ピアス
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『アイゼン、ピアスの穴あいてるんだね』
「ん、ああ、まあな」
『でもあたしアイゼンがピアスしてるのなんて見たことないよ』
「ああ…最近は全く付けていない、体質のせいなのかなんなのか、中々塞がらなくてな」
アイゼンとトシユキはどうでもいい世間話をする
「ゼクソン港に着くぞ~」
舵を切る船員の声が聞こえた
久しぶりに街に降りる。
船の点検の結果、出港できるのはまだ少し先らしく、何日かはこの港に留まることになりそうだ
『待ってよアイゼン』
一人早足で歩いていくアイゼンを追い掛ける
「ふっ、はやくこい」
降りた町で買い出しをするアイゼンにわたしが着いていくのはいつものことだ
この内に沸く片想いの行き所がなくて、こんなことをしている
(アイゼンはわたしになんて興味ないんだろうなあ…)
アイゼンには戦い方とか、色々教えてもらったこともあって、海賊団に入ったあとにすぐに打ち解けた
慕っているように振る舞って、心のうちでは下心しかない、というと言い過ぎかな
アイゼンの隣で野菜を見ていると、遠くにアクセサリーを扱う店が見えた
『ねえ、アイゼン、』
アイゼンの上着の袖を引っ張る
「ん、どうした」
わたしよりも何センチも高い身長の彼がわたしを見下ろす
『ちょっと買いたいものあるから、一人で行ってくるね』
「ん?お、おう…」
(あいつが一人で買い物に行くなんて珍しいな…)
トシユキはあっという間に人混みに紛れてしまった
(あいつちっちぇえからすぐ分かんなくなるな…)
「お客さん、可愛いお連れさんがいるんですねえ、彼女さんかな、それとも、若奥様かな」
八百屋の店主がにんまりとしながらそう言った
「そんなんじゃない」
店主に向かって、あくまでアイゼンは無表情でこたえる
(あいつは…俺になんて…)
『あの!おにいさん!!!』
おしゃれなアクセサリー店の店員に声をかけた
「いらっしゃいませ!なにかお探しですか!」
『えっ、えっと、男のひとに、ぴ、ピアスを、プレゼントしたくて!』
「ピアスですね!男の人というのは、ご家族かな?それとも恋人さんとかですか?」
『こっ…こっ……
まっ…まだ恋人じゃない人です…』
真っ赤になった顔を手で覆いながらしゃがみこむ
焦る店員
「あっあっ、おっ、お客さま、変なことをきいてすいません、ピアスなら、様々な種類をあちらに取り揃えておりますよ」
『あっ…ありがとうございます…』
そうしてしばらくピアスを眺めていた
『あ、これ綺麗だなあ…』
透き通るような白い雫のような形のピアスが目に入った
揺れて風に当たった時の輝きがなんとも美しい
「トシユキ」
『ひゃっ!!』
突然後ろからアイゼンの声が聞こえた
(やばいバレた…!)
「こんなところにいたのか、ベンウィックたちが呼んでる、船に戻るぞ」
『えっあ、ああ、うん』
アイゼンに手を引かれる
ありがとうございましたーと言いながら店員はニヤニヤしていた
船に向かって歩きながら
「買いたいものとやらは買えたのか?」
『えっ…、あ、ああ!買えたよ!』
そういってわたしはダミーで買っておいたお菓子をアイゼンに見せた
「そうか、ならよかった」
(アイゼンが馬鹿でよかった…)
トシユキは安心した
(それにしてもトシユキがアクセサリー店にいるなんて…あ、俺のピアスのこといってたし…興味があるのか…
うむ…出港するまでになにか買ってやるか…)
そのあとその日はずっと船にいた
次の日、みんながバタバタしている時にそっと船を抜け出して昨日のピアスを買った
(アイゼンに………いつ渡そう)
そのまた次の日
思い悩んだせいかどうかは分からないが
熱を出した
「どうしたんだよトシユキ!しっかりしろ!」
ベンウィックがベッドの横で心配そうにしている
「壊賊病なわけでもないんだ、いずれ良くなるだろ」
