例えば、
ユキ、ジュン、アキラ、カオル、ユウキ、ヒカル、チヒロ、ケイ、ナギサ、ハルキ、ミチル、シノブ、ハルヒ、レイ、レン、リン、ミライ、ヒナタ、ユウリ、マコト、マスミ、ミソラ、ハヅキ、カヅキ、ヒロ、ユウ、シュウ、ハル、ナツキとか?
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「まあ、いらしてたの。失礼。どうしましょう、昴。奥様に見つかっちゃたわね。わたくし達の事は秘密でしたのに」
まるで自分達に何かあるような口ぶりで、昴にくっ付いたまま王女は言い『ねえ』と昴を見てから勝ち誇ったような視線をチビ助に送った。
「はあ? な、何を──」
あのキスの後だ。チビ助に誤解される心配をしたのか、昴はいつものポーカーフェイスではなく、焦ったように狼狽えた。それを遮り、まるで困った昴に助け船を出すみたいにチビ助が一歩前に出た。
「王女さま、お招きいただきましてありがとうございます。仕事帰りとはいえ、このような格好で申し訳ございません」
そう微笑み、頭を下げ挨拶をした。
「あら、あなた、昴の奥様よね?」
「はい。主人がお世話になっております」
「ねえ? 昴、貴方思うより奥様に愛されてないんじゃなくて?」
「は?」
昴の発した声が、ちょっと裏返る。
「だって貴方、ごらんなさいよ。わたくし達の秘密を知っても、貴方の奥様、平気そうよ」
促され、皆の視線がチビ助に集まる。
「ねえ? 奥様、さほど愛してもいらしゃらないのなら──この際、わたくしに昴を譲っていただけないかしら? もちろん、あなたには相応のことさせていただくわ」
以前にも聞いたようなセリフを王女が、チビ助に言う。
(このアマ、これが目的か。俺達の前でチビ助に恥を掻かせた上で、昴を奪おうって魂胆か。嫌な性格してるぜ。王女じゃなきゃぶん殴ってやりてえ)
「相応……でございますか?」
「そうよ。悪いようにはしないわ。あなたの欲しいだけさしあげてよ」
「なるほど、彼に見合うだけのお金、要は私が彼の売値をつけろ、ということですか?」
「ええ。まあ、ストレートに表現するなら、そうね」
「欲しいだけ、ですかあ……。まあ、お金は大事ですよねえ。あの、王女さま。あまり率直に言うと……失礼になるかも知れません。それでも、正直に申し上げてよろしいのですか?」
チビ助の物言いはともすれば王女の取引に乗って、値でも釣り上げようとしている感じにも取れる口調だった。
「えっ?」
昴がますます焦った声を出す。対照的に上機嫌の王女。
「ええ、かまわなくってよ。正直におっしゃって」
「そうですか。では、遠慮なく。彼は──Pricelessです。お金は大事ですがその大事なお金よりも、彼の方が比べものにならない位に大切で、私にとってかけがえのないひとなんですよ。彼と見合う同等の価値のものなんて私には思いつきません。そんなもの、この世にはありませんから。私、貧乏してもどうにかこうにか生き伸びられる気がするんですが。彼がいなくなったら、きっと生きていけないと思います。気力とか勇気とか活力とか、いろんな感情──そういうものが無くなって、ダメになっちゃうと思うんですよ。ですので、こればかりはいくら王女さまのご要望でも、ご希望には沿えません」
そうチビ助が、はっきり断りを口にした時、廊下の方が騒がしくなった。昴がインカムで確認する。どうやら、襲撃らしい。見取り図のコピーを受け取りざっと目を通す。警護しながら廊下に出て配備していた桂木班の連中と途中で、合流しながら階段を使い先を急ぐ。下から、桂木さんが駆け上がって来る。
「下はダメだ。武装した連中に入り口を抑えられた。屋上にヘリが間もなく着く」
屋上へと向かう。王女がそんなに素早く動ける訳もなく下の方から複数の足音や声等が聞こえて来る。ますます震える王女はへたり込んでしまった。チビ助が抱きしめる。
「大丈夫。あなたを必ず守ります。怖いでしょうけど、もう少し頑張って」
なだめるように、優しく言うチビ助を見て王女の震えが少し収まった。頷き、王女が立ち上がる。昴が支える。チビ助は、それを見届けると桂木さんに聞いた。
「桂木さん。ヘリ到着は後、何分後の予定ですか?」
この段階で、チビ助がこれからしようとする事の予測がついた。
「それなら、僕がここで連中を足止めします。皆さんは上に向かって下さい」
「なまえ、お前またそんな──」
止めようとする昴を『一柳警視!』その一声で遮りにっと笑い言った。
「信じて任せて下さいますよね? 大丈夫ですよ。僕らは王女さまを守り切れます。そうですよね?」
マルタイの安全第一なのも、チビ助がこう言い出したら聞かない事も、昴もよく分かってる。半ば諦めたようにため息をつき、銃を差し出した。チビ助は首を横に振り言った。
「何があるか分からない。銃は昴が持ってて。それじゃなく、警棒を貸してよ」
「警棒って……相手は武装してるんだぞ?」
「大丈夫。嫌なら素手でもいいよ。僕は武器なんてなくても戦えるもん」
話を終えようとするチビ助に昴が焦る。
「なっ! ま、待て! 嫌なんて言ってねえ。ほら」
チビ助が『ふふ』っとちょっと笑い『ありがとう』と警棒を受け取る。
「必ず……無事でいろよ」
「うん。あなたもどうかご武運を」
一時見つめ合い微笑むと『さあ、行って』と促した。俺は近くにいた広末に『俺にも警棒を貸せ』と言った。チビ助が『僕だけで──』と言い掛けるのを小突いて遮る。
「ばか。今日の相棒は俺だ。相棒のお父さんが娘を置いて行く訳ねえだろうが。みくびるな」
「藤咲くん、俺にも警棒を貸してくれるかな?」
「小野瀬さんっ」
「おチビちゃん。きみには、俺も、泪お父さんもついてるって言ったろう?」
「昴さんそっち任せましたよ。こいつは兄貴の俺に任せて下さい」
秋月がにっとそう言うと、桂木さんも言った。
「俺も残る」
「海司兄ちゃん、桂木さん……」
「昴、頼んだぞ。なまえさん達と必ず追い掛ける」
そう言う桂木さんに続く。
「ああ、チビ助は任せろ。しっかりな」
そこで別れ、俺達は犯人グループの足止めをするべく行動に移った。