恋はあさっての方向
俺はモテる。
それは何も自意識に限ったことだけではない。
他人からも認められている。
家柄よし、顔もよし、成績もよし、性格も程よく軽い感じでよし。
そんな俺がモテないはずがない。
だれだって俺を好きになる。
女でも、男でも。
だから“彼も”そうだと思った。
『突然こんな手紙を出してごめんなさい。
あなたにお話したいことがあります。
放課後、裏庭の桜の木の下で待っています』
下駄箱の扉を開けるとそんな手紙が入っていた。
(これまた古風な感じ。けど、呼び出す文句としては代わり映えしないな)
こんな文言のものは今まで幾度となく見てきたものだ。
思わずため息が漏れた。
それを耳聡く聞きつけた友人の野村がにやにやと笑いながらこちらに向いてきた。
「なんだよ、真田ぁ、またお呼び出しかぁ?」
「あぁ、うん。つーわけで遊び行けねぇや。悪いな」
俺はそう言うと、適当にへらっと笑みをこぼした。
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