アイゼンは軽い口調で言った
「なんだよ副長!副長はトシユキが心配じゃないのかよ!」
無言のままアイゼンは部屋を出た
「な、なんかごめんなあ、トシユキ、副長、多分不器用なだけだから…」
『いいよ、ベンウィック、ありがとう。アイゼンは…きっと…あたしなんてどうでもいいのよ…』
「トシユキ…」
あからさまに冷たく当たってしまった自分に反省する
(トシユキ…早く良くなれよ)
内心はトシユキが心配で仕方ない
トシユキが一人で買い物に行っているときも、誰か変な男に捕まらないか不安だった
トシユキが寝込んでいるのが好機というのもなんだが
自然と足は例のアクセサリー店のほうへ向かっていた
「おい」
「はいっいらっしゃいませ!」
「女に送る…イヤリングを探している」
「イヤリングですね!」
店員は既視感のある金髪の男に口角を上げられずにはいられなかった
「なにを笑っている」
「い、いえ、なんでも。それより、女のかたとは、ご家族ですか?恋人さんとかですか?」
「…………俺の女にだ」
「かしこまりました」
案内された場所のイヤリングを一通り見て、すぐに目についたものを買った
次の日、トシユキの容態がある程度安定したので
船は出港した
他の誰かに移っても大変なので、トシユキのいる部屋にはなるべく誰も入らないようにとのことだ
『誰もいないと暇だなあ~』
トシユキは誰もいない部屋で愚痴をこぼす
ガチャ
扉の開く音
そこにはアイゼンがいた
「よぉ、調子どうだ」
『アイゼン…っ、ダメだよ、風邪、移るかも』
「ふん、聖隷の俺に人間のお前の病気が移るか」
根拠のない理由でも来てくれたことが単純に嬉かった
『でも、どうしたの、突然』
「お前に、プレゼントだ」
『えっ』
そこで取り出されたのは、何とも赤い色をした雫のような形のイヤリング
光に当たって綺麗に輝く
『えっ、こ、これ…あたしに?』
「お前、前アクセサリー見てたろ、最初はピアスにしようかとも思ったんだが、わざわざ穴を開けさせるのもあれだからな」
顔が熱い
アイゼンが、あたしに、プレゼントなんて…
その隙にそっとアイゼンの手が触れる
耳に感じる重り
「よく似合ってる」
アイゼンが、嬉しそうにしている
『あのね、アイゼン、わたしもアイゼンにプレゼントがあるの』
棚にしまっていたピアスを取り出した
「お前が…俺に…?」
『あたしがアクセサリー見てたのはね、アイゼンにあげるのを選んでたんだよ』
「そう……だったのか…」
『アイゼン、髪で耳が隠れてるでしょ、だから、長めで、揺れるのが良いと思って』
同じようなデザインの選択に、お互い笑ってしまう
『アイゼンにもつけてあげるね』
アイゼンの耳に触るのなんてはじめて
白い装飾に彼の金髪が移って綺麗
『できた!』
「こんなに大きい装飾のものをつけるのは初めてだな」
アイゼンは少し恥ずかしそうにしている
「まあ、女にイヤリングをプレゼントしたのも、ピアスをプレゼントされたのも初めてだけどな」
今度はわたしが恥ずかしくなる
(言わなきゃ…今言わなきゃ…いつ言うんだ…)
トシユキは一人意気込む
『アイゼンっ……あのね…あたしっ…あなたのっ』
その瞬間アイゼンに手で口を塞がれる
『…………!!?』
アイゼンはひとつため息をついて
「…俺に言わせろ」
と言った
アイゼンは両手でわたしの肩を掴む
どうにも動けなくてアイゼンの瞳をまっすぐに見つめる
「トシユキ………お、俺は、お前の、ことが…」
こんな表情のアイゼン見たことない
「俺は…お前が好きだ…もし…おまえも同じ気持ちなら……!」
『好きだよ』
アイゼンの目が少しだけ見開く
『わたしも、あなたが好き』
緩んだアイゼンの腕を振り払って彼に抱きついた
「トシユキ…」
アイゼンの大きな手が背中に回る
しばらくしてアイゼンはわたしの身体を引き剥がした
「なに泣いてんだお前、」
言われてはじめて泣いていることに気付いた
