──分け合うぬくもり。──
今夜も冷える。
(こりゃあ、明日も寒いかな。二人してせっかくの非番だが……出掛けない方がいいかも知れねえー。うちで何か楽しめる事、ねーかな)
キッチンで温かい飲み物を用意しながら考える。オレも彼女も寒いのは苦手だ。最も、彼女は暑いのも苦手だが。成長期に無理をしてたのがもしかすると関係あんのかも知れないが彼女は基本、そんなに丈夫じゃない。気力と努力でカバーしてる所がある。分けられるもんなら、オレの丈夫さを分けてやりてー位だ。でも、それを一番気にしてるのは彼女自身なので、オレは極力[身体が弱い]発言はしないように気を付けている。本人だって、好きで丈夫じゃないワケじゃねーだろうし。ただ、こういう寒い日が続く時は体調が大丈夫か心配だ。多少具合が悪くても自分から言うタイプじゃないし、病院嫌いだし。少なくとも一人で大病の告知なんて、もうさせたくねえ。彼女の健康、その点には注意して目を光らせてる。
「ハニー、冷えるだろ。あったかいの──あれ?」
部屋に彼女がいねえ。どこ行った? 他の部屋かとも思ったけどその前にベランダを覗く。
「あ、お前こんな冷える夜に何やってんだよ?」
「あ、昴、ねえ見て。今夜星がすごく綺麗だよ」
「ん? 星……確かに綺麗だな」
「ね。何か良いでしょう? ふふ……」
「良いけど。さみぃ。おい、中、入ろう。知ってんだろう? オレが寒いの嫌いなの。中でさ、あっためて」
促して中に入る。思った通り彼女は冷え冷えだ。ソファーに畳んであったブランケットを取って彼女と包まる。そうして、二人でゆっくりお茶を飲む。
「はあーあったけーな」
「うん。ほんとだねぇ。あったかい。ふふ。でもこれじゃ僕があっためてもらってるみたい」
「あ? いいんだよ。二人ともあったかいんだからさ。オレ達は何でも分け合うの」
「ん?」
「良い事も悪い事も、ぬくもりも、ぜーんぶ分け合うの」
「ふふ。そうかあ。なら、僕の体温、ちょっと低いけどいっぱいあげるよ」
「んーじゃあ、遠慮なくもらおう。もっとくっ付け」
素直にくっ付く彼女の唇に口づける。最初、ひんやりしてた彼女の体温と息が上がって来る。
「なあ、明日休みだし──愛情も分けて?」
『ふふ』とまた笑う彼女を抱き上げて寝室に向かった──。
──分け合うぬくもり。──
End.
</p>