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「あーら、じゃあ麹町署の子になる? いいわよ。別に」「だってぇーさみじーいーんだもー、じょうがないだーろー。うひゃーん。おどーさんがつめだいー。うわーんー」「ちょっと、穂積。おチビちゃん、いじめてどうするの。あ、何? お前。まさかやきもち?」「小野瀬、うるさい。もう! チビ助、アンタもびーびーうるさいわよ。この、泣き虫」 チビ助にデコピンを食らわす。俺も案外、酔っているのか予想以上に[ビシッ]とスゲー音がした。ヤバいと、思ったがもう遅い。「いしゃーいー! なにずんだよー、おどーさん! うあーん、びぎゃー」「あー! ひどい。そんなに強く、バカじゃないの? それ、パワハラだろ。彼女がかわいそうじゃないか」 チビ助はよりびーびーと泣きはじめ、小笠原が怒り出す。「えらい音したで? 痛そうやわ」「あれは痛いな」「わー本格的に大泣きし始めましたよ。ちょっと室長、チビは泣き虫なんですからダメですよー」「もう室長! 何、やってるんですか! オレのなまえにデコピンしないでくださいよ。あーあ、赤くなちゃって。よしよし。泣かない泣かない」「穂積ー。何やってんの? お前は──」 藤守、明智が呆れ気味に言い、如月が耳を塞ぎながら言う。そして、もちろんこの男が怒らない訳もなく……昴がチビ助をなだめつつ俺を怒り出し、小野瀬にもまた叱られた。 すまんと謝りながら、滝口がぽかーんと呆気に取られているのが目に入った。「おい、如月。お前の課の飲み会はいつもこうなのか?」「ああ、あはは。滝口さん、驚きましたか? いや、ごくたまーにチビが泣き上戸になるんですよ。あいつ、あれでいてさみしがりの泣き虫なんで──」「ええ? 小僧がか? そりゃあ、本当かぁ? この数か月、一緒に行動したがなあ、俺にはそんな風には見えなかったぞ。どっちかっていうとだな、うーんー。まさにはねっかえりの小僧って感じだったぞ。ちょっと小生意気でな。まあ、憎めない感じではあったが……泣くようなタイプには見えなかったけどなあ」「いやいやいや、滝口さん。本当ですって。チビはさみしがりで、めちゃくちゃ、泣き虫なんですよー」「そうそう、お嬢は普段は強がりやけどな。ほんまは、泣き虫な心優しー子なんですよ。ねえ、明智さん」「さみしいのは、特に弱いな」「それだけ、滝口さんになついたってことですよー」「なまえ、麹町署は近いんだから滝口さんとは、また会えるって。な? 泣かないの。大丈夫だって。みんな、いるだろ?」 びーびー泣くチビ助を、昴があやす。(チビ助のやつ、ありゃあ完全に泣き上戸だな)「ちょっとぉー、あんた達。個室だからってうるさいわよ! あー何泣かせてんだい? うちでいじめは、お断りだよ!」 わーわー言うのと、女将の怒る声が響くにぎやかな夜。酔っ払い泣くチビ助と、それをびっくりした顔で見る滝口。(チビ助とじゃがいもの、ひと夏のコンビか。ふふふ。いいコンビじゃねえか。うまくやってたんだな。チビ助のやつ)とふたりを眺めながら酒を口に運ぶ。 当初は、チビ助に所轄修行も兼ね行かせようと受けたヤマだが、詳細が分かって来てみれば俺が思うよりも凄惨なものだった。多少過保護かと思いはしたが、それでも解決までの間、やはり一抹の不安があって心配しながら見守っていたというのが本当のところだ。いまこうして、無事解決を迎えたことに俺もようやくほっと安堵していた──。──チビ助の所轄事件簿。──End.
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