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──年賀状と歌姫── 夕食を済ましこたつで彼女と二人、せっせと年賀状を書く。毎年、一柳関係や、警察関係等の色んな付き合いで、結構な枚数を出す事になってしまう。まあ、印刷したものに、仲の良いやつに一言入れたり宛名を書く位なんだが……。一緒に暮らし始めた年に聞いたら、彼女は『仲の良い連中には電話で挨拶をしてるし、面倒くさいから出した事ない』らしい。 彼女が、実は面倒ぐさがりなのを知ってる程の付き合いの人達、派出所で世話になった親父さんやオク、室長はじめ捜査室メンバーや国達、阿久津先生達は別段文句も言わないらしく、正月に、彼女が電話を掛けている姿をオレも見て知っている。 昨年は父さんとトメ、桂木班のメンバー、総理、公安の連中には彼女が書いて出してくれた。 彼女曰く『僕のせいで、昴が礼を欠いてると思われるのは嫌』なのだそうだ。本当はまだまだ出す予定のがあったが、オレの事を気遣ってくれるその気持ちだけで十分だったので、残りは彼女に気付かれないように書いて出した。今年もそうしようと思ったが、オレが動く前に彼女がファイリングした今年の年賀状を持って来て言った。「この人達に、出すんでしょう? 宛名書き、僕やるよ」「でも、お前、苦手だろ。無理すんな。慣れてるオレがやるよ」「ううん、僕は君の妻だからな。君が恥をかかないようにフォローするのは妻である僕の役目だ。大丈夫。ちゃんとやるから」 今年は結婚式の写真を二人で選び既に印刷を注文してあった。彼女は張り切って取りに行き、宛名書きを始めた。「昴、でも仲の良い人への一言は自分で書いてね。頼むよ?」 そんなこんなでここ数日、二人で年賀状書きをしている。 彼女の苦手な事は、すなわち[興味が持てない事]と考えて良い。 興味さえ持てば、彼女は大概スルスルとやってみせる。だが、興味の持ってない事をやらせると、すぐ集中力を欠く。 別に能力的に出来ないワケじゃねーから、無理にでもやろうと思えば多分、幾らでも出来る。 痩せ我慢な彼女は無理をし易い。だが、オレは無理をさせたくねー。無理をすればその分彼女の中に、ストレスは蓄積される筈だ。そうならないように、うまく止めてやるのはオレの役目だ。 休憩させるのに、デザートと飲み物を出してやろうと頃合いを見計らいキッチンに立つ。キッチンからチラッと様子を伺うと、一人になった彼女はバタッと突っ伏して後ろ頭をグシャグシャと掻いた。(フッ。やっぱり……。もう、休憩させた方が良いな)
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