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「お前……」 二の句を次げなくなったオレに、彼女が言う。「良いじゃないか。[もしも]が、無いなら。……とにかく、僕はそう決めたから。だから、命、掛けてもムダになんぞ」「ちょっと、待て!」「やだね。待たないよ。つーか、今いっくらダメつってもさ……。[もしも]なんて起きちまったら昴、止められ無いじゃん。どうすんの? ふふふ……。ダメじゃん。でも、無いんだろ? [もしも]は。なら、問題なーいー! だろ?」 フイ、と顔をそむけ酒をむんずと掴むと、手酌で注いだ。コップになみなみと注いだ酒を、また水でも飲むように“ごきゅごきゅ”と喉を鳴らして一気に呷った。『ふぅー』と空になったコップを置くと、ぽすんっとオレの胸に顔を沈めて、甘えるようにすりすりとした。 そんな彼女に、みんな呆気に取られ暫く沈黙した。だが、当の彼女は至ってのんびりした様子だ。「はぁー、こうしてると気持ち良い……」 そう言うと、彼女は目を閉じ寝息を立て始めた。「……なんや、寝てしまいよったで」「今のって、いつもより酔ってただけなんですよねー?」「そうかな? 酔ってたからこその、彼女の本音なんじゃないの?」「うん。俺にも、本音に聞こえた」「俺も、小笠原と明智くんの意見に同意。おそらく、おチビちゃんの本音だろうねぇ」「全く……危ない子ねえ。チビ助の事だから、やりかねないわ。昴。アンタ、怪我してる場合じゃないわよ?」「心配やなー。ほんなら、賢史お兄ちゃんがチビの王子様を守ったろかなー?」「えー藤守さんが、一柳さんを?! それは、無謀でしょー。だって一柳さん、元優秀なSPですよー?」「なんや、如月。俺かて警備部からスカウトが来た位やで? そないに捨てたもんやないやろ。だいたいなー。おチビは、うちの紅一点のオアシスちゃんなんやで? その大事な子ぉが、昴に何かあったら、あかんようになるちゅうんやったら、回避するしかないんとちゃうか?」「まあ、そうですけどー」 と如月。「……俺はおチビには、絶対に幸せになってもらいたいんや。そやないと、不公平やろが」「藤守、君の言うのは俺も分かるけど。彼女の性格を考えると……」「得意のプロファイリングですか? 小笠原さん」 如月がちょっと身を乗り出した。「プロファイリングまでは行かない。一柳さんを庇って……もし藤守、君に何かあっても彼女、大変な事になると思うよ」「確かに。そうかもなあ。チビは、そういうのには特に脆そうだからな」 明智さんが、納得したように呟く。それを受けて、小野瀬さんが『そうだねぇ』と言いながらみんなを見回す。「見てるとおチビちゃんは、お金や物にさほど執着がないみたいだけど……人を失うのはかなり恐れるからねぇ。自分の身近な人間に何かあったら、マズい状態に陥りそうだよねぇ」「怖いんだろ。もう一人になりたくねえんだろうよ。それだけ……こいつが、孤独に生きて来たって事じゃねえか」 静かに男口調でそう言うと、室長は酒を口に運んだ。グラスを呷ったその顔は、まるで苦いものでも飲み込んだような表情だった。
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