っているように見えます。ちょっとした発言とかからですけど』
言葉を受けとめたテュオハリムは、私から視線をはずして
「…よく見ているな」
と言った。
『合ってるんですか?』
「他の者たちとそういう話をしたことはあるか?」
『ないですよ、流石に』
「それならよかった。今後もしないでくれるよう頼む」
ということは図星だったのか。
急にテュオハリムの死を想像して、胸が苦しくなった。
『死なないでください、テュオハリム』
私がそう言うと、驚いた表情で私を見た。
「君がそのようなことを言うのは意外だったな。もっと薄情な人間だと、私は誤解していたかもしれないな」
『いいえ、確かに普段は意識してそう接しているかもしれないです。』
「ほう?」
顎に手をあてて、興味深そうに私を見た。
ころころ表情が変わって、ほんとうにかわいいなあ、この人は
『テュオハリム、私ね、あなたが思っているよりずっと、あなたのこと好きなんですよ』
そう言うとテュオハリムは大きく目を見開いた。
「それは、旅を共にする仲間として、という意味かね?」
『さあ、どうでしょうね』
自分の顔が赤くなるのがわかって俯いた。今、テュオハリムがどんな顔をしているのか、わからない。
ああ、恥ずかしい。なんてことを言ってしまったのだろう。
今後どう接すればいいのだ
「ヤスユキ」
『……』
「ヤスユキ、ヤスユキ、」
『ああもう、何ですか』
「いや、やはり寒いと思ってな、ここは一つ、手でも繋がないか」
『はぁあ!!?こ、この流れで??馬鹿なんですか?天然人たらしにもほどが…』
テュオハリムの突然の提案に、私は顔を真っ赤にして答えた
「いや、少し狙ってみたのだが」
『…?な、なにを』
「君の照れる顔が見てみたくてね」
『っっ!』
私が驚くと、テュオハリムは目を細めて「はは」と笑った。
『テュオハリム…意地悪…』
「はは、君にそういう一面があるとはな」
『あなたが良い男なのが悪いです』
「誉め言葉と受け取っておこう、それに、私自身の試みにもなると思ってね」
『試み?』
「生きたくなる要素が増えるかもしれんと、そう思ってね」
優しい顔でテュオハリムはそう言った。
生きたくなる要素、生きる意味ってこと?
それの一つに私が…?
『ほんとうに?なれる?私が?…ダナの私が?』
「苦難の旅を共に進む仲だろう、レナでもダナでも、それは関係ない」
テュオハリムの生に前向きな言葉に、少しだけ目が潤んだ。
「ほら、身だけでなく、心も温まりそうであろう?手をくれはしまいか?」
『…実はレネギスにフィアンセが居るとか言ったら怒りますよ?』
「ははは、心配してもそんなものはいやしない。それとも、私と手を繋ぐのが嫌だったかね?」
『そんな、違う、嫌とかじゃない。ただ、そんな、期待させないでよ…』
「ん?私が、君の私への気持ちに期待しているのだが?」
『はあ、領将閣下には敵いませんわ』
私は毛布の隙間から手を出して、そっとテュオハリムのほうに差し出した。
テュオハリムは私の手をそっと握った。
大きな彼の手が私のそれを包むようで、言いようのない安心感に包まれた。
『あったかいです、テュオハリム』
「私もだよ、ヤスユキ」
二人で、手を繋いだまま吹雪が去るのを待った。
しばらくして、吹雪は去った。
「はあ、もう動き回っても大丈夫そうだな、みんな大丈夫か?」
アルフェンがみんなの安否確認をする。
各々、大丈夫だと声を出した。
「みんな身体が冷え切ってしまっているだろう、早く野営ができる場所まで行こう。」
キサラがそう言った。
「おいおい大将、寝ぐせみたいなんがついてるぜ?まさか吹雪の中寝てたわけじゃねえよなあ?」
と、ロウがテュオハリムをからかった
「うむ…ヤスユキに寄りかかっていたから痕がついたのかもしれないな…」
テュオハリムがそう言うとリンウェルがびっくりした顔をした
「てゅ、テュオハリム、、、ダイタン、、」
『さらっと恥ずかしい発言しないでください、こっちまで恥ずかしい。生きるために暖を取ってただけです。』
「ヤスユキ、すまんが寝ぐせのようなこれを直してもらえないか?」
『ええ、私が?』
「あら、いつもはキサラに頼んでるのに、珍しいわね」
シオンが不思議そうにする。
