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覚えてやがれ!



「なに拗ねてんだ、望」
「ぶえぇ~つに~」

同期達と呑みに行った先で偶然あったこの男は解散した後も俺についてきた。

(拗ねてねぇ、拗ねてなんかねぇよ。バカ)

俺がイライラしてる理由なんて自分が一番よく知っていそうなものなのに、あえて俺に言わそうとしてくることがムカつく。

俺は、酔い覚ましに入れた紅茶を自分の分だけ用意して、男に背を向けて座った。





ここは、都内のマンション。
俺の家だ。

しかし、この男は「お邪魔します」も言わずに普通に入ってきた。
まぁ、もちろん初めて入れるわけじゃないけれど、それでも一応はそのへんの気を使って欲しいものだ。


例え、恋人同士であっても。




「なぁ、望」
「うっせぇ。もう電車なくなんぞ。早く帰れよ」


自分でも可愛くないことを言ってるって分かっている。
けど、やっぱり今日のことは腹が立ったんだ。

(そうだよ。拗ねてんだよ。悪いかよ、このやろう)

そう思ったけれど、口には出さない。
そんなこと言った日にゃ、そら見たことかと笑われるに決まってる。

にやりと笑う端正な顔を思い描いて、俺は眉間に皺を寄せた。

それが嫌でたまらない。
また自分だけがこの男を想っている様で、年齢だったり、立場の壁を思い知らされてしまう。
まだまだ、俺は子どもだと言われているようでそれが嫌なんだ。


そうやって悶々と考えていると、男は後ろから俺のマグカップを取り上げた。


「おい、なにすん…っん…ぁ」


振り向きざまにキスされる。
気は立っていても体はこの男の与える快楽に従順だ。
そういう風にこいつに仕込まれたんだから。
すぐに座っていながら腰砕けになった。


「んんっ…ま、こと…離せ…バカ」
「いやだ。お前が何に拗ねてんのか言うまで離さない」


そう言うと誠は本当にぎゅうぎゅうと俺を抱きしめた。
しかも抱きしめるだけじゃなくてその間、体は触るわキスはするわやりたい放題だ。
俺だって負けていない。
その甘い攻めから身を捩って抵抗する。

でも、


「言え、望」


甘く低い声で耳元で話されたら、一発でアウトだった。
意地も何もなくなった。

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