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──桜影にて、守るもの(昴視点)── 桜は、好きだ。 理由なんて、昔は考えたこともなかった。 ただ、咲く時期も、空気も、景色も――全部が静かで、嫌いじゃなかった。 でも今は、違う。「……綺麗だね」 隣で、なまえが言う。 それだけで、この景色は意味を持つ。 桜が綺麗なんじゃない。 “こいつがそう言うから”綺麗なんだと、思う。「見惚れてる場合か。時間だ」 そう言いながらも、少しだけ視線を逸らした。 彼女が、妙な顔をしていたからだ。「……儚いね」 花びらを見て、そんなことを言う。(らしくねぇな) なまえは、強い。 どんな時でも前を向く。 だからこそ、こういう顔をされると――「そんな顔するな」「え?」「消えそうな顔」 口に出してから、少しだけ後悔した。 だが、引っ込める気はない。 彼女は、放っておくと自分で抱え込む。「僕は消えないよ」 そう言って、胸を叩く。「ちゃんと、ここにいる」 ……ああ、そうだな。 彼女は、そういう奴だ。 だから――「……ならいい」 それ以上は言わなかった。 ● ○ ● ○「僕が行く」 その一言で、空気が変わった。(来たな) 嫌な予感は、当たる。「なまえ、待て」 止める。 当たり前だ。 単独で行かせる理由なんてない。「大丈夫」 大丈夫なわけがない。 そう言いたくなる。 だが、彼女は止まらない。「様子見るだけ。無茶はしない」(それが一番信用できねぇんだよ) 何度も見てきた。 “無茶しない”と言って、無茶するこいつを。「……行くなら、オレも行く」「だめ」 即答。 迷いもない。 その時点で分かる。 もう、決めてる。「昴は正面で待ってて」「なまえ」「お願い」 振り返る。 その目。 ああ――ずるい。「僕、ひとりじゃないでしょ?」 その一言で、全部持っていく。 止められない。 彼女は、“一人で行こうとしてるんじゃない”。 “信じてる”。 オレ達を。「ちゃんと、みんながいる」 笑う。 少しだけ、柔らかく。(……分かってるよ) だからこそ、止められない。「……三分」 それが限界だった。「三分で戻れ。戻らなかったら、オレが行く」 約束じゃない。 脅しでもない。 ただの事実だ。「了解」 あっさり頷いて、消える。(クソ……) 視界から消えた瞬間、胸の奥がざわつく。 時間を見る。 一秒が、長い。 二秒が、遅い。(三分って、こんなに長かったか……?) 無線が、静かすぎる。 ● ○ ● ○「確保」 その声で、ようやく息が戻る。(……戻ってきたか) 姿を確認する。 無事。 血もない。 だが――「無茶はしてねーな」 確認するように言う。「したくても、三分しかなかったからね」 軽く笑う。 だが、その笑いは少しだけ硬い。 頬に花びらがついている。 無言で取る。「ありがと」 その時、気付く。「……震えてる」「え?」「手」 自覚してなかったらしい。 彼女は、そういう奴だ。 自分の限界に気付かない。「……ああ」 苦笑する。「やっぱり、ちょっと怖かったみたい」 正直だな。 強がらない。 そこが、いい。 だから―― 手を取る。 しっかりと。「……言え」「ん?」「怖い時は、言え」 それだけ。 余計なことは言わない。 彼女には、それで伝わる。「……うん」 小さく頷く。 握り返してくる。「ありがとう」(……バカ) そう思いながらも、少しだけ力を込める。 離さないように。 桜が舞う。 彼女は、消えない。 オレがいる限り。 絶対に。──桜影にて、守るもの(昴視点)──End.
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