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● ○ ● ○「うわ、すごいいっぱい人がいる。え? 何? あれ、TVカメラじゃん。うっそでしょー! そんなの聞いてない。えー……無理。僕、無理だ」 舞台袖から客席を見た彼女が、尻込れみして後退るとくるっと向きを変えた。「あ? なまえ、ちょっと? まさか……お前、逃げんなよ?」「えー。だ、だってぇ昴ぅ、僕、無理だもん。ごめん!」「あっ、なまえ!」 ダーッと駆け出そうとする彼女。が──。「むぎゃっ!」「あーら、チビ助。どこ行く気よ? アンタ、*ばっくれようったってそうはさせないわよ?」 猫の子のように後ろ襟首を捕まえられて、バタバタするが逃げられない。「全く、こんな事だろうと思ったわ。何、怖気づいてんのよ。アンタは……。言っとくけど。逃げようったってね、逃がさないから。ここまで来たら、腹くくりなさいよ? チビ助」「ぐぅ、ぐ、はなじでーぐるじぃ。ぐ、るじぃいーー」「わ、首、首! 絞まってます! 室長、襟、引っ張り過ぎです! 離して、離して! なまえが死ぬ!」「あ、悪い」 げほげほ、咽込む彼女の背を擦る。(危ない。オレのなまえが死ぬとこだ。どうでもいいが、室長ってパワーが余ってるよなあ。それに、彼女が女子だって忘れてんじゃねーかと思える時がある。ちょっと手荒過ぎる。これは見張っとかないと危ねーな。さてと……なまえの緊張を、少しでも和らげないとな)「なまえ。あんなのはな、ハロウィンのカボチャと思っとけ。大丈夫だよ。オレも一緒にいる。な? 頑張ろう。それにさ、これを乗り切ればルイお父さんが美味しいの奢ってくれるぞ? 何だろうなあ? ふふ。そっちを、楽しみにしろ」「う、うん」「そうよ。ご褒美、楽しみにしときなさいよ? それにね、チビ助。失敗したっていいわよ。別に命取られる訳じゃあるまいし。失敗しても何とかなる、なる。アンタ、踊るの好きなんだから、ダンスゲームでもやってるつもりで、楽しんで来なさい。分かった?」「は、はい」(緊張で顔が引きつってる。だろうな。TVカメラまであるんじゃ無理ねー。なまえは負けず嫌いではあるが、自分を奮い立たせて多少の無理をしなきゃ本当の彼女は恥ずかしがり屋だからなー。まぁ、頑張り屋でもあるが………んー。そうだ。──きっとこう言えば、オレのなまえはノッて来る筈……) 「では、坊ちゃん。参りましょう」 彼女は、セバスチャンを真似たオレをじっと見た。それから、自分の頬をパンパンと叩き、スゥーっと深く深呼吸をした。そうして、シエルの声色で言った。「ああ、そうだな。行くぞ。セバスチャン」『はい』と返しオレ達は、舞台へと向かった。 結果を言うと、黒執事はなかなか好評で、安全教室からダンスまでミスも無く無事こなした。ホッと一息ついていると、総務部長と広報係長から室長に追加依頼があり、急きょセッティングされた拒否権のないインタビューまで、ご要望通りにきっちりやり終えた。彼女は、相当緊張し疲れたみたいだった。*ばっくれる:[1] とぼける、白を切る、しらんふりといった意味。また[1]の意味から転じ、逃げるといった意味でも使われる。更にそこから「学校を無断で早退する(サボる)」といった意味でも使われる。
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