「今日はヤスユキにしてもらいたい気分でな」
「てゅ、テュオハリム、、!」
リンウェルが一人で顔を赤らめる
「あ?リンウェルなんでお前顔赤くしてんだ?」
「ロウの馬鹿にはわかんないよ!」
「馬鹿っていうな!!」
『…テュオハリム、かがんでください。届かないので。そこに座ってくれてもいいです。』
「うむ」
テュオハリムは近くの石に腰かけた
『どういうつもりですか』
「私は私の思うことをしているだけだが」
『こちとらあなたの髪を初めて触って、えげつない気分になってるんですよ』
「ははは、君は面白いな」
『面白がらないでください』
きれいな髪、うねりながらもするりと指通りする
「君に触れられるのも悪くないな、新しい発見だ」
『…お願いだからみんなの聞こえるところでそういうこと言わないでくださいね』
「おぼえておこう」
これは、私とテュオハリムの距離が縮まった時の話。
「こ、こんな吹雪シスロディアでもめったにねえぞ!」
と、ロウ
「わたしもこんなの経験したことないよ!!」
とリンウェルも続ける
「このまま雪原の真ん中を歩いていたら危ないわ、せめて崖際に寄って風を避けないと」
シオンがそう一行に促す。
「わたしが先頭に立って歩こう、みんなしっかりな」
キサラが自慢の大きな盾を構えて先頭に立った。
なんとか崖の近くまで一行はたどりつき、洞窟でもないかと探すもののそんなものはなく、しぶしぶここで吹雪がおさまるのを待つことにした。
「炎の剣で温めようとしても、風に吹き飛ばされてしまいそうだな…」
アルフェンは炎の剣を握りしめてそう言った。
「わたしが風上にいて、盾で吹雪を防ごう、みんなは毛布にくるまって、なるべく身を寄せ合うんだ」
「すまないな、キサラ。でも大丈夫か?」
「大丈夫だ、アルフェン。心配するな。それより、シオンを心配してやれ。痛みが戻ったお前だ、ぴたりと身を寄せることは出来ないだろうが、少しでも近くに居てやってくれ」
「ああ」
「シオン、そんなに離れていると寒いだろう、ほら、もっとこっちに」
「アルフェン、でも、そんなに近づいたら…」
「俺は大丈夫だ、ほら、」
「え、ええ…」
「ぶえっっっくしょん!!!」
「ちょっと、ロウ大丈夫?ていうか汚い!!!」
「悪い悪い、って。フルル、お前あったかそうだな、俺をあたためてくれえ~」
「まったくもう、しょうがないなあ。フルル、ロウの鼻水がつかないように気を付けるんだよ」
「フルっー!」
各々腰を下ろし、吹雪への防御態勢に入り始めたころ、テュオハリムと私がまだ立ち尽くしていた。
『テュオハリム?なに遠くを眺めてるの?』
「いやなに、自然の力は恐ろしいものと思っていたまでよ。この吹雪は生命の危機を感じさせる。証拠に、常にここらに蔓延っているズーグル達も姿が見えん」
『それだけ危ないってことでしょ、ほら、あなたの分の毛布』
「ああ、ありがとう」
いつもは野営で布団代わりにする毛布を頭から被ってうずくまる。
この猛吹雪を防ぐには心もとなさすぎる。これ、ほんとに生死に関わるな、、、
「ヤスユキ」
隣からテュオハリムが私の名を呼んだ。
『なあに?テュオハリム』
「先ほどからずっと震えているぞ、大丈夫か?」
『大丈夫、、じゃないかな、でも耐えるしかないですし』
「もっと私のほうに寄りなさい、気休めぐらいにはなるだろう」
『え、あ、いや、そんな、領将閣下、恐れ多い…』
「なんだ、こうでも言えばいいか?私を温めろ、と」
『…テュオハリムも寒いってこと?』
「寒いに決まっている。それに、向こうの青春を送っている者たちに混ざるのも恐れ多い。キサラのいる場所も特に寒そうだ。」
『そんな…わたしは消去法で選ばれているんですね…』
「?」
『いえ、なんでもないです。ではお言葉に甘えて』
私はテュオハリムの隣にピタリとくっついて座った。
自分の体温が急激に上がっていくのを感じる。それは人の体温に触れたからじゃない。
テュオハリムの近くに居るからだ。
『(やばい…めちゃくちゃ緊張する…)』
ニズでアルフェン一行と出会い行動を共にするようになってから、テュオハリムへの思いが強くなる一方。
最初はレナだと警戒もしていた。