涙で濡れたわたしの唇に、彼の唇がそっと重なる
はじめてのキスは、少しだけしょっぱかった
「ん、ああ、まあな」
『でもあたしアイゼンがピアスしてるのなんて見たことないよ』
「ああ…最近は全く付けていない、体質のせいなのかなんなのか、中々塞がらなくてな」
アイゼンとトシユキはどうでもいい世間話をする
「ゼクソン港に着くぞ~」
舵を切る船員の声が聞こえた
久しぶりに街に降りる。
船の点検の結果、出港できるのはまだ少し先らしく、何日かはこの港に留まることになりそうだ
『待ってよアイゼン』
一人早足で歩いていくアイゼンを追い掛ける
「ふっ、はやくこい」
降りた町で買い出しをするアイゼンにわたしが着いていくのはいつものことだ
この内に沸く片想いの行き所がなくて、こんなことをしている
(アイゼンはわたしになんて興味ないんだろうなあ…)
アイゼンには戦い方とか、色々教えてもらったこともあって、海賊団に入ったあとにすぐに打ち解けた
慕っているように振る舞って、心のうちでは下心しかない、というと言い過ぎかな
アイゼンの隣で野菜を見ていると、遠くにアクセサリーを扱う店が見えた
『ねえ、アイゼン、』
アイゼンの上着の袖を引っ張る
「ん、どうした」
わたしよりも何センチも高い身長の彼がわたしを見下ろす
『ちょっと買いたいものあるから、一人で行ってくるね』
「ん?お、おう…」
(あいつが一人で買い物に行くなんて珍しいな…)
トシユキはあっという間に人混みに紛れてしまった
(あいつちっちぇえからすぐ分かんなくなるな…)
「お客さん、可愛いお連れさんがいるんですねえ、彼女さんかな、それとも、若奥様かな」
八百屋の店主がにんまりとしながらそう言った
「そんなんじゃない」
店主に向かって、あくまでアイゼンは無表情でこたえる
(あいつは…俺になんて…)
『あの!おにいさん!!!』
おしゃれなアクセサリー店の店員に声をかけた
「いらっしゃいませ!なにかお探しですか!」
『えっ、えっと、男のひとに、ぴ、ピアスを、プレゼントしたくて!』
「ピアスですね!男の人というのは、ご家族かな?それとも恋人さんとかですか?」
『こっ…こっ……
まっ…まだ恋人じゃない人です…』
真っ赤になった顔を手で覆いながらしゃがみこむ
焦る店員
「あっあっ、おっ、お客さま、変なことをきいてすいません、ピアスなら、様々な種類をあちらに取り揃えておりますよ」
『あっ…ありがとうございます…』
そうしてしばらくピアスを眺めていた
『あ、これ綺麗だなあ…』
透き通るような白い雫のような形のピアスが目に入った
揺れて風に当たった時の輝きがなんとも美しい
「トシユキ」
『ひゃっ!!』
突然後ろからアイゼンの声が聞こえた
(やばいバレた…!)
「こんなところにいたのか、ベンウィックたちが呼んでる、船に戻るぞ」
『えっあ、ああ、うん』
アイゼンに手を引かれる
ありがとうございましたーと言いながら店員はニヤニヤしていた
船に向かって歩きながら
「買いたいものとやらは買えたのか?」
『えっ…、あ、ああ!買えたよ!』
そういってわたしはダミーで買っておいたお菓子をアイゼンに見せた
「そうか、ならよかった」
(アイゼンが馬鹿でよかった…)
トシユキは安心した
(それにしてもトシユキがアクセサリー店にいるなんて…あ、俺のピアスのこといってたし…興味があるのか…
うむ…出港するまでになにか買ってやるか…)
そのあとその日はずっと船にいた
次の日、みんながバタバタしている時にそっと船を抜け出して昨日のピアスを買った
(アイゼンに………いつ渡そう)
そのまた次の日
思い悩んだせいかどうかは分からないが
熱を出した
「どうしたんだよトシユキ!しっかりしろ!」
ベンウィックがベッドの横で心配そうにしている
「壊賊病なわけでもないんだ、いずれ良くなるだろ」
アイゼンは軽い口調で言った
「なんだよ副長!副長はトシユキが心配じゃないのかよ!」
