「
なまえは、今幸せ?」
「うんっ! すっごく幸せ! 昴と一緒にいられるんだもん。一緒に眠って、一緒にご飯食べて、一緒にお風呂に入って、抱きしめてくれるし、キスしてくれる。一緒に笑ってくれる。それに、僕を守ってくれてる。幸せだよ」
「……守れてねーよ。今回も一緒にいたのに。お前にケガさせた」
言いながらガーゼを貼った耳を、そっとなぞった。
「
なまえ、ごめんな。オレ、お前をちゃんと守ってやれてねー。……一番守ってやりたいお前を満足に守れねーなんて、本当……情けねーよ」
「んー……昴の言う【守る】っていうのは、かすり傷一つ負わさずにって事?」
頷くオレを見ながら彼女は何か考えるように、ゆっくりココアを飲んだ。そして言った。
「それは難しいよ。僕は昴がSPの時の守ってたマルタイ達と違って、刑事だもん。SP程には危険じゃなくてもさ、安全地帯にいられる職業じゃないでしょ」
彼女はまたココアを一口飲んでからフッと笑い言葉を続ける。
「それにさ、僕ってあの桜田門の悪魔って恐れられる室長でさえ、手をやくじゃじゃ馬だよ? つい、後先考えずにつっ走っちゃうしさ……昴だって僕を守る事を専任にして、それだけに集中出来る訳じゃないじゃん? かすり傷もなくは、難しいよ」
そこでまたココアを飲み『でも……』と続けた。
「ちゃーんと守ってくれてるよ。大事なものをさ。ずっと、ずーっとね……。守って救ってくれてる」
真っ直ぐオレを見つめ言う。
「昴は、僕の心を守ってくれてるの。弱虫な素の僕の心を、ね。自覚ないの? こんなに完璧に守って、救ってくれてるのに? 弱った時はいっつも、包んで守ってくれるじゃない。さっきだってそうだった。昴が守ってくれてるから、僕は、今こうして幸せでいられるの。じゃなきゃ、きっともう破綻してるよ。言ったろ? 僕はメンタルが弱いって。君がいなきゃ、とっくに壊れてる」
「
なまえ……」
「ねぇ、これからも弱虫で面倒で、ちっぽけな僕でも守ってくれる?」
「ああ、一生守るよ」
「ありがとう……」
そう言って彼女はそっとオレに口づけた。
「昴、僕だけだよ? 僕のだけの専属SPで、僕だけの恋人でいてね? 他の人はダメ……」
口づけの後、おでこを合わせて囁く。
「ああ、一生
なまえだけの専属でいる。ずっとお前だけ守るよ」
「ふふ……幸せ。じゃ、昴の事は僕が守ってあげる。専属で。どう? 弱虫のヘタレだけど腕は立つし、一生懸命守るよ。それにねー、今お買い得だよ? 契約金及び報酬は、愛だけでOK! どう? 雇ってみる?」
「ふふ……じゃ、とりあえず手付金払うからオレ専属で頼むな」
「了解でーす。じゃ、契約成立。へへへ……手付から、たっぷりもらちゃおう」
「ん、いいよ。休みだし、スペシャルで払ってやる」
「んふっ……嬉しい」
「……お前、それ可愛すぎ。あんまり煽るとここで始めるけど?」
「ベッド、連れてて?」
「ん、了解。……でもさお前、身体大丈夫か? やっぱり今夜は大人しくした方が良くねー?」
「えー。僕はこういう夜だからこそ、昴を感じたいんだけど? いっぱい、いっぱい昴を感じて安心したい……」
「そっか、分かった。だけど、なんかあったらすぐ言うように。約束出来る?」
「うん、出来る。ねぇ……今日は、ずっと放れないで傍にいてくれる?」
「ああ、今日も放さない……ってか、放せない」
「ふふ……愛してる。いっぱい可愛がって」
可愛い事を言う彼女に口づけて、抱き上げてから『ああ、いっぱい愛してやるよ』と寝室に向かう。
長い長い大雪のデンジャラスな夜が明ける。夜が明けても、オレ達は構わずにカーテンを閉め切った薄暗い寝室で、愛し合う。彼女と肌を重ね、生きてる事を確かめるように、何度も、何度も、愛し合った──。
大雪の中で。
End.
おまけ的その後、→
大雪のその後で……。.