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親衛隊ができました

 倒れたヤマダ君を抱き起こすと他の2人が慌てて手伝う。
当のヤマダ君は爆発するんじゃないかと思うほど真っ赤だった。


「あの、山田は大丈夫なので、話を先に進めてもいいですか?」


ヤマダ君を背中へ庇うように二人が俺へと身を乗り出す。

ほんとに大丈夫だろうか。


「あの僕たち羽柴さまの親衛隊を作りたいと思ってるんです。それで、その…羽柴さまに許可をいただきたくて…」
「しんえいたい?それって具体的に何するの?」


聞きなれない言葉に首を傾げると男の子たちは困ったように眉を下げた。


「あの…ご存知ないですか?」
「うん。あ、でも、かいちょーが親衛隊がどうのって言ってるの聴いたことがあるような、ないような…。うん、やっぱないかな」


俺はどうでもいいと思ったことは脳の中に入れない主義なんだ。だから忘れちゃった。


「そ、それで具体的には羽柴さまのお仕事のお手伝いとか、羽柴さまのために何かをする事が役目というか…とにかく、羽柴さまを全力でお慕いする事が目的なんです!」


最後は興奮したのか早口で身を乗り出すようにした男の子が何だか可愛くて、笑ってしまった。


「は、羽柴さまが笑われた!」
「あぁ、ごめんね可愛くてつい。でもそれじゃあ俺ばっかりが得して君たちに何にもいいことないなぁ…」


お手伝いしてもらえるなら俺はとってもありがたいけど、この子達に何もいい事がないのは何だか申し訳ないな、と俺がお返しで何か出来ることはないか考えていたら、ぴかーんと閃いた。


「そうだ!俺の親衛隊になってくれるって子、何人ぐらいいるの?」
「え、えっと…正確に人数を把握しているわけじゃないんですが、今は20名程度かと…。ですが、正式に承認いただけたらもっと人数は増えると思いますが、それが?」
「うん。この前ね部屋に一度でケーキ4個焼ける業務用オーブン買ったんだ。だからみんなでお茶会しよう」
「「「えぇっ!」」」


俺がそう言うと3人がまったく同じリアクションをした。


「だめ?俺のお茶のみ友達なってくれると嬉しいんだけど」
「だ、だめだなんてそんな!!でも羽柴さまのご迷惑になりませんか?それにさっきも言いましたが、正式に隊が出来たらもっと増えますよ」


彼のいう事はもっともだ。
人数が増えたらその分お菓子を作らなくちゃいけないし、不公平にならないようにみんなに振舞わないと。
でもそれは…


「腕が鳴るねぇ。俺めんどくさいことは嫌いだけど、お菓子作るのは好きだし、それを食べてもらえるのはもっと好きだから。全員一緒が無理なら何回かに分けてみんなに食べてもらえばいいし。それに親衛隊ってみんなこんな俺のことを好きでいてくれる人たちなんでしょう。だったらありがとうって伝えなくちゃ。」


そこまで言うとなんと3人ともがぽろぽろと泣き出してしまった。
俺はあわあわと慌てふためく。


「俺何か悲しませること言った?ごめんね、俺こんなだから傷つけたかな…」


3人の頭をゆっくり撫でるとみんな首を横に高速で振った。


「いいえ、僕たち嬉しいんです。僕たちが勝手に羽柴さまを好きでいるのにありがとうなんて言って下さるから、嬉しくて…」


ヤマダ君の言葉にあとの2人もうんうんと頷く。
この子たちって本当にいい子だなぁ…


「俺のほうこそありがと。これからもよろしくね」
「「「はい!!」」」


4人で硬く握手を交わして、俺こと、生徒会会計 羽柴天に親衛隊が出来た。
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