無言のままアイゼンは部屋を出た
「な、なんかごめんなあ、トシユキ、副長、多分不器用なだけだから…」
『いいよ、ベンウィック、ありがとう。アイゼンは…きっと…あたしなんてどうでもいいのよ…』
「トシユキ…」
あからさまに冷たく当たってしまった自分に反省する
(トシユキ…早く良くなれよ)
内心はトシユキが心配で仕方ない
トシユキが一人で買い物に行っているときも、誰か変な男に捕まらないか不安だった
トシユキが寝込んでいるのが好機というのもなんだが
自然と足は例のアクセサリー店のほうへ向かっていた
「おい」
「はいっいらっしゃいませ!」
「女に送る…イヤリングを探している」
「イヤリングですね!」
店員は既視感のある金髪の男に口角を上げられずにはいられなかった
「なにを笑っている」
「い、いえ、なんでも。それより、女のかたとは、ご家族ですか?恋人さんとかですか?」
「…………俺の女にだ」
「かしこまりました」
案内された場所のイヤリングを一通り見て、すぐに目についたものを買った
次の日、トシユキの容態がある程度安定したので
船は出港した
他の誰かに移っても大変なので、トシユキのいる部屋にはなるべく誰も入らないようにとのことだ
『誰もいないと暇だなあ~』
トシユキは誰もいない部屋で愚痴をこぼす
ガチャ
扉の開く音
そこにはアイゼンがいた
「よぉ、調子どうだ」
『アイゼン…っ、ダメだよ、風邪、移るかも』
「ふん、聖隷の俺に人間のお前の病気が移るか」
根拠のない理由でも来てくれたことが単純に嬉かった
『でも、どうしたの、突然』
「お前に、プレゼントだ」
『えっ』
そこで取り出されたのは、何とも赤い色をした雫のような形のイヤリング
光に当たって綺麗に輝く
『えっ、こ、これ…あたしに?』
「お前、前アクセサリー見てたろ、最初はピアスにしようかとも思ったんだが、わざわざ穴を開けさせるのもあれだからな」
顔が熱い
アイゼンが、あたしに、プレゼントなんて…
その隙にそっとアイゼンの手が触れる
耳に感じる重り
「よく似合ってる」
アイゼンが、嬉しそうにしている
『あのね、アイゼン、わたしもアイゼンにプレゼントがあるの』
棚にしまっていたピアスを取り出した
「お前が…俺に…?」
『あたしがアクセサリー見てたのはね、アイゼンにあげるのを選んでたんだよ』
「そう……だったのか…」
『アイゼン、髪で耳が隠れてるでしょ、だから、長めで、揺れるのが良いと思って』
同じようなデザインの選択に、お互い笑ってしまう
『アイゼンにもつけてあげるね』
アイゼンの耳に触るのなんてはじめて
白い装飾に彼の金髪が移って綺麗
『できた!』
「こんなに大きい装飾のものをつけるのは初めてだな」
アイゼンは少し恥ずかしそうにしている
「まあ、女にイヤリングをプレゼントしたのも、ピアスをプレゼントされたのも初めてだけどな」
今度はわたしが恥ずかしくなる
(言わなきゃ…今言わなきゃ…いつ言うんだ…)
トシユキは一人意気込む
『アイゼンっ……あのね…あたしっ…あなたのっ』
その瞬間アイゼンに手で口を塞がれる
『…………!!?』
アイゼンはひとつため息をついて
「…俺に言わせろ」
と言った
アイゼンは両手でわたしの肩を掴む
どうにも動けなくてアイゼンの瞳をまっすぐに見つめる
「トシユキ………お、俺は、お前の、ことが…」
こんな表情のアイゼン見たことない
「俺は…お前が好きだ…もし…おまえも同じ気持ちなら……!」
『好きだよ』
アイゼンの目が少しだけ見開く
『わたしも、あなたが好き』
緩んだアイゼンの腕を振り払って彼に抱きついた
「トシユキ…」
アイゼンの大きな手が背中に回る
しばらくしてアイゼンはわたしの身体を引き剥がした
「なに泣いてんだお前、」
言われてはじめて泣いていることに気付いた
涙で濡れたわたしの唇に、彼の唇がそっと重なる
はじめてのキスは、少しだけしょっぱかった