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──氷上の王子様。── 今夜も残業。彼女はソワソワし始めた。チラチラと室長を見る。「なんや? チビ、ソワソワして。お腹空いたんか?」「あー、こんな時間か。そろそろご飯にしましょうか?」 室長の言葉にガタッと席を立ち『じゃあ、テレビつけて良い?』その勢いに驚きながら室長が許可すると応接コーナーの衝立を退かし、テレビの向きを調整してテレビをつける。ダダーッと戻って来ると椅子を少し手前に移動し座る。彼女の瞳はもうテレビに釘付け。みんながちょっと呆気に取られてる。室長がオレに聞いて来る。「何、アレ? あの子フィギュアスケート好きなの? 夢中じゃない」 オレが口を開き掛けた時、彼女の黄色い声援が上がる。まるで埼玉スーパーアリーナの会場にいるように応援する彼女。「間に合った。あ、出て来たー! 羽生くーん頑張れー!」 室長が、なるほどねと頷く。「ああ、金メダルの十九歳か。ファンなの?」「テレビ見ながら応援する程度ですけどね。なんか、今まで浅田*央と高橋*輔、小塚*彦を応援してたらしいんですけど……オリンピックの時にインタビューされてるの見て『すごい。しっかりしてる。頭も良いね。演技も綺麗ー』って彼も、応援し始めたんです」「ああ、チビもか。うちのもだ。テレビの前で、きゃーきゃー言ってる」「何? 明智の所もこうなの?」「おー、ジャンプ決まったー! 綺麗ー……きゃー!」 彼女は一人、テレビを見ながらきゃーきゃーと騒いでる。「ええ、まさにこんな感じです。うちは親子二人なので、もっときゃーきゃー、わーわー、すごいですよ」 「ハッハハ……おちゃめー! 可愛いー! プーさん持ってるー。あっ! 逆転したーっ!」 なんだか、おもしろくねー。 彼女の後ろに行き、両方の頬っぺたをうにょーんと引っ張り伸ばす。テレビに夢中だった彼女は、驚きながらオレを見上げ[しまったー!]という顔をする。「うるさいよ? お前」「*こへんなはい。はにょー、いひゃいれふ」《→*ごめんなさい。あのー、痛いです》「反省しなさい」「はい」 頬っぺたから手を離すと腕を引っ張り『一緒に見よ』と言う。 インタビューが始まった。「へぇ、意地かぁ……本当にすごい十九歳だなあ」「何だ。チビも、羽生選手好きなんだ? 女の子にすごい人気だよな。今日の午前中『氷上の王子様みたーい』って総務の子達も騒いでいた」
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