ゆめか、うつつか
悟side
「…このタイミングで寝るか、普通」
すうすうと可愛く寝息をたてるミヤを見て、俺は脱力したようにソファの足元に崩れ落ちた。
俺の好きな人は鈍感だ。
子どもの頃からずっと好きで、俺が好きだと言うことを微塵も隠していないのに、当の本人だけが気付いていない。
しかもハリネズミみたいに警戒している。
何も捕って食おうなんて思っていない、…こともないけれど、そこまで拒まなくてもいいだろうに。
まぁそこが可愛くて好きなんだけど。
本人は隠しているつもりだけれど、俺の言動に一喜一憂する姿は可愛いとしか言いようがない。
その僅かな変化が解るのは俺ぐらいだろう。
そんな些細なことに俺は優越感を覚え、ミヤを更に好きになっていった。
ミヤを好きになったのはいつかわからないほど昔。
気付いたら隣にいていつもニコニコして俺を見てくれていた。
俺の中のミヤが、友愛ではなく恋愛の対象となった時、正直焦った。
同性愛と言う言葉をきちんと理解するには俺はまだ幼かったし、ミヤだって俺より小さくて頼りなかった。
ミヤも俺を好きでいてくれているのはわかっていたけれど、俺の思う意味での好きではないことも同時に理解していた。
だからこんな感情持っていちゃいけないと、ミヤを遠ざけるように仕向けた。
はずなのに、ミヤはいつもの俺の視界の端にいた。
さも構ってくれと言わんばかりに。
チラチラ俺の方を見ては目が合うとぷいっと膨れて視線を反らす。
もう全てを告げて、拒まれても無理矢理自分のモノにしてしまおうかとも考えた。
けれど、時折ミヤの純粋そのものの瞳を見るとそんなことできなかった。
届かない想いを他で発散させる時期もあったけれど、2か月前からそれもない。
俺の両親が仕事で揃って渡米してから俺はミヤの家に居候させてもらっている。
ミヤの両親もいい人で、いつまでもいていいと言ってくれていた。
しかし俺はそんないい人たちに恩を仇で返している。現在進行形で。
すみません、おじさん、おばさん。
俺はあなたたちの息子さんに手を出そうとしています。
最初はほんの出来心だった。
居間で眠るミヤの髪にどこからか飛んできた葉っぱが付いていた。
俺は下心なしにそれをつまんでとってあげたら、ミヤの方から擦り寄ってきた。
鼻を小さくならして、そして幸せそうに「さとる」と俺の名前を呼んだ。
そうなったらもう駄目だった。
溢れだした想いは欲望へと形を変えて俺の中で渦巻いた。
最初は髪を、それから柔らかな頬、唇、シャツから覗く鎖骨。
寝ている人間相手になんて卑劣なと、頭の隅では思うけれど、どうしても止められなかった。
触っていてもミヤは安心しきった顔で寝息をたてているしで、どんどん大胆になっていった。
だから今日、ミヤが目を醒まして俺の頬にキスをくれたとき、俺の想いがついに報われたと思ったのに…
「…はぁ。きっと起きたら忘れてんだろうな、お前」
俺はミヤの鼻をちょんとつついた。
むにゃむにゃと何事か呟きながら俺の手を抱き締めるように抱え込むと安心したような顔をする。
その昔から変わらない顔に俺の表情もほころんだ。
「まぁ、今はまだ解らなくていいよ。ゆっくり俺の気持ちを知ればいい」
俺はミヤの髪に一つキスを落とすとにっこりと微笑んだ。
おわり
「…このタイミングで寝るか、普通」
すうすうと可愛く寝息をたてるミヤを見て、俺は脱力したようにソファの足元に崩れ落ちた。
俺の好きな人は鈍感だ。
子どもの頃からずっと好きで、俺が好きだと言うことを微塵も隠していないのに、当の本人だけが気付いていない。
しかもハリネズミみたいに警戒している。
何も捕って食おうなんて思っていない、…こともないけれど、そこまで拒まなくてもいいだろうに。
まぁそこが可愛くて好きなんだけど。
本人は隠しているつもりだけれど、俺の言動に一喜一憂する姿は可愛いとしか言いようがない。
その僅かな変化が解るのは俺ぐらいだろう。
そんな些細なことに俺は優越感を覚え、ミヤを更に好きになっていった。
ミヤを好きになったのはいつかわからないほど昔。
気付いたら隣にいていつもニコニコして俺を見てくれていた。
俺の中のミヤが、友愛ではなく恋愛の対象となった時、正直焦った。
同性愛と言う言葉をきちんと理解するには俺はまだ幼かったし、ミヤだって俺より小さくて頼りなかった。
ミヤも俺を好きでいてくれているのはわかっていたけれど、俺の思う意味での好きではないことも同時に理解していた。
だからこんな感情持っていちゃいけないと、ミヤを遠ざけるように仕向けた。
はずなのに、ミヤはいつもの俺の視界の端にいた。
さも構ってくれと言わんばかりに。
チラチラ俺の方を見ては目が合うとぷいっと膨れて視線を反らす。
もう全てを告げて、拒まれても無理矢理自分のモノにしてしまおうかとも考えた。
けれど、時折ミヤの純粋そのものの瞳を見るとそんなことできなかった。
届かない想いを他で発散させる時期もあったけれど、2か月前からそれもない。
俺の両親が仕事で揃って渡米してから俺はミヤの家に居候させてもらっている。
ミヤの両親もいい人で、いつまでもいていいと言ってくれていた。
しかし俺はそんないい人たちに恩を仇で返している。現在進行形で。
すみません、おじさん、おばさん。
俺はあなたたちの息子さんに手を出そうとしています。
最初はほんの出来心だった。
居間で眠るミヤの髪にどこからか飛んできた葉っぱが付いていた。
俺は下心なしにそれをつまんでとってあげたら、ミヤの方から擦り寄ってきた。
鼻を小さくならして、そして幸せそうに「さとる」と俺の名前を呼んだ。
そうなったらもう駄目だった。
溢れだした想いは欲望へと形を変えて俺の中で渦巻いた。
最初は髪を、それから柔らかな頬、唇、シャツから覗く鎖骨。
寝ている人間相手になんて卑劣なと、頭の隅では思うけれど、どうしても止められなかった。
触っていてもミヤは安心しきった顔で寝息をたてているしで、どんどん大胆になっていった。
だから今日、ミヤが目を醒まして俺の頬にキスをくれたとき、俺の想いがついに報われたと思ったのに…
「…はぁ。きっと起きたら忘れてんだろうな、お前」
俺はミヤの鼻をちょんとつついた。
むにゃむにゃと何事か呟きながら俺の手を抱き締めるように抱え込むと安心したような顔をする。
その昔から変わらない顔に俺の表情もほころんだ。
「まぁ、今はまだ解らなくていいよ。ゆっくり俺の気持ちを知ればいい」
俺はミヤの髪に一つキスを落とすとにっこりと微笑んだ。
おわり