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ケガの功名?



何度も浮気をされて、泣いて殴って、許して、また浮気されて、それでもまだアイツと繋がっていたのは、もちろん好きだったし、浮気相手が全員女だったからだ。
男は俺だけだったからまだ大丈夫。そう思っていた。
そう思わないとやっていられなかったとも言える。

なのに。
久しぶりにアイツに呼ばれてマンションに行ったら見覚えのない男物の靴があった。
嫌な予感がしたけど、俺は部屋に足を踏み入れた。

だって今日は俺とアイツが付き合って3年目の記念日なんだ。そんな日に浮気なんて、まして男となんてするはずない。
俺は震える手でリビングのドアを開けた。

「あっ…うん、いいよ、入れ…え?あ?おいっ!誰か入ってきた!誰?ってめっちゃ顔色わるいじゃん!」

俺の彼氏が男としかもめちゃくちゃ綺麗な男とまぐわろうとしていた。
それを見た瞬間、俺の中で何かぷつりと切れた。

「え?あれ?智(とも)?!なんで?」

奴は若干焦りながらもいつものようにヘラリと笑った。

「まさか、恋人って言うんじゃ!?てめぇ!いつまでくっついてんだ、どけ!このやろう!!」

なんかさっきからこの人の方が焦ってる。
いつもの浮気相手たちは俺を奴の恋人だと知った瞬間、趣味が悪いだのなんだのと貶してくるのに。
そんなことを思っていたら、もういいやと思った。

「そんなに俺が嫌なんだったら別れてやるよ。つかこっちから願い下げだ。…クソ野郎!てめぇなんかチンコもげて死ね!!」

俺は買ってきたケーキと缶ビールを奴に投げつけた。
ゴンって鈍い音がしたけど知るか。
俺は唾を吐く勢いで全裸でひっくり返った元彼氏とぽかんと口を開けたままの男を置いて鼻息荒くマンションを出た。


追ってくるだろうかとも思ったけれど、追ってきたからと言って、もうどうすることもできないし、するつもりもない。
そう思ったら悔しいのか悲しいのか涙が出てきた。

ちくしょう俺の3年間返せ。
元々奴から好きだって言ってきたくせに。
とりあえず帰ったら、アイツが俺ん家に置いてるもの全部売ってやる。無駄にブランド物とか持つから悪いんだ。
そんで売ったお金で焼肉行ってやる。

「なあ!ちょっと待って!!」

二の腕を後ろから掴まれて振り返るとさっきの綺麗な人だった。息を切らして走って追いかけてきたようだ。髪もぐちゃぐちゃだ。

「…なに?」
「あ…の知らなかったとはいえ、君の彼氏と寝る寸前まで行った!本当にごめん!」

綺麗な人は腰を90度に曲げて謝ってきた。
それを言うためだけに追っかけてきてくれたのか。シャツのボタン掛け違えてまで。

「ぷっ」
「えっ?」
「いや、悪い。別にあんたがそんなに謝る必要ないよ。俺とアイツはもうどうにもならなかったし、あんたが原因じゃない。ていうかあんたいい人だなぁ…。普通追いかけてなんかこないのに。しかもかなり焦って」

俺がそう言ってボタンを指さしたら真っ赤な顔をしてボタンを直してた。

可愛い人だな。
仲良くなりたいな。
そんなことをふと思ったらついぽろっと口を開いてた。

「なぁ、あんたこれからヒマ?今から質屋行って、焼肉行くんだけど、奢ってやるよ。遠慮しなくていいよ。」
「え、いや、暇だけど…質屋?」
「アイツのもん全部売っぱらおうと思って。よし。じゃあまず俺ん家行こう。そんで金目のものを全部売りに行く」

『なんだかよくわからないけど』と言いながら俺の後をついてきてくれたこの人といい友達になれたらいいなぁと思っていた。




おわり
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