「嘘じゃねーぞ。ほんと。心配することなんてねーから。笑ったのもハニーが可愛いと思って、それでにやけたの。マジ、マジ。ほんとだって。おい、うーーんー……Hey honey,You look so cute!（へいハニー、君はとってもかわいいよ）I am Addicted to you. I love you more than you’ll ever know.（オレはキミに夢中だ。キミが思ってる以上に愛してるよ）」
「あーあー！　何で急に英語ーぉ？」
「んー？　何となく？」
『えぇー？』と納得いかなそうな声をあげた後『うむむぅ』と唸り黙ってしまった。彼女は黙ったまま、まるで＊マル被のウソを見抜こうとするようにオレを観察した。その瞳があやしいと物語っている。

「…………。もしかして本当は、なんかあったんじゃない？　あってさ、誤魔化したとかぁ。ねぇ？」
「あ？　そうくるか」　
（困った。何にもねーのに。にしても、どうしたんだ？　なんかいつもより疑り深いなあ。んー…………）
　考えながら、オレも彼女を観察してみる。ひとつの答えに行き着く。

（ああ。これって、もしかしてヤキモチか？）
　彼女は嫌われたくないと、感情を表に出さず我慢してしまう事が多い。こんな風に表に出すのは珍しい。彼女のヤキモチが、嬉しくて顔がにやけそうだ。だって、ヤキモチ妬くのはオレのことが好きな証拠だ。

「なぁ？　ヤキモチ妬いてんのか？　心配になっちゃった？　珍しいな。ふふ、そういう日があっても別にまあ、いいけどな。でも違うよ。何もない。ほんとに、本当。信じて。オレは、お前だけでいい。いつもお前は可愛いな、大好きだって、思ってるんだよ。ほら、そういう顔も可愛い。大好きだ……んー」
　ちょっと笑いながら、まだちょっと尖ってる唇へ長めにキスをした。唇を離し、間近で彼女を見る。どうやら疑いは晴れたらしい。照れたような嬉しそうな顔をしてた。

「お前、それ……反則」
　たまらなくなってまた唇を重ね、柔らかで甘い唇から可愛い吐息を漏らす彼女にキュンキュンさせられっ放しのオレ。つい、合間に本音をちらほら……。

「お前、ズルいぞ。可愛すぎ」
「っん……すぅ、チョコレートなくっても僕だけ？」
　オレのキスにこたえながら聞いてる。

「ああ。ハニーだけだ。それに、チョコレートなんかなくっても……この唇。チョコレートより甘いしな。なぁ……もっともらってもいい？」
　返事を待たずに、また唇を重ねる。

「っんふ……」
「ハニーのこの唇……甘くて魅力的。はぁ……とろけそうだ……」
　いつの間にか、オレからも吐息が漏れる。もう離せそうにない。

（まいった……休ませようと思ったのに。離し難い……つーか、今ベッドに行くのは……ヤバいだろう。かろうじてこらえてる理性が、負ける。んー、休ませないとダメだけど……。けど、この甘い唇には触れていたい。もっとこうして……ハニーとキスしていたい。この際、キスは、大目に見てもらうか。甘いのをもらうバレンタインだし、な）
　自分に言い訳をして彼女の唇にしばし夢中になった。

　ぷるっと柔らかく甘い、可愛いキミの唇。チョコレートよりもはるかに甘美に思える。何度重ねても、いつもオレの心を虜にする魅惑的なこの唇。


　オレだけの愛しいハニー、愛してるよ。


　そう、胸の中で囁いて甘いキスとキミに酔いしれた──。




＊マル被：被疑者


── チョコよりも甘く……。──
End.