でも、ふわりと揺れる髪とか、優しい瞳が星霊術を使う時だけ光るときとか、棍を扱うしなやかな動きとか、優雅さの中に見える天然なところとか
いつも目で追ってしまうし、好きだと思ってしまっている。
「やはり身を寄せていると違うな…風の当たる面積も減るからであろうな。」
当の相手は私を湯たんぽぐらいにしか思っていないようだが
直後は体温が上がって寒さが気にならなくなったものの、少し経つとやはり、寒い。
『っっくしゅんっ』
「ヤスユキ、大丈夫か?」
『ごめんなさい、大丈、夫。』
「とても大丈夫そうにはみえないぞ。
毛布にくるまったまま、私の毛布の中に入りなさい。多少は良くなるだろう」
『あ、ありがとう…テュオハリムは大丈夫?』
「君が衰弱していく姿を見たくはないからな」
『ごめん…ありがとう』
恥ずかしさに寒さへの嫌悪が勝って、私はテュオハリムにより近づいた。
テュオハリムの息づかいが聴こえる。
彼も決して、この寒さが全く平気というわけじゃない。
それでも、私の様子をみて気を使ってくれたのだ。
『(好きだなあ…)』
他のメンバーも寄り添う同士で会話をしているようだが、猛吹雪の音で何も聞こえない。
「はあ、退屈だな。このままだと眠ってしまいそうだ。」
『雪山で寝たら死にますよ、知らないんですか?』
「知っているからこそ、眠っていしまいそうなことに危機感を感じているのだ」
『あなたが言うと、本当に眠ってしまいそうに聞こえるんですよ』
「そうだな、まあ、ここで死んでしまうのもまた…」
『……テュオハリム?』
小さな声でつぶやくのを私は見逃さなかった。
「すまん、変なことを言ったな」
『そのたまに出るその死にたがり、なんなんですか』
「む、君には私がそんな風に見えているのかね?」
少し鋭い眼光が私に向いた。
『……』
「気にせず言いたまえ」
『あなたは、アルフェンたちのように前を向いている一方で、たまに、たまにですよ?自分の命なんでどうでもいい、みたいな、そんな儚い考えを思っているように見えます。ちょっとした発言とかからですけど』
言葉を受けとめたテュオハリムは、私から視線をはずして
「…よく見ているな」
と言った。
『合ってるんですか?』
「他の者たちとそういう話をしたことはあるか?」
『ないですよ、流石に』
「それならよかった。今後もしないでくれるよう頼む」
ということは図星だったのか。
急にテュオハリムの死を想像して、胸が苦しくなった。
『死なないでください、テュオハリム』
私がそう言うと、驚いた表情で私を見た。
「君がそのようなことを言うのは意外だったな。もっと薄情な人間だと、私は誤解していたかもしれないな」
『いいえ、確かに普段は意識してそう接しているかもしれないです。』
「ほう?」
顎に手をあてて、興味深そうに私を見た。
ころころ表情が変わって、ほんとうにかわいいなあ、この人は
『テュオハリム、私ね、あなたが思っているよりずっと、あなたのこと好きなんですよ』
そう言うとテュオハリムは大きく目を見開いた。
「それは、旅を共にする仲間として、という意味かね?」
『さあ、どうでしょうね』
自分の顔が赤くなるのがわかって俯いた。今、テュオハリムがどんな顔をしているのか、わからない。
ああ、恥ずかしい。なんてことを言ってしまったのだろう。
今後どう接すればいいのだ
「ヤスユキ」
『……』
「ヤスユキ、ヤスユキ、」
『ああもう、何ですか』
「いや、やはり寒いと思ってな、ここは一つ、手でも繋がないか」
『はぁあ!!?こ、この流れで??馬鹿なんですか?天然人たらしにもほどが…』
テュオハリムの突然の提案に、私は顔を真っ赤にして答えた
「いや、少し狙ってみたのだが」
『…?な、なにを』
「君の照れる顔が見てみたくてね」
『っっ!』
私が驚くと、テュオハリムは目を細めて「はは」と笑った。
『テュオハリム…意地悪…』
「はは、君にそういう一面があるとはな」
『あなたが良い男なのが悪いです』
「誉め言葉と受け取っておこう、それに、私自身の試みにもなると思ってね」
『試み?』
「生きたくなる要素が増えるかもしれんと、そう思ってね」
優しい顔でテュオハリムはそう言った。
生きたくなる要素、生きる意味ってこと?
