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──それは、最悪のバースデー。── 三月──毎年の事ではあるが、年度末で仕事の山だ。日中、通常通りに外回りをこなしマル被を捕まえたら調書を取る。仕事は外仕事だけじゃない。本庁に戻ったら戻ったで、なかでもやる事は沢山ある。時に証拠品のチェックや、会議や何やらをして、空いた時間に書類仕事に掛かる。仕事が片付かなければ、当然残業になる。みな一様に、疲れでうんざりとしがちだ。ともすれば忙しさに表情が険しくなったり、ピリピリしてしまいがちになる。もっともこの殺人的な忙しさでは、それも仕方ないのかもしれない。 そんな多忙な中でも、彼女はひとり、めげずにバリバリと張り切っていた。「はい、小笠原さん。これ出来ましたよ。次は室長のに掛かるんで。またする事があったら、その後でやりますから」「ああ。ありがとう。君は仕事が早い上にミスがないから助かるよ」「おー褒められちゃった。へっへへ。よし、次も頑張っちゃおう」 日中だって被疑者確保や酔っ払い諸々の保護等に駆けずり回っているワケで、彼女だってやっぱり疲れてはいる。その証拠に、夜はあっという間に眠りに落ちて朝まで泥のように眠っている。「あら、チビ助ずいぶん元気じゃないのよ。なんか良い事あったの?」 室長の言葉に『にひっ』っと子供みたいに嬉しげに笑った。小笠原が『あった──じゃなくてこれからあるんだよね?』と言うと『うん! そうなんだあ』と窓の方に立って外を覗いた。「桜、まだあんまり咲いてないなー」 心配気に呟く。「桜予報でも、二十七日は満開ではなさそうだね。三部咲き位かな」 小笠原の言葉にちょっとシュンとして『三部かあ。ちょっとだね……』と呟く。「ふふ。三部は残念だけど、桜はまた後から見に行こう。ちょっと咲きでもおこたで夜桜、きっと楽しいぞ」 そう励ますとオレの方を向き『そっか。そうだよね。ふふ』と笑顔になった。「ああ、そうや。もうすぐお嬢の誕生日やね」「今年は、夜桜デートか? チビ」 明智さんに頷きにこにこと、説明する。「うん。前にチラッと言ったかもだけど、おこたに入ってさ、桜を見ながらお食事が出来るの。去年、ランチして良かったから夜桜席、昴が予約してくれたの。明智さんも翼ちゃんとデートで行ったら? 行くならくるみは、うちで預かってもいいよ。ね、昴」「だな。明智さん、なかなか良いですよ。きっと翼さんも喜ぶんじゃないですかね」 リーフレットを出し、興味を示した明智さんに渡して、暫しその話題に花を咲かせる。「そうか、誕生日の夜桜デートか。藤守と交代したから、今年もアンタ達お休みだものね。あ、チビ助。誕生日、欲しいもの考えておきなさいよ。去年は結局、お休みもらったからもう十分って、それで終わっちゃったんだから。今年は最初に言っとくわよ。今年は藤守も北海道新幹線に乗るのに休みたかったから、休暇日を交代したんだからね。従ってお休みは誕生日プレゼントには含みません。後、みんながいれば十分ですっていうのもダーメ。だってみんなはアンタの仲間兼家族だから、この先もずっといるもの。いい? ちゃんと考えておきなさいね」 念を押され『はーい』と言いながら席に戻りバリバリ仕事を再開させた。
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