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まだ幼い頃、オレが泣くと母さんがよくそうやってくれた事を思い出し、さっき見た母さんの映像と相俟って感極まり、堪え切れず涙が出た。 彼女は黙ってそのまま暫く、肩を震わすオレを、優しく抱き包んでいてくれた。 暫くして落ち着くとスッとキッチンに行き、ココアを淹れて持って来てくれた。 泣いてしまったのが、ちょっと気恥ずかしかった。だが、彼女は別段気にもしていないようで、普通にココアを飲んでいた。 チラっと見ると彼女が片手で後ろ頭をくしゃくしゃとし言った。「本当はねぇ。お誕生日のプレゼントにしようかと思ってたの。ほら、試験とか結婚準備とかバタバタしてるから、早めに準備してと思って用意したの。でもさ僕、昴に内緒にしてんの苦手でしょ? で、まだまだずっと先なんだけど渡しちゃった。早過ぎた? ふふ……まあ、しょうがねーなってかんにんしてね」 話すと鼻声になりそうで黙って頷いた。「さっきの話に戻るけどさ、ね? とびきりに、嬉しいと愛と幸せがいっぱい詰まった日だったでしょ? きっとこの後もこの日は毎年、昴のお誕生日で大事な日だったんだろうけどさ。その数十年後に、また、超嬉しくて最高に幸せな日になるの。幸せが積み重なって行くんだよ。なんか素敵でしょ? だから婚姻届けは、九月十四日に出したいの。良い?」 そう言ってから彼女は、何だか照れ始めた。「ちょっと、ベタ? でもそうしたいんだもん……えへへ」 また胸いっぱいになって来て、彼女を引き寄せてギュッと抱きしめた。「ありがとう……」「うん。これ、大事にしようね。お義父さんとお義母さんの昴への愛情がいっぱいだもん。本当に、見つかって良かったなあ……」 その沁々した言葉の響きに、オレは思い至った。(そうか、彼女にはこういうのがねーんだよな。それなのに、オレの為に作ってくれたんだ。これ、どんな気持ちで作ってくれたんだろう……) 彼女の気持ちを思うと胸がせつなくなった。 ● ○ ● ○ 今年は特に彼女は、なんやかんやと忙しい。二人でする事、またはしたい事と、それ以外を分けた。それ以外の事はオレが出来る限り準備を進めた。プログラムを詰めてる内に、ひとつ悩む事が出て来た。(なんか、良い方法ねーかなぁ……) 考えつつ、黒澤を訪ねて公安に向かってた。「あれ? 一柳警部補。こんな所でお会いするとは珍しいですね。……ん?」「ああ、お前を訪ねて来たんだ。式当日なんだが──」 黒澤に当日の記録係をお願いする。後藤と石神がそれを聞いている。「九月十五日でしたね」 石神が言うのに返事を返し、お願いする。
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