それの一つに私が…?
『ほんとうに?なれる?私が?…ダナの私が?』
「苦難の旅を共に進む仲だろう、レナでもダナでも、それは関係ない」
テュオハリムの生に前向きな言葉に、少しだけ目が潤んだ。
「ほら、身だけでなく、心も温まりそうであろう?手をくれはしまいか?」
『…実はレネギスにフィアンセが居るとか言ったら怒りますよ?』
「ははは、心配してもそんなものはいやしない。それとも、私と手を繋ぐのが嫌だったかね?」
『そんな、違う、嫌とかじゃない。ただ、そんな、期待させないでよ…』
「ん?私が、君の私への気持ちに期待しているのだが?」
『はあ、領将閣下には敵いませんわ』
私は毛布の隙間から手を出して、そっとテュオハリムのほうに差し出した。
テュオハリムは私の手をそっと握った。
大きな彼の手が私のそれを包むようで、言いようのない安心感に包まれた。
『あったかいです、テュオハリム』
「私もだよ、ヤスユキ」
二人で、手を繋いだまま吹雪が去るのを待った。
しばらくして、吹雪は去った。
「はあ、もう動き回っても大丈夫そうだな、みんな大丈夫か?」
アルフェンがみんなの安否確認をする。
各々、大丈夫だと声を出した。
「みんな身体が冷え切ってしまっているだろう、早く野営ができる場所まで行こう。」
キサラがそう言った。
「おいおい大将、寝ぐせみたいなんがついてるぜ?まさか吹雪の中寝てたわけじゃねえよなあ?」
と、ロウがテュオハリムをからかった
「うむ…ヤスユキに寄りかかっていたから痕がついたのかもしれないな…」
テュオハリムがそう言うとリンウェルがびっくりした顔をした
「てゅ、テュオハリム、、、ダイタン、、」
『さらっと恥ずかしい発言しないでください、こっちまで恥ずかしい。生きるために暖を取ってただけです。』
「ヤスユキ、すまんが寝ぐせのようなこれを直してもらえないか?」
『ええ、私が?』
「あら、いつもはキサラに頼んでるのに、珍しいわね」
シオンが不思議そうにする。
「今日はヤスユキにしてもらいたい気分でな」
「てゅ、テュオハリム、、!」
リンウェルが一人で顔を赤らめる
「あ?リンウェルなんでお前顔赤くしてんだ?」
「ロウの馬鹿にはわかんないよ!」
「馬鹿っていうな!!」
『…テュオハリム、かがんでください。届かないので。そこに座ってくれてもいいです。』
「うむ」
テュオハリムは近くの石に腰かけた
『どういうつもりですか』
「私は私の思うことをしているだけだが」
『こちとらあなたの髪を初めて触って、えげつない気分になってるんですよ』
「ははは、君は面白いな」
『面白がらないでください』
きれいな髪、うねりながらもするりと指通りする
「君に触れられるのも悪くないな、新しい発見だ」
『…お願いだからみんなの聞こえるところでそういうこと言わないでくださいね』
「おぼえておこう」
これは、私とテュオハリムの距離が縮まった時の話。
1/1ページ