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男連中でゆっくり酒を飲みながら、料理を摘まみ交流を深めた。「あらー、本当に飲まないの?」「残念ですが。車で来たんで……」「そうか、車じゃねえ。残念だけど、仕方ないわねえ。私達の立場じゃすすめる訳にもいかないわ」「飲酒運転はダメ。すすめた方も、両方捕まるよ」 小笠原がポツリと言う。「そうよねえ。……あっ、ちょっと! アンタ達。チビ助の分、残して置きなさいよ!」「あ、そうでした。あんまり旨いもんで、つい」「そうだよ。如月くん。またさっきみたいに、おチビちゃんに泣かれたら困るだろう。なあ、穂積」「うるせえ!」 からかう小野瀬さんに八つ当たり気味に返す室長。藤守達が酒を飲みながら言った。「そやけど、ほんまにびっくりしたわー」「室長、チビ泣かすの、二回目ですねー」「あ? そうは言うがな、如月。まさか、泣くとは思わねえだろうが」「だよねえ。あの慌てぶり。穂積、さっき本当に焦ってたよねぇ」 みんなで思い出したように言う。オレは、バツの悪そうな室長をフォローした。「いや、もうだいぶワインを飲んだ後だったからですよ。あいつ、酔ってたんです。気にしないで下さい」「泣き上戸もあるけど、パワハラでしょ。いじめるからだよ」「小笠原、人聞きの悪い事、言うな。一口摘まみ食いしただけだろう。いじめると言ったら俺より、如月のが、いじめてるだろうが」 黙って聞いてた丞一郎がオレに訊ねる。「何だ、お姫さま泣いちゃたのか? 珍しいな」「ああ、酒が入って泣き上戸になって。ちょっとな」「ふぅーん、でもさっきは楽しそうにしてたじゃないか」「あれですよ。チビが楽しみに取って置いた大好物の海老を、室長がひょいっと食べちゃったから、いきなりでショック受けたんですよ」 如月が説明する。「ああ。なるほど海老か。お姫さまは海老、大好きだからな。海老をメニューに入れると、良い笑顔をしてくれる」「丞一郎。だからおまかせにすると、いつも海老がコースに入ってんのか?」「おう、お前の好物も入れてるけどな。どうせなら喜んでくれるものを食わせたいだろう?」「ああ。他にも好きなものはあるが、伊勢海老とかには、特に目が輝くからな」「また実に、旨そうに幸せそうな顔で食ってくれるしなあ。あんなに旨そうにされると、俺もシェフ冥利に尽きるよ」「だな。作り甲斐があるよな。本当に、こっちまで幸せになる」 みんなの視線が、オレの膝で眠る彼女に集まる。「チビ助は量は食えないけど、食べるの好きだからなあ。……まあ、あれは、本当に幸せに感じてるんだろうな」(確かに、いつも腹を空かせてた過去からすれば、尚更だろうな。その分、オレがこいつにもっともっと旨いものを食べさせてやりてー) そう思いつつ自然に手が動き、彼女の頭を撫でる。「お前達。チビ助の分、残しとけよ」 室長がおネエ言葉をすっかり忘れて言う。その変わりように、事情を知らない丞一郎は、ちょっと戸惑った顔をした。
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