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● ○ ● ○ それから定時後でも行ける体験教室に行った。予約する時に他の連中も彼女が誘った。彼女のお願いには、皆弱い。なかなか断れない。結局みんなで行った。室長が小野瀬さんを無理やり連れてく。そして、大変珍しい事だが『絶対、俺にはむかない』とブツブツ言う小笠原まで一緒にジムへ向かった。ジムへ着くと、彼女はもうキックボクシングに夢中だった。彼女の熱心さに、指導してくれるトレーナーさんも熱が入るほどで、そこだけ世界が違うようだった。「では、体験教室はこれで終了です。一柳ご夫妻、あなた方は筋が良い。もし良かったら一緒に頑張りましょう。ぜひご検討下さい」 トレーナーから資料をもらい『ビール、ビール』と騒ぐ室長に引っ張られ、そのまま飲み会へと雪崩れ込んだ。 ● ○ ● ○「おチビちゃん、キックボクシング始めるの?」「んー興味あるけど、時間が取れないかも。ダンスも行ってるし……ダンスはやめたくないんだ。でも、あの感じ。良かったなあ」「俺達の仕事じゃ、きっちり予定通りには行かないからな」 明智さんの言葉にちょっと酔って来た如月がぶんぶんと頷く。「そうなんですよねー。定期的に習い事やるのも簡単じゃないよねー」 そのボヤきに、みんなが『だな』と頷く。「でも、明智。アンタ、昔は『時間ですから』って定時にとっとと帰ってたじゃないよ」 明智さんが、むせながらバツが悪そうにする。彼女は、室長と明智さんにビールを注ぐ。「良いじゃん、良いじゃん。昔は昔。今は、今。明智さん、大丈夫。室長だって本当はそう思ってるよ。僕のそんけーする上司さまはねー。そんな昔の事にこだわんねーの。でしょう? 室長」「ま、まーね」「さすが室長。ほらほら、二人ともカンパーイ!」 持ち上げつつも、無理やりその話題を終わらせた。「で? チビ助、どうするのよ。キックボクシング」「ってかさー、欲しいもん出来た」「欲しいもの? お嬢、何が欲しいんや?」「珍しいな。なまえがなんか欲しがるの。何? 買ってやるよ。言ってみな」 オレが言うと、酒を飲みながら上目遣いになり口ごもった。「ちょっと、変わったものなんだよね」「変わったもの? 気になる。何?」「言ったら小笠原さん、呆れそうだなあ」「呆れない。今日は君に付き合ってジムまで行ったんだから、そのくらい教えてよ」「えっとねぇ……。サンドバッグとボクシンググローブが欲しい」 予想外の答えにみんな、ちょっとだけ驚いた顔をした。
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