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──やせ我慢。── 梅雨に入り雨の多くなった六月の始め。今朝もしとしと雨が降っている。冬が過ぎて最近では彼女の目覚めも良くなり、早朝から二人でキッチンに並んで立ち、朝食の支度をする。 今朝のメニューはオムレツ、ジャーマンポテト、サラダにスープ、フルーツを少し。それから貧血になりやすい彼女の為に、ほうれん草のソテー。オレがトーストに珈琲で、彼女はバターロールにミルクたっぷりのカフェオレ。料理を食卓へと運びながら彼女が言う。「雨だと静かだねぇ。ねぇ、今朝はテレビより音楽のが良くない? あんまりうるさくないやつ。昴、なんか選曲して?」「ん、うるさくないやつか……。じゃあ……こないだ買ったヒーリングCDにするか?」「ああ、ピアノのインストゥルメンタルのやつ? うん、良いかも。それにする」 音楽を流し、席に着くと二人で『いただきます』をして食べ始める。「んー今朝もうまーい。幸せー」 彼女のご機嫌な顔を眺め、目を細める。「あ、でも、朝から食べ過ぎ? 太る?」「んん? いや、大丈夫だろ。品数は多いけど量は多くないからな。バターロールだって、お前小さめの一つだしな。それにお前は太る心配より、痩せない心配をしろ。またこれから暑くなるし、美味しく食べられる内はたーんと食べとけ」「はーい」 返事をすると“パクパク”と旨そうな顔で食べる彼女。と、いきなり……。「あーっ! 忘れてた!」 何かに気付き、彼女が焦り出す。オレはあえて落ち着いた声を出す。「何を?」「海司兄ちゃんの誕生日。十二日なの! プレゼント用意してないっ」「あー、アイツ十二日だったか」「ん、忙しくてうっかりしてた。僕、明日から*清水係長の、例の応援にかり出されるから……今日、買いに行かないと時間取れないや」 彼女はウロウロと忙しなく、瞳をさ迷わせる。オレでぴたっと止まり、上目遣いでおずおずと切り出した。「ねぇー昴ぅ、何かない? 洒落たやつで。ふぅー。僕……今、余裕ないしーあんまり浮かばない」 彼女は明日から、暫く他の部署の応援に行く事になっている。しかも、彼女を名指しで依頼して来た係長の清水は、色々と評判の良くない奴だ。勿論、室長やオレ達だってそんな所に諸手を挙げて送り出すワケじゃねー。室長はあれやこれや理由を並べお断りした。……だが、結局行かざるを得なくなった。 苦虫を噛み潰したような顔をする室長を安心させるように彼女は『大丈夫、大丈夫』と笑って見せた。が、今のチラッと出た言葉が本音だろう。*詳しく知りたい方は24。 をお読み下さい。
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