横恋慕。
夢小説設定
本棚全体の夢小説設定主人公は男装女子なので男でも女でも通用する名前がおすすめ。
例えば、
ユキ、ジュン、アキラ、カオル、ユウキ、ヒカル、チヒロ、ケイ、ナギサ、ハルキ、ミチル、シノブ、ハルヒ、レイ、レン、リン、ミライ、ヒナタ、ユウリ、マコト、マスミ、ミソラ、ハヅキ、カヅキ、ヒロ、ユウ、シュウ、ハル、ナツキとか?
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正直、止めたい所だ。もしもあいつが衝動的に欲望に任せて行動に出たら危ねー。だが、あの顔は止めてもきかねー顔だ。彼女が出た後、気付かれないように付いて行くことにする。いつもより余裕のない今の彼女なら、尾行も出来そうだ。
彼女は裏手から外へ出るとそのまま気配を消し裏道を通り、途中自販機で缶コーヒーを買った。あいつがいる入口とは別の入口の方に向かう。あいつは、彼女に気付かずうちの方を見上げため息をついてた。
「かーずーくーん。あそーびましょうー」
後ろからそう呼び掛けられた谷田部が、ビックっと飛び上がる。
「あ……」
あいつは二の句が継げず言葉に詰まる。彼女が腹を抱えて笑う。
「ふふふ。今の驚き方、あはは。すごかったね。ふふふ」
笑いながら、公園に入り遊具に凭れ立つ。
「真山、お前……」
「ん? いつ来たのか、って? 忘れたの? 僕は気配消すの得意でしょ。はい、差し入れ。投げるよ?」
ぽーんとおにぎりをあいつに放る。
「缶コーヒーも行くよ? ほい。ナイスキャッチ! 腹減ったろ? どうぞ、食べなよ」
そう言って自分も缶コーヒーを開け口に運ぶ。
「あ、ああ。ありがとう。いただきます」
無言で、おにぎりを食べる谷田部と夜空を見上げながらコーヒーを飲む彼女。
「ありがとう。旨かった」
「ん、おそまつさま。で? 和くんの*シキテンの対象*マル被は、僕?」
切り出された言葉に返す言葉に詰まり、目を逸らす谷田部。
それをじっと見た後で、静かに言った。
「和くん……らしくねーじゃん。そんなの……僕の知ってる和くんじゃない。ねぇ、僕の中の和くんを消さないでよ」
「…………」
「今夜も冷えるから風邪、引くよ……」
黙り込む谷田部に背を向けると『おやすみ』とぽつりと寂し気に呟き、後ろ手に手を上げ歩き出す彼女。
彼女が去ると、ふと気配を感じた。息を詰める。谷田部もその気配に気付いた。
「誰だ?」
「あーら、バレた? やだわ。私とした事が。シキテン失敗ね」
「穂積、さん……」
「ごめんなさいね。話、聞かせてもらったわ。最近、うちの娘の様子がおかしかったもんだから。気になってね。訪ねて来たらあの娘がここに入るのが見えて。こんな時間でしょ? 何かと思って後を追ったのよ」
「…………」
「ところで、久しぶりね。谷田部、アンタなあに? お洒落男子が、ちょっと見ない間に随分うらぶれたじゃない。髭ぐらい剃んなさい」
言われた谷田部が自分の頬を撫でる。室長が煙草を出し一本銜えると谷田部に差し出しながら『吸う?』と聞く。谷田部が頷くように頭を下げ二人で煙草を燻らす。
「谷田部、お前あいつの口癖知ってる?」
「口癖? ああ、千差万別、ですか?」
「ああ、それそれ。感じ方も生き方も千差万別。十人十色でいいんじゃない? ってやつ」
「真山、それよく言いますよね。何だかあいつらしい」
「だな」
二人の口元に笑みが浮かぶ。
*シキテン:張り込み
*マル被:被疑者