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──脆く儚く。迷い子の君。(改訂版)──(また、だ……) 彼女は時折こんな風な表情を見せる。 泣き出しそうな笑顔。泣き笑いとでもいうのか、悲し気な瞳のまま無理に笑う。 一緒に暮らし始めてから、極たまに見せる表情。泣かれるよりもずっと彼女の悲しみがその瞳からダイレクトに伝わって来る。心を深く揺さぶって、オレをせつなくさせる。普段、明るい彼女。だからこそ余計にそう感じてしまうのか、こんな時の彼女は、脆く今にも壊れそうに見える。何ていうか、とても儚げでそのまま壊れて消えてしまいそうで、永遠に失ってしまいそうな気がして来る。(バカげた嫌な錯覚だ) そう一笑に付してしまおうとしたのに、上手く出来ずに胸の中に不安がじわじわと広がる。 真夜中、沸き上がる焦燥感と不安に(らしくねー)と胸の内で一人、苦笑いをする。(だいたい、ありえもしねー夢の中の話じゃねーか。こういう時こそ安心させてやらねーと) そもそもの事の始まりは、数分前の事だ。 オレはふと苦し気な声で、目が覚めた。隣で眠る彼女がうなされていた。揺すりながら何度か名を呼ぶ。「……ぃ、……おい、なまえ」 彼女が目を覚ましゆっくりと目蓋を開いた。顔を覗き込みながら『大丈夫か?』と聞いてみる。彼女はぼんやりとした目をオレに向けた。その顔は何となく、悲しそうに見え、もう一度問い掛けた。「どうした? お前、今かなりうなされてたよ」「…………夢、見てた」 彼女がポソッと答える。「夢? 悪い夢か?」「……ん」「どんな夢だったんだ? 悪夢は人に話すと良いって言うぞ。話してみな」「……僕が、存在しない世界の、夢だよ」「お前が存在しない……?」「ん、僕の意識はあるけど誰も、僕を認識しないんだ。……そこでは僕、幽霊みたいに透明なんだ。そんな世界に、ぽつんと意識だけがあんの。でも意識はあっても、僕には何も出来ない。ただ見ているだけ……」 それを聞いてオレは漠然と思う。(もしかすると……。彼女の心の傷が見せた夢、か?) 彼女は悲し気な声でポツリと独り言みたいに言葉を落とした。「……昴は、結菜姉の彼氏だったよ」「は?」(結菜の彼氏って。何でまた……)「……すっごく仲、良くてさ。二人で動物チョコ作ったり、夏祭りに行って花火を見てキスをしたりしてた。昴が愛しそうに、姉ちゃんに愛を囁いて……。本当にとっても幸せそうだった。……ねぇ、昴。結菜姉を好き、だったんだろ?」「えっ?! な、何をいきなり言い出すんだよ」「ふふ……そんなに焦った顔したらバレバレだ」(また、そんな顔して……) その時にあの泣き笑顔を見